機械仕掛けのチルドレン・第六話I
(Hより続く)
ああ、終わった終わった。待ちに待った放課後だぜ。
幸いにして、今日はあれ以上レミィの攻撃にもあわなかったしな。
さて、帰るとすっか。
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校門にやって来た俺の眼に飛び込んで来たのは、意外な事に、帰り支度をしたマルチの姿だった。
「あ、浩之さん。いっしょに帰りませんか?」
いやはや、この世の物とも思えないほどの、何とも魅力的な笑顔でマルチは微笑む。…む? 確かに元々マルチの笑顔は魅力的だったよな。でも、今日はなんかいつもと違って、もっと魅力的なような気が……。
おっと、そんな事は今はどうでもいいんだ。一緒に帰るんだったな。
「おお、もちろんいいぜ」
「ありがとうございます♪」
で、俺たちは、マルチがいつもバスを待っている停留所に向けてゆるゆると歩き始めた。
「なあ、マルチ。もうすっかり春本番だな」
「はい、そうですね」
「で、なんだかんだで、すぐに夏がやって来るわけだ。…で、どうなんだ? マルチは泳げるのか?」
「はい。一応、防水仕様になっておりますので」
「あ、そうか。おめーにとっては、そっちも大切なんだな。でもな、俺が言ってんのはそんな事じゃないんだ。おめーは水泳はできるのか、って事だよ」
「水泳、ですか…。残念ながら、それはプログラムされていません…。それに…」
「それに、なんだ?」
「え、いえ、なんでもないです…」
ん? マルチのやつ、なんだか妙に寂しそうな顔をしたな。…どうしたんだろ。
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…てなわけで、俺たちは公園までやって来た。すると、なんとそこにセリオがいる。
「藤田さん、こんにちは」
「お、セリオ、なんでここに来てんだ?」
「はい。ここならおいでになるだろうと、タイミングを計ってお待ちしておりました。一言ご挨拶をと思いまして」
「あいさつ、って、なんだ?」
「私たちのテスト期間は一応今日で終了しました。お会いするのは今日が最後です」
なにっ!? じゃ、マルチも!?
俺は思わずマルチに向かって、
「マルチ! ほんとなのか!?」
(Jに続く)
この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。
BGM:'春風にのせて' PlayStation版・「ToHeart」より 作曲・編曲:下川直哉((C)Leaf/AQUAPLUS) MIDIデータ作成:VIA MEDIA
機械仕掛けのチルドレン 第六話H
機械仕掛けのチルドレン 第六話J
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