機械仕掛けのチルドレン・第九話B



(Aより続く)

   ゆりかごのうたを
   カナリアがうたうよ
   ねんねこ ねんねこ
   ねんねこよ


 マリアが歌い始めるや、教室の中に何とも言えない空気が流れた。生徒たちは一心にマリアの歌に聞き入っている。


   ゆりかごのうえに
   びわの実がゆれるよ
   ねんねこ ねんねこ
   ねんねこよ


 驚いた事に、教室の所々ですすり泣きの声が上がり始めた。どうやら、かつて自分が飼っていたペットとの別れの時を思い出したようだ。


   ゆりかごのつなを
   木ねずみがゆするよ
   ねんねこ ねんねこ
   ねんねこよ


(むっちゃくちゃうまいじゃないの……)

 アスカも流石に思わず唸ってしまった。ふと気付いてレイの様子を伺うと、

「…………」

 驚いた事に、レイは瞑目し、何とも言えない安らかな表情で歌に聞き入っている。


   ゆりかごのゆめに
   黄色い月がかかるよ
   ねんねこ ねんねこ
   ねんねこよ


 マリアは歌い終えた。一瞬置いて、

パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ

 教室の中は拍手の嵐である。そんな中、

「う、ううっ……」

 何と、教師が涙を流しているではないか。

「ご、ごめんなさい……。昔飼っていたポメラニアンのことを思い出しちゃって……、ぐすっ……」

 どうやら演奏中は堪えていたのだが、演奏を終えて気を抜いた途端に感極まってしまったようだ。

(Cへ続く)

この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'ゆりかごのうた ' arranged by VIA MEDIA

機械仕掛けのチルドレン 第九話A
機械仕掛けのチルドレン 第九話C
目次