第二部・夏のペンタグラム




「鈴原君、洞木さん、お疲れさま。終了よ」

『はい』
『はい』

 マヤが二人に実験終了を告げ、中央制御室のメインモニタのウインドウが2つ閉じた。既にケンスケとナツミは実験を終えており、残りは2つである。

(……後はレイと渚君か……。でも、なんでこのごろ第7ばかりなのかしら……)

 今日は1月27日。チルドレンによる「機械制御実験」は順調に進められていたが、9日から始まった「戦闘シミュレーション」の「第7プログラム」の分量が徐々に増え、五大の指示もあって、ここ2、3日はメインとなってしまっていた。

 無論、その他の実験も多少は行われているのだが、あくまでも中心は「第7」である。この状況には流石のマヤも少し不審を感じずにはいられなかった。

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第三十四話・翻然大悟

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 待機室で休憩していたケンスケ、ナツミ、トウジ、ヒカリの所に、実験を終えたレイとカヲルが戻って来た。二人を見るや、トウジが、

「おっ、二人ともおつかれさん」

 ケンスケも、軽く頷き、

「これで今日は全員終わり、か……」

 やや疲れた顔のヒカリが、

「綾波さんと渚くんは今日はどうだった?」

と、言うのへ、カヲルとレイはやや苦笑し、

「まあまあだね」

「うん、まあなんとか……」

「そう。……でも、このごろ『戦闘シミュレーション』が増えたわね」

「そうだね。……でもまあ、たしかにこの実験は咄嗟の判断や反射的な動作のデータを取るのには優れているみたいだね」

と、カヲルが言ったのへ、トウジも、

「そやな。まあワシはこんなんはまあ嫌いやないさかいなんとかなるけど、委員長の方はまだちょっととまどう時もあるみたいやな」

 ヒカリは、小さな溜息を一つつき、

「……うん、こんなシミュレーションはそんなに得意じゃないから……」

 ナツミも、ヒカリの方を見て、

「そうなんですよねえ。わたしも、だいぶなれたけど、まだ得意じゃないです……」

 それを聞いたレイは、

「まあ、実験だから二人ともあまり気にしないで気楽にやればいいんじゃない」

と、二人をフォローする。トウジとケンスケも頷き、

「そやそや、気楽にやったらええんや」

「そうそう、ま、俺たちがフォローするからさ」

 ここに来て、ヒカリとナツミも、やや明るさを取り戻し、

「……うん、そうね。がんばるわ……」

「そうですね。がんばりましょ」

 と、その時、ミサトが入って来て、

「みんな、おつかれさま」

 すかさずトウジが、

「お、ミサトさん。今日のワシの成績はどないでした?」

 ミサトは、努めて明るく、

「うん、上々よ。みんな上達して来たわね♪」

「そうでっか。これやったら、使徒がもしまた来よってもバッチリやな」

 ヒカリが苦笑し、

「なに言ってんのよ。そんなことあるわけないでしょ。第一、エヴァはもう動かないのよ」

「あ、そやったな。あはははは」

「そうだね。これはあくまでもデータを取るための実験なんだから」

と、カヲルが言ったのへ、ミサトもそれを受け、

「そうそう。そんな事ある訳ないって♪」
(あってたまるもんですか……)

 レイも頷いて、

「……そう、そうですよね……」
(そんなこと、あってはならない……)

 と、その時、トウジはふと思い出し、

「ところでミサトさん、なんでここ1週間ほど、シンジのやつと惣流は来とらへんのです?」

「それがさ、ちょーっちわけありでね……」

 ミサトは少し暗い顔になった。

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 話は少し遡る。

 1月9日に初めての「戦闘シミュレーション」を行った時に少々失敗をやらかしたアスカは、その日は機嫌が悪かったとは言うものの、「シンジとの心の触れ合い」で一応元気を取り戻し、1日置いた11日に、再度シンジとコンビを組んで実験を行った。

 気合の乗ったアスカは、前回の汚名を返上せんと、頑張って使徒ゼルエルを追い詰めて転倒させ、最後の止めを刺そうと、

「こんどは負けないわよっ!! 行けっ!!」

『アスカっ!! あせっちゃだめだっ!!』

「うおおおおおおっ!!!!」

 アスカの叫びに呼応して弐号機はナイフを振り上げてゼルエルに飛びかかる。しかし、ゼルエルは最後の瞬間に両腕を地面に突き立てて急激に伸ばし、上方にすり抜けてまんまと弐号機の攻撃を躱してしまった。

ズウウウウンンッ!!

「ああっ!! しまったっ!!」

 弐号機はそのまま地面に倒れ込み、その上から体勢を立て直したゼルエルが目を鈍く光らせてのしかかって来る。

ブシュウウウウウウッ!!!

『シンジ君、アスカ、あなた達の負けよ。実験終了します』

 ヘッドホンから流れて来るマヤの声を聞きながら、アスカは黙って俯くしかなかった。

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 ミサトはここで溜息を一つつき、

「……と、言う訳なのよ。その後アスカが、どうしてももう一度、って言うから、もう一回やらせてみたんだけどね。またしくじっちゃったのよ。それでその日ひどく落ち込んじゃってさ。ちょっち気分転換にって事で、戦闘以外の実験をさせてみたら、今度はうまく行って、また元気になったから、さあ、これなら大丈夫だろうって思って、次の日に戦闘シミュレーションやらせてみたのね。そしたら、これがまた同じだったのよ。それでさ、戦闘の実験はしばらくさせない事にしたのよ」

 トウジとヒカリは、少し唸って、

「そんなことがあったんでっか……」

「そんなことが……」

 軽く頷き、ミサトは、

「それでさ、しばらくは他の実験させてたんだけどね。まあ調子を取り戻したみたいだからって、1週間ほど前に戦闘シミュレーションをさせてみたら、これがまたどう言う訳かおんなじでね。本人は、大丈夫だって言ったんだけど、マヤちゃんや本部長とも相談してさ、しばらくの間はシンジ君と一緒に完全に休ませる事にしたのよ」

 流石のトウジも真顔になり、

「そうやったんでっか。それは知らへんかったですわ。……そやけど、惣流のやつ、毎日学校で顔合わせてもいつも通り明るかったし、そないなそぶりは全然見せよらへんかったけどなあ……」

と、言ったのへ、ケンスケが、

「トウジと委員長はシンジたちとスケジュールが合わなくてあまりここで一緒にやる事なかっただろ。俺はたまたまアスカがしくじった時に一緒だったから、シンジとアスカがほかの実験ばっかやってるのは、もしかしたら、って気もしなくもなかったんだけどさ、あいつもそんなそぶり全然見せなかったから、そんなに深刻じゃないと思ってたよ……」

 ナツミも頷き、

「そうですね。アスカさん、たまたまちょっとスランプだ、ってだけだって思ってました。学校でも元気だったし……」

 ヒカリは、感心した口ぶりで、

「でも、アスカも立派ですよね。前だったら怒って当たり散らしてたのに、全然そんなようすを見せないなんて……」

「そうなのよ。わたしもアスカを見直したわ。あんなに芯の強い子だとは思わなかったわよ」

と、大きく頷くミサトに、レイとケンスケも、

「わたしもそう思いました……」

「俺もだよ。今回の件では、ほんと、アスカを見直したよ」

 その時、カヲルが努めて明るく、

「まあ、なんにしても、惣流さんのことだから大丈夫だよ。しばらく休んだらすぐに調子を取り戻すさ」

と、言ったので、ナツミも合わせて、

「そうですよね。なんて言ってもアスカさんなんですから」

 ここに来て、ようやく全員、少し気を取り直したようだった。

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 さてここは旧東京都に程近い日重共の工場である。全ての動作テストを完了したJAは再び工場に戻され、最終調整が行われていた。

「時田担当、如何ですか?」

「あ、加納さん。ご覧の通り、最終調整は殆ど完了致しました」

「そうですか。どうも有り難うございました。今後は取り敢えずここに保管して戴く事になりますので宜しく」

「了解致しました。……しかし加納さん、JAをこうやって再製作させて戴きましたが、実際の所、どうなんでしょう?」

「どう、と仰いますと?」

「……大きな声では申せませんが、『使徒』の事です」

「それはあくまでも、万が一の危険に備えて、と言う事ですから、現在の所、我々もそれ程深刻には考えておりません。JAはあくまでも深海開発の為に再製作した、と言う事です。要するに、万が一使徒が再来すると言う事があるとすれば、海の中が一番危険性が高いのは申すまでもありません。そこまで考えた上での『深海開発用』と言う事なのですから」

「なるほど、了解致しました。……まあ、『備えあれば憂いなし』と言う事も言えますからね」

「その通りです。……あ、それから先日別件でお願いした燃料電池の方の手配は如何ですか?」

「それは手配済みです。もう2、3日もすれば8基共入荷します。……しかしあれも変わった仕様ですね。まるでJAが背負えるような形じゃないですか」

「そうです。最悪の場合、燃料電池をバックアップとして活動出来るようにも考えております。AG機関だけに頼り切るのは色々と問題もありますからね。これも『備えあれば憂い無し』ですよ」

「なるほど。そう言う事ですか」

 二人は改めて眼前で仁王立ちとなっているJAを見上げた。

(深海開発用にだけ使う、と言う事であって欲しい。『万が一』などあってはならない事だ……)

 再製作している最中は無我夢中であったが、いざ完成してみるとやはり妙な「一抹の不安」が胸をよぎる。時田は複雑な心境でJAを見詰めていた。

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 こちらは松代。例の会社の倉庫では、「アダムとリリスの成長促進作業」が順調に進んでいた。

 やって来たゲンドウが、リツコの後に立ち、

「順調だな」

 リツコは振り向き、

「ええ、もう2体とも、人間で言えば12歳ぐらいですわ。もうすぐ外へ出せますわね」

 祇園寺もそこに来て、

「そうだな。いや結構結構」

「ところで、冬月副司令の様子はどうですの?」

と、言ったリツコに、ゲンドウは、

「すっかり諦めたのかおとなしくしているようだ。監視の方は社員連中に命じてあるが、まあ問題あるまい」

「そうですか……」

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(今日はもう27日か……)

 地下の独房に監禁された冬月は、なすすべもなく毎日を過ごしていた。とは言え、決して諦めた訳ではなく、何とか外に連絡する方法はないかと毎日考えてはいる。

(……さて、今日もやるか……)

 冬月はユニットバス内の電灯を点け、ドアを少しだけ開けて明かりが漏れるようにすると室内の照明を消した。そしてベッドの上で壁を向いて半跏座になると、手を組み、目を半眼にして2、3度大きく深呼吸をし、

(どうせ監視されているんだ。気取っても始まらん……)

 自嘲気味に心の中で呟いた冬月はもう一度大きく息を吸い込むと、口の中で何かを唱え始めた。

「ノーマクサーマンダバーザラダンカン、ノーマクサーマンダバーザラダンカン、ノーマクサーマンダバーザラダンカン、ノーマクサーマンダバーザラダンカン、ノーマクサーマンダバーザラダンカン、ノーマクサーマンダバーザラダンカン、ノーマクサーマンダ…………」

 不動明王のマントラである。冬月が所属した寺院の本尊は不動明王だったため、当然の事として冬月は毎日このマントラを唱えていたので、こう言う場合でも唱えるとなればやはりこれであった。

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 事務所の片隅で監視モニタの番をしながら将棋を指していた社員の一人が嘲笑気味に、相方に、

「おい、あのジジイ、また始めやがったぜ」

 相方も苦笑し、

「ほっとけほっとけ、どうせ死ぬための準備でもしてんだろ」

「そう言や、そろそろ晩の『エサ』の時間じゃないのか」

「そうだな。面倒くさいこった」

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 さてこちらはマンションのシンジとアスカ。この所二人とも実験を休んでいるため、学校から真っ直ぐ帰って来て、暫くリビングでボケッとしていた。

「シン……」
「アス……」

「なに?」

「いやその、コーヒーでもどうかな、って思ってさ。……アスカは?」

「え? そうなの。あたしも今そういおうとしてたのよ」

「そっか。じゃ、入れるよ」

「今日はあたし入れるわ」

「あ、そうなの。……じゃ、お願いしようかな」

「うん。まかせといて」

 そう言いながらアスカは立ち上がって台所に行った。シンジもゆっくり立ち上がってアスカに続く。

 コーヒーを入れる段取りをしながら、アスカが、

「……ねえシンジ」

「なに?」

「なんだかさ、このごろあたしとあんた、みょうに息があいすぎてない?」

「あ、アスカもそう思うの。いや、実は僕もちょっと変に思ってるんだ。ほら、コンビ組んで実験始めたあたりから、なんだかさ、アスカの考えてることがなんとなくわかる、って言うのか、そんな感じなんだ」

「シンジもそうなの。なんでだろうね……。やっぱ、実験の時、脳神経スキャンインタフェースでつながってるからなのかなあ」

「でもさ、実験以外の時もそんな感じしない?」

「そうなのよ。なんだかさ、あんたのかんがてることや、あんたの気持ちがなんとなくわかることがあんのよ。ま、気のせいだと思うんだけどね」

「……ところでさ、聞いてもいいかな……」

「なに?」

「いやその、アスカ、調子の方はどうかな、って思ってさ」

「それがさ、あたしにもさっぱりわからないのよ。こうやってるとさ、べつになんともないし、戦闘以外の実験はちゃんとできてるでしょ」

「うん」

「なのにさ、戦闘シミュレーションやると、へんにトチっちゃうのよねえ。なんでなのかなあ」

「伊吹さんの話では、最初のつまづきが心理的にひっかかって、また同じ失敗するんじゃないか、って心の奥底で思ってるからそうなるんじゃないか、ってことだったよねえ……」

「うん。でもさ、そういわれてもピンと来ないのよ。自分じゃそんなこと思ってもいないしさ……」

「……でもさ、僕がこんなこと言うのもなんだけど、こんな状態でも、アスカ、とっても元気で明るいだろ。だから、すぐに元に戻る、って、信じてるよ……」

「ありがと。……あたしもさ、この前シンジにいわれてね、ちょっとかんがえをあらためたのよ。たしかにうまくいかないのはくやしいけどさ、ここでおこってもうまく行くわけじゃないしね。……ほら、最初のシミュレーションの日にさ、あたしちょっとおこってたでしょ」

「うん……」

「あの時さ、シンジが、僕のために元気になってほしい、って言ってくれたの、とってもうれしかったんだ。……それからさ、その時は忘れてたけど、あれからあとにさ、お正月の時にナツミが言ってたこと思い出したのよ」

「八雲が? どんなこと言ってたの?」

「うん、あの子ね、悲しんだり苦しんだりしてしあわせになるんなら、いくらでもそうする、でも、そんなことしても、かえってよけいにつらくなるだけだから、明るく元気にがんばってるんだって、言ってたのよ」

「へえ……」

「それでさ、あたしその時言ったのよ。ナツミをみならって、なるべくおこらないようにするってね……。それでさ、から元気でもいいから、明るくしよう、って思ってさ……」

「そうか……。あ、そうだ!」

「どうしたの?」

「うん、アスカのスランプの原因をタロットで占ってみたらどうかな、って思って」

「あ、なるほどね……。うん、やってみようか」

 シンジはサイドボードの片隅にしまってあったカードを取り出すと、何度か繰った後、テーブルの上に3枚抜き出した。



「シンジ、あんたはどうおもう?」

「うーん……、過去は『学識のある女性』みたいだし、現在は『足から吊るされて身動きができない』だろ。で、結論は『解放された人』に思えるんだよね……」

「うん、それで?」

「だからさ、こんな事を言ったらアスカに怒られるかも知れないけど……」

「いいわよ。言ってみて」

「うん、なんか、『知識が逆に足かせになっているが、それに気がついて最後は解放される』みたいに思うんだよねえ……。で、アスカはどう思うの?」

「あたしはさ、これ、自分のことだから、ぎゃくによくわからないんだけど……」

「うん」

「どうもピンとこないのよねえ。知識がぎゃくに足をひっぱってる、って言われても、どんな知識がじゃましてるのか、心当たりがなくってさ……」

「そうか……。そうだよねえ……」

 その時、

トゥルルル トゥルルル トゥルルル

「あ、僕出るよ。…………はい、葛城です」

『IBOの五大です』

「ごだいさん? あ! 失礼しました! 本部長」

『ははは、まあ、五大と言ってもピンと来ないだろうな。碇君が出てくれてちょうどよかった。……どうだね。惣流君の様子は?』

「は、はい。元気です」

『そうか。……よし、すまないが惣流君に代わってくれるかね』

「は、はい。……アスカあ」

「なにー?」

「本部長から電話だよ」

「えっ!? 本部長から?」

 +  +  +  +  +

「はい、はい、……わかりました。では今17時ですから、18時にはまいります」

と、電話を切った後、アスカは、自分に代わってコーヒーを入れていたシンジの所に戻って来た。シンジが振り向き、

「……どうしたの?」

「それがさ、もしよかったらシンジと一緒に本部に来てくれないか、だってさ。それも、これは命令じゃなくて、あくまでも希望だから、って……」

「どう言うことかな……」

「わかんないけどさ、とにかくコーヒー飲みおわったらあたしは本部に行くわ。シンジも来てくれるでしょ?」

「うん、もちろん行くよ」

「それからさ、もし持って来られるなら、大学の卒業証書を持って来てくれ、だって」

「ふーん。……どう言うことなんだろ……」

 +  +  +  +  +

 IBO本部長室。

 五大はスマートフォンとモバイルパソコンを接続し、京都の中河原から送られて来た暗号メールを解読していた。

(……上の調査と中河原の占断結果がここに来て一致したか……)

 メールの主旨は、

「『例の二人の行方』について中河原が占断し、それに基づいて上層部が調査を進めていた所、松代に妙な霊的波動を感知した。引き続き調査を進める」

と言うものであった。更に補足として、

「日重共担当の加納の方は順調に態勢を整えている。燃料電池8基の納入も近い。そちらも最悪の事態に備えて、もし可能ならば『No.3再生計画』の下準備も開始すべし」

と書かれている。

(よし……)

 五大はキーボードを素早く叩き、文書を作成した。

(服部と田沢の携帯の番号は、と……)

 +  +  +  +  +

 情報部。

 加持と服部は本日の業務を終え、帰り支度をしていた。一足先に支度を終えた服部が席を立つ。

「部長、ではお先に失礼致します」

「ああ、お疲れさん」

 服部が退出した後、加持もパソコンを終了させたが、ふと気付いて再度座り直し、再度起動しようとした時、

(……モバイルマシンの方がいいか……)

 無論IBOは専用回線を持っているため、そのままでインターネット接続は可能である、しかし、色々と調べるにあたっては、リモートホスト情報などの事を考えるとプロバイダ接続の方がいい。そう思った加持はモバイルパソコンを取り出し、

(京都財団のURLは、と……)

 程なくして、モニタに「京都財団ホームページ」の画面が映り、

(……まあ、どうせ公開情報しかわからんがな……)

 トップページから色々と見ていると、ふと「財団の紹介」と言うコーナーが更新されている事に気付いた。

(……ふーむ、今頃「紹介のコーナー」を更新するとは……)

 画面をクリックすると、財団の紹介文が表示される。文章を読んで見たが、これと言ってめぼしい記述はない。

(……ま、当然だな……)

 その時だった。加持の眼は文末にあった理事長の名前にクギ付けになった。

(……!!!!!!! これは!!)

「安倍ハルアキ」

(「安倍ハルアキ」だと?!! 「ハルアキ」を漢字で書けば「晴明」じゃないか! ……安倍晴明!!?)

 +  +  +  +  +

 18:00。シンジとアスカは本部にやって来た。廊下を歩きながらアスカがふと漏らす。

「……本部長室にいくなんてさ、なんだか緊張するわ」

「そうだね。……でもさ、別に怒られるわけでもなさそうだから……」

「そうよね。……ま、『あたってくだけろ』、よ……」

 やがて二人は本部長室に着いた。アスカがドアをノックする。

トントン

「どうぞ」

 +  +  +  +  +

 アスカとシンジは、本部長室のソファに、五大と向かい合って座った。

 五大は開口一番、アスカに、

「よく来てくれた。休養中なのにすまないな」

 アスカは軽く一礼し、

「いえ、どうもすみません。あたしの方こそ、調子がわるくて休ませていただいてもうしわけないです」

「まあ気にするな。スランプは誰にでもある。……実は、今日来てもらったのはな、まあ、私がとやかく言う事でもないのだが、少しでも惣流君のスランプ脱出に協力出来たら、と思ったからなんだよ」

「はい、どうもありがとうございます。……でも、自分でもどうも原因がわからなくて……」

 ここで五大は、シンジの方を向き、

「碇君」

「は、はい」

「どうだね。コンビを組んでみて、惣流君の具合は?」

「あ、はい。……僕にもよくわからないんですけど、なんか、戦闘シミュレーションになると、アスカは変に力んでるみたいに感じることがあります……」

「そうか」

 五大は頷くと、アスカの方に向き直り、

「惣流君、君は今の碇君の意見をどう思うね?」

「はい。……自分では意識していないんですけど、たしかにそういわれてみると、少しムキになっているようにもおもえます……」

「そうか。……では話を変えよう。……惣流君、卒業証書は持って来たかね」

「はい、ここにあります」

と、アスカが差し出した証書を受け取って確認した後、五大はそれをアスカに返し、

「うむ。……君は8歳にして大学に入学し、12歳で卒業した稀代の天才少女だ。それは間違いない。しかし、私が見る限りでは、それが逆に今の君にはマイナスになっているとしか思えないのだよ」

「!!!!……」
「!!!!……」

「少し厳しい事を言うようだが、もしよかったら聞くだけでもいいから一応聞いてもらえるとありがたