機械仕掛けのチルドレン・第二話C
(Bより続く)
しかしアスカはそんな事を気にする様子もなく、シンジに顔を近づけ、今にも掴みかからんばかりの勢いで、
「家事はぜんぶこの子がやってくれるって、そんなおいしい話、ほかにもっていかれてなるもんですかっ!!! ここであんたとあたしが同居しさえすれば、条件はすべて満足すんのよっ!!! わかったわねっ!!」
「……は、はい……。わかりました……」
誇り高き元エヴァパイロット、サードチルドレンの碇シンジが、完膚なきまでに叩きのめされ、撃沈された瞬間である。その時ミサトが、にんまり笑い、
「流石はエリートパイロットだったアスカじゃな~い♪ ちゃあんとわかってるじゃないの。そうよ、家事全部やってくれるなんて、こんなおいしい話、ほかにないでしょ♪」
無論アスカに否やのあろう筈もなく、ミサト以上ににんまりとした顔で、
「ミサトも人がわるいわねえ♪ それならそうと、もっとはやくいってよ♪」
「だあ~ってさ、そんなに早く言ったら、面白くないじゃないのお♪」
「あ、そおかあ♪ ……でもさ、家事はこの子がぜんぶやってくれるってなったらさ、あいた時間を利用して、いろいろできるじゃない♪ ねえねえ、あたしさ、いっそのこと、せっかく京都に来たんだから、お琴でも習ってみようかな、なあんておもってたのよ♪ どお?」
「おおおっ、アスカ、い~い趣味してますねえっ♪ いーじゃんいーじゃん、おやんなさいよ♪ 振袖ぐらい、奮発してあげっからさ♪」
「ええっ!? ほんと?! やったねえっ♪ だからあたし、ミサト大好きなんだっ♪」
「そそ、あんたはわたしの可愛い妹であり、娘なのよっ♪ まっかせなさいっ♪」
「わーい♪ じゃさ、あさってでもさ、さっそく見にいかない? そんでさ……」
アスカがはしゃぐのはともかくとして、ミサトは悪酔いしているようにしか見えない。そう思ったシンジは、また加持の横に行って、
「ミサトさん、もしかして、ビールのほかにも、なにか?」
加持はまた苦笑して、サイドボードをそっと指差した。
「あ……」
新婚旅行で買って来た高級洋酒のボトルの封が切られ、半分以上なくなっている。
(だめだこりゃ……)
ここに来て、シンジも苦笑するしかなかった。その時ふと気付き、改めてマリアを見ると、何と、実に素敵な笑顔で微笑んでいるではないか。それに釣られ、シンジも思わず微笑んだ時、マリアと眼が合った。すると、
「……♪」
「!……」
何と、マリアは一層可愛く微笑んで軽く会釈したのである。その余りの可愛らしさに、シンジは一瞬、心を射抜かれたような気さえして、思わず会釈を返してしまい、
(とてもじゃないけど、ロボットとは思えないな……)
その時、加持が、
「じゃ、話としては、みんな同意してくれた、って事で、いいかな?」
と、言ったのへ、まずミサトが、
「もっちろんっ♪」
アスカも、
「オッケーッ♪」
シンジは、
「はい」
加持は、やっと笑って、
「よし、じゃ、決まりだ」
と言った後、マリアの方を向き、
「水無月君」
マリアは微笑み、
「はい♪」
「聞いてもらっていたと思うが、みんな君との同居に同意してくれた。今日から君は加持家の一員だ。よろしくな。それで、これからは、君の事を、俺も名前で、マリアと呼ぶから、君もみんなの事を名前で呼ぶようにな」
と、言った後、シンジとアスカにも、
「二人とも、マリアの事、家族の一員として、名前で呼んでやってくれよ」
「オッケーよ♪ マリア、がんばってね♪」
と、アスカ。シンジも、
「よろしくね。マリア」
ここでマリアは深々と頭を下げ、
「ありがとうございます。私、水無月マリアは、皆様のお役に立ち、可愛がって戴けますよう、粉骨砕身努力致しますので、末永く宜しくお願い致します」
と、言った。その言葉のいかめしさに、全員一瞬呆気に取られたが、すぐに加持が、
パチパチパチパチパチパチパチ
すかさずシンジも、
パチパチパチパチパチパチパチ
続いてミサトとアスカが、
パチパチパチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチパチパチ
「ありがとうございます」
マリアは最高の笑顔で微笑んでいる。
続く
この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。
BGM:'Moon Beach ' composed by VIA MEDIA(arranged by Singer Song Writer(有限会社インターネット))
機械仕掛けのチルドレン 第二話B
機械仕掛けのチルドレン 第三話A
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