機械仕掛けのチルドレン・第三話C



(Bより続く)

「かんさいべん?!」
「かんさいべん?!」

 シンジとアスカはまたもや思わず眼を丸くした。マリアは続けて、

「はい、関西弁と言いましても、大阪弁と京言葉が混じっておりますが」

と、言った後、急におどけた表情になり、

「あ、まいどおおきに、水無月マリアどす。あ、アスカはん、今日はまたえらいおめかししたはるやんか、べっぴんさんにならはって、どこ行かはんの? へ、お買いもんやてかいな。あ、そらよろしおますなあ。ほな、さいなら」

と、早口でまくし立てたと思ったら、すぐに元の顔に戻り、

「これが関西弁モードなんです」

と、少し照れ臭そうに言った。シンジとアスカは、完全に毒気を抜かれ、

「…………;」
「…………;」

 唯々苦笑するしかなかった。

 + + + +

 加持家に戻って来た三人が、リビングに入るや、

「ただいまー」
「ただいまー」

と、シンジとアスカは普通の調子だが、無論マリアは、

「只今戻りました」

と、これまた丁寧な口調である。加持もミサトもやや苦笑するしかなかったが、ミサトはすぐに、

「あ、おかえり。今日の晩ご飯はなに?」

 すかさずマリアが、

「ビーフシチューです」

 ミサトは相好を崩し、

「あ、いいわね♪ じゃ、マリア、お願いね」

「はい♪」

 その時、加持が、マリアの制服に目を留め、

「あ、マリア、そのままじゃだめだな。服が汚れるから、着替えろよ」

 するとマリアは、少し顔を曇らせ、

「申し訳ございません。私、まだこの服一着だけしか持ってないんです」

 加持は頷き、

「おっ、そうか……」

と、言った後、ミサトの方に向き、

「ミサト」

「はいはい♪」

「お前、マリアに合いそうな着替え、何か持ってないか?」

「トレーナーとジャージなら着られるでしょ。エプロンは問題ないしね。……じゃ、マリア、こっち来てちょうだい。着替えましょ」

「はい、どうもありがとうございます。お手数をかけまして真に申し訳ございません」

と、深々と頭を下げるマリアに、ミサトは苦笑して、

「なに硬いこと言ってんのよ。そんなにしゃちほこばらんで、こっちにいらっさい♪」

「はい」

と、二人はミサトと加持の寝室に入って行った。

 + + + +

「はい、これ着て」

と、ミサトが差し出したトレーナーとジャージを、

「ありがとうございます」

と、また深々と頭を下げて受け取ると、マリアは、

「では、失礼致します」

と、言って、着ている制服を脱ぎ始めた。

「!」

 ミサトは刮目した。下着をちゃんと着けているのも意外だったが、それ以上に、服を着ていたら全く判らない、「マリアの体の素晴らしさ」には、注目せざるを得なかったからである。

 抜けるように透き通った白い肌と、ウエストのくびれからヒップにかけてのラインの信じられない見事さにも唸ったが、何と言っても、実にふくよかで、豊満そのものではあるが、ギリギリの所で限度を超える大きさではなく、実に美しいとしか言いようのないバストは、同性のミサトの眼をもクギ付けにするのに充分だった。

(……すごい。……完璧なプロポーションだわ。アスカもきれいな体してるし、わたしも体には自信あるけど、この子にはとても勝てない……)

と、思った次の瞬間、

(あれ? アンドロイドだから、いくらでも理想的に作れるんだ。勝ち負けなんか意味ないじゃないの)

と、気付いた丁度その時、マリアが微笑んで、

「お待たせいたしました。着替え、終わりました」

 ミサトも我に返り、改めてマリアの全身を見直した後、軽く頷いて、

「うん、背丈の関係でちょっとゆったりしてるけど、許容範囲ね。行きましょ♪」

「はい♪」

 ドアを開けながら、ミサトは、

(……でも、この子、なんでここまで精工に作ってあるのかしら、いくら作った人が「ヲタク」だったって言っても、ちょっとやり過ぎなんじゃ……)

と、少々疑問に思わざるを得なかった。

続く


この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'Moon Beach ' composed by VIA MEDIA(arranged by Singer Song Writer(有限会社インターネット))

機械仕掛けのチルドレン 第三話B
機械仕掛けのチルドレン 第四話A
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