機械仕掛けのチルドレン・第六話J



(Iより続く)

 すると、マルチは申し訳なさそうにやや俯き、

「はい。…だまっていましてごめんなさい。…実は、そうなんです」

 そうだったのか。…それで、マルチは、今日は俺を待っててくれて…。

 泳げるのか、って、聞いた時、ちゃんと答えられなかったのは、それが理由だったんだな…。

 俺は思わずマルチの肩をつかみ、

「マルチ、短い間だったけど、ほんとに楽しかったぜ」

「! ひ、浩之さん…」

 マルチの眼に、涙がにじんでる…。俺は、マルチの眼を正面から見つめて、

「マルチ、ありがとう」

「ひ、浩之さあ~んっ!! うわああああっ!!」

 人目も気にせず、マルチは大声で泣き始め、俺の胸に飛び込んで来た。

「浩之さん、ありがとうございました! わたし、ハードディスクの中の磁気データになっても、浩之さんのことは決して忘れません! ぜったいに忘れませんからっ! わああああっ!!」

 なんて健気な子なんだ。こんなマルチに、俺はなにもしてやれない。そう思うと、いても立ってもいられなくなり、俺も思わずマルチを抱きしめていた。

「わああああんんっ!! 浩之さああ~~んっ!! わああああんんっ!!」

 マルチ、俺だって、おまえの事が…。俺の胸の中でせつなさが炸裂する……。なにっ? ちょっと待て、このゲームは「To Heart」だったよな。「せつなさ炸裂」ってのは、確か……、

 しかし、その時だった。

「浩之ちゃんっ!!!」
「ヒロユキ!!!」

 驚いてそちらを向くと、そこには鬼の形相をしたあかりとレミィが……。

(Kに続く)


この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'エターナルラブ' PlayStation版・「ToHeart」より 作曲・編曲:石川真也((C)Leaf/AQUAPLUS) MIDIデータ作成:VIA MEDIA

機械仕掛けのチルドレン 第六話I
機械仕掛けのチルドレン 第六話K
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