第二部・夏のペンタグラム




 エヴァ弐号機の中で空を見上げるシンジとアスカの目前に、あの「最強の使徒・ゼルエル」が迫って来る。

「来たっ!! ナイフ装備!!」
「シンジ!! 行くわよっ!!」

 二人の脳裏に相手の言葉が響いた。

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第四十三話・勇猛果敢

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 日向が顔色を変え、

「使徒が弐号機に迫って来ますっ!!」

 五大は大声で、

「弐号機!! そいつには飛び道具は通じないと思え!! シミュレーション通りに白兵戦をやるつもりでやれ!!」

『了解!!』
『わかりましたっ!!』

 続いて五大は、

「零号機は弐号機をバックアップしろ!! 一時的に現場を離れて様子を見るんだ! もしチャンスがあれば使徒の背後から襲え!!」

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「了解! 一時現場を離脱します!」

 レイの叫びに呼応して零号機は即座にその場を離脱し、兵装ビルの背後に隠れた。

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ゴオオオオオオッ!!!

 風を切ってJAが戦場に迫る。反重力エンジンのお陰で殆ど足音もなく、風の音が響くのみ。まるで低空を飛行する戦闘機だ。

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 ゼルエルはナイフを持って身構える弐号機を睨み付けるような様子で上空に静止した。それを見たシンジは、

「アスカ! どうせこっちは飛べないんだ! あいつが降りてくるまではどうしようもないよっ!!」

「でも、あいつのビームがきたら一撃で終わりよっ!! ATフィールドももたないわっ!!」

 その時、

『こちら時田! もう少し待て! 何とかする!』

 シンジとアスカが時田からの無線に一瞬気を取られた瞬間、弐号機を見詰めていたゼルエルの眼が鈍く光った。

ブシュウウウウッ!!

「わあああっ!!」
「わあああっ!!」

 ビームが弐号機の足元を直撃し、地面に大きな穴が開く。一瞬ひるんだ弐号機にゼルエルは突如降下して襲いかかって来る。

「よけろっ!!」

 プラグ内にシンジの声が響く。弐号機は咄嗟に左に躱し、ゼルエルの体当たりを避けた。しかしゼルエルはすぐに体勢を立て直し、再度襲いかかろうとしている。

「アスカ!! 攻撃のチャンスを見ていてくれっ! 僕は回避に専念するっ!」

「わかったわっ!!」

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 日向が大声で、

「今の一撃で装甲板の25パーセントが融解しましたっ!!」

 それを聞いた五大は、

「なにっ!? 確か前の時は一撃で全て融解したはずだったな!? ジオフロント侵入が目的ではないのか?!」

 その時青葉が、

「マギの分析では使徒の視線は弐号機に集中していますっ!!」

 五大は思わず、

「なにっ!? では、まさか?!」

 マヤも、顔色を変え、

「じゃ、目的は、エヴァ?!」

「そうか! もうここにはアダムもリリスもない! だとしたら目的はエヴァそのものだ!! まずい! ここには停止したままの初号機があるぞっ!!」

 その時、時田からの無線が、

『本部! 攻撃の許可をっ!!』

「了解!! 頼みますっ!!」

 続いて、レイの声も、

『弐号機を援護します!!』

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 地表で弐号機に対峙するゼルエル。その背後のビルの陰にナイフを持って零号機が忍び寄って来た。真剣な顔のカヲル。

「綾波さん、無理するな。チャンスをよく見るんだ」

「ええ」

 レイも真剣な表情でモニタを見詰める。

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 ミサト達が乗ったヘリは戦火を避けながら何とか第3新東京市の郊外まで辿り着いていた。

 操縦士が、下を確認しながら、

「どこに降りましょう。IBO本部へのルートがある場所でないとだめですね」

 加持は頷き、

「そうですね。確かもう少し先にジオフロントへのゲートが……。お、明かりが見えるぞ。あれは何だ? ベースキャンプのようだが」

 それを聞いたミサトは、

「あそこに降りてみたらどう? あそこなら多分ゲートから1キロほどのところよ」

「よし、降りてみよう。あの明かりの手前の所にお願いします」

と、加持が言うのへ、操縦士は、

「了解しました」

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ブオオッ!! ヒュウウウッ!!

 JAが、対峙するゼルエルと弐号機の所に辿り着き、静止と同時に一陣の疾風が巻き起こった。こちらも兵装ビルの陰から様子を窺う。

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 ベースキャンプ。

 モニタを見ながら、時田が、

「よし! やっと目標にたどり着いたぞ! 攻撃態勢を取れ!」

 操作員甲が応え、

「了解!」

 その時だった。

「あっ!! 時田さん!?」

 時田が振り向くと、何と、そこにいるのはミサトである。

「えっ!? あっ! あなたは確か、葛城さん!!」

 その時加持が、

「ああっ!! モニタを見ろ!! エヴァが動いてるぞ!!」

「ええっ!?」
「なんだとっ!?」

と、驚いたミサトと冬月に、加納が進み出て、

「私がご説明申し上げましょう。しかし今は非常時です。後で纏めて、と言う事にさせて下さい」

 ミサトはやむなく、

「は、はい……」

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 零号機とJAが見守る中、弐号機はゼルエルとジリジリとした対峙を続けている。流石のシンジも、

「アスカ、こいつ、なに考えてんだろ。さっきからずっとこっちをにらんでばかりだ」

「……どうやら、あたしたち、いえ、この弐号機をねらってるようね……」

「えっ!?」

「こいつの目をみなさいよ。まるで獲物をねらうタカのような目をしてるわ」

「ええっ!! じゃ、まさか!?」

「……そのまさかよ。……こいつ、弐号機を『食う』つもりなのよ……」

「!!!!!」

 その時だった。突如ゼルエルはリボンのような両腕を鋭く伸ばし、

ブシュッ!!

「よけろっ!!」

 シンジの叫びに呼応して弐号機は左に身を躱す。

ドオオオオオンンッ!!

 ゼルエルの腕が背後のビルを直撃し、轟音が響き渡る。

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 それを見た時田が、

「今だっ!! かかれっ!!」

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バシュッ!!

 豹のような身のこなしで、JAは横からゼルエルに体当たりを食わせる。

ドスウウンッ!!

「グワアアアアアッ!!!」

ドオオオオンッ!!

 両者はそのまま地面に倒れ込み、またもや轟音が響き渡る。

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「アスカ! 今だっ!!」
「攻撃!!」

 弐号機はナイフを逆手に握り、ゼルエルに飛びかかった。しかしゼルエルはリボンのような腕を地面に突き立て、思ったより素早く摺り抜ける。

グサアアッ!!

 弐号機のナイフが地面を抉った。アスカが思わず叫ぶ。

「しまった!!」

「立て直せっ!!」

 シンジの叫びに呼応して素早く立ち上がる弐号機。見ると、ゼルエルは既に立ち上がって目を鈍く光らせている。それをビルの陰から窺う零号機。

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「今だっ!! ATフィールド全開のまま突入!!」

 レイの叫びに呼応して零号機はナイフを構えてゼルエルの脇腹めがけて突進する。

バシイイイッ!!
ドスウウウッ!!

 中和されたATフィールドの隙間からナイフの先端がゼルエルの脇腹を抉る。

「グエエエエエエエッ!!」

 文字通り「思わぬ横槍」を食らったゼルエルは顔を背けてビームを発射する。

ドオオオオオンンッ!!

 弐号機の横の兵装ビルに大きな穴が開く。

ヒュウウウウウッ!!

 突然風を切って大きな物体がゼルエルの後から体当たりを食わせる。JAだ。

ドスウウウウンッ!!

「グエエエエエエエッ!!」

ドオオオオオンンッ!!

 悲鳴を上げてビルに激突するゼルエル。

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 中央制御室。

「よしっ! 今の内だ! 初号機を起動するぞ!!」

と、五大はインカムを掴み、

「田沢君! 応答しろ!!」

『こちら田沢です!』

「すぐに待機室に行って相田君と八雲君の意思を確認した上、予備のプラグスーツに着替えさせて初号機ケージに連れて行け!!」

『了解!!』

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「グワアアアアアアッ!!」

 突如ゼルエルは咆哮を上げて飛び上がった。

ダッ!!

 逃がさじとジャンプし、ゼルエルに飛びつくJA。

ドスウウウウンッ!!

 再び両者共に落下して地面に激突し、地響きが上がる。

ブシュウウウウッ!!

ドオオオンッ!!

 ゼルエルはJAと組み合ったままビームを放つ。右肩口を吹き飛ばされ、弾かれて転がるJA。

 +  +  +  +  +

「しまったっ!! 被害状況はっ!?」

と、叫んだ時田に、操作員乙が、

「右肩破損! 右腕は使えませんっ!!」

 時田は大声で、

「立て直せっ!!」

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 JAは右腕をブラブラさせながらも素早く立ち上がり、兵装ビルの陰に隠れた。

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 メインモニタを見ながら、五大が、

「今だっ!! エヴァ両機!! 止めを刺せっ!!」

 その時、レナの声が、

『初号機パイロット両名、搭乗完了ですっ!!』

 すかさず五大は、マヤに、

「初号機起動しろっ!!」

「了解!!」

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 ゼルエルはヨロヨロと立ち上がった。

「うおおおおおおおおっ!! 行けえええっ!!」

 アスカが叫ぶ。

ガスウウウッ!!

 弐号機のナイフがATフィールドを潜り抜けてゼルエルを襲う。

「グワアアアアアアッ!!」

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「行けっ!!!」

 カヲルも叫ぶ。

ドスウウウッ!!

 零号機もゼルエルの横に飛び込む。ナイフは脇腹に突き立つ。

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 マヤが叫んだ。

「初号機起動完了!! 射出します!!」

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「グエエエッ!! グエエエエッ!!」

ブシュウウウウッ!!
ブシュウウウウッ!!
ブシュウウウウッ!!

 ゼルエルは断末魔の悲鳴を上げながらビームを乱射する。反射的に後退するエヴァ両機。

ドオオオンッ!!
ドオオオンッ!!
ドオオオンッ!!

 周囲の兵装ビルが吹き飛ばされ、轟音が響き渡る。エヴァ両機はビルの谷間を縫いながら辛くもビームを躱す。

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 逃げ回る弐号機の中で焦るアスカ。

「クソおおっ!! これじゃ攻撃できないわっ!!」

「アスカ!! あせるな!! チャンスをうかがうんだっ!!」

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「どうだ?! 動かせるかっ!?」

と、心配そうな時田に、操作員丙は、

「なんとか行けそうですっ!!」

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ガコオオオオンッ!!

 ゼルエルが物音に振り返ると、そこには射出された初号機がいた。

「グワアアアアッ!!」

 ゼルエルの眼が鈍く光る。

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「わわっ!! よけろっ!!」
「よけてっ!!」

 ケンスケとナツミが思わず叫ぶ。

ブシュウウウッ!!

 ビルの陰に隠れた初号機の横をビームが通過する。

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 時田は叫んだ。

「背中を見せた!! 今だ!!」

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ドスウウウンッ!!

「グワアアアアッ!!」

 突然ビルの陰から飛び出したJAに背後から弾かれ、ゼルエルはうつ伏せに転げる。

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 その時シンジとアスカの脳裏に突如、



「ああっ!!!」
「ああっ!!!」

 タロットの「08:力」のカードの映像が閃いた。

「アスカ!! これだっ!!」
「シンジ!! これよっ!!」

 弐号機はナイフを投げ捨て、ゼルエルの背中に飛び付いて馬乗りになった。即座にその太い首に腕を回し、折れよとばかりに締め上げる。

ギシッ!! ギシッ!! ギシッ!!

「グエエエエエエエッ!!」

 +  +  +  +  +

 五大はメインモニタに怒鳴った。

「よしっ!! 弐号機いいぞっ!! そのまま首をヘシ折れっ!!」

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ギシッ!! ギシッ!! ギシッ!!

「グエエエエエエエッ!!」

 首を強く締め上げられ、苦し紛れにゼルエルが胴を持ち上げる。その隙を逃さず、弐号機はゼルエルの腕の上から両脚を胴体に巻き付けてガッチリと締め付けた。

ギシッ!! ギシッ!! ギシッ!!

「グエエエエエエエッ!!」

「うわわあああああっ!!」
「うおおおおおおおっ!!」

 アスカとシンジは操縦桿を握り締め、声を限りに叫ぶ。弐号機の腕に更に力が篭る。

ブシュウウウッ!! ブシュウウウッ!!

 苦し紛れにビームを乱射するゼルエル。地面が溶けて行く。

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 悲痛な声で、青葉が、

「使徒のビームで地面が溶けて行きますっ!! このままでは装甲板が全て融解してしまいますっ!!」

 五大はインカムを掴み直し、

「零号機! 後から回って2体を引き起こせっ!! ビームを空に向けろっ!!」

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「綾波さんっ!!」
「渚くんっ!!」

 カヲルとレイも叫んだ。零号機は即座にゼルエルに組み付いている弐号機に後から抱き付き、体を引き起こしてゼルエルの顔を空に向けた。ビームは虚しく夜空に散る。

「このまま固定するんだっ!!」

「わかったわっ!!」

 +  +  +  +  +

 五大は続けて叫ぶ。

「初号機!! 今だ!! しゃがんで正面から突っ込め!!」

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「八雲ちゃんっ!!」
「相田さんっ!!」

 初号機はナイフを構え、体勢を低くしてビームを避けながらゼルエルの懐に飛び込んだ。

ガスウウウウッ!!

「グワアアアアアアッ!!」

 断末魔の悲鳴を上げるゼルエル。

 +  +  +  +  +

「うわわあああああっ!!」
「うおおおおおおおっ!!」

ギシッ!! ギシッ!! ギシッ!!

「グエエエッ!! グエエエエエエッ!!」

ギシッ!! ギシッ!! ギシッ!!

 シンジとアスカは叫び続ける。弐号機の腕にますます力が入り、ゼルエルの悲鳴と首の骨がきしむ嫌な音が響き渡る。しかしその時突然ゼルエルは弐号機に抱き付かれたままの体勢で、地面に対して強烈に両腕を伸ばして突き立てた。

ズガッ!!
ズガッ!!

 +  +  +  +  +

「わわわっ!!」
「うわああっ!!」

 もんどり打って後に倒れ込む弐号機。シンジとアスカが思わず叫ぶ。

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「ああっ!!」
「きゃああっ!!」

 零号機も弐号機の下敷きになり、カヲルとレイも思わず叫んだ。

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「うわわっ!!」
「きゃあっ!!」

 初号機も弾き飛ばされて後に転び、ケンスケとナツミも大声を上げた。

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 3機のエヴァが転んだ隙にゼルエルは素早く飛び上がった。

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 日向が刮目し、

「ああっ!! 使徒が飛びましたっ!!」

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 時田が怒鳴った。

「飛び付けっ!!」

 +  +  +  +  +

ダアッ!!

 飛び上がったゼルエルに対して左手を伸ばしてJAが飛びかかる。しかし、右手が使えないため、リボンのような腕を掴むのが精一杯だった。

ブツッ!!

ドスウンンッ!!

 ゼルエルの腕はちぎれ、JAは地上に落下した。そのままゼルエルはフルスピードで上昇して行く。

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「しまったっ!! 逃がしたかっ!!」

と、時田は悔しがったが、ミサトは、呆然として

「……逃げた。……使徒が……」

 加持も、まさかと言った顔で、

「……使徒が……逃げるのか……。なぜだ……」

 しかし、使徒の逃走を不思議とは思わない時田は、操作員に、

「質量を中和しなかったのかっ!?」

 それを聞いたミサトは驚き、

「えっ!?」

 操作員甲が、顔を曇らせ、

「申し訳ありません! 腕を掴んだ後で質量を戻しましたっ!!」

 しかし加納は、淡々と、

「やむを得ないでしょう。あいつを引き摺り下ろすのには質量ゼロと言う訳には行きませんからな……」

 ここに来て、ミサトは、

「……質量の中和……。もしかして……」

 加納は頷き、

「そうです。『反重力エンジン』です。それも後で説明致します」

「は、はい……」

 そう言った後、ミサトは、また黙るしかなかった。

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 中央制御室では、呆然とした顔の五大が、

「逃げた………」

 マヤと日向も、

「……使徒が……、逃げて行く……」

「……なんで、……使徒が逃げるんだ……」

 しかし青葉は、比較的冷静に、

「使徒は既にカメラによる監視可能高度を越えました。レーダーによりますと、南に向かって飛んでいます。この速度ですと、すぐに海に達します」

 それを聞き、五大は、

「……とにかく、エヴァ3機を回収しよう。作戦終了だ。……伊吹君、頼む」

「は、はい」

と、答えた後、マヤはインカムを着け直した。

「エヴァ各機、作戦終了します。回収ポイントに戻ってちょうだい」

 続く



この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'たとえ、君を抱いても ' composed by QUINCY (QUINCY@po.icn.ne.jp)

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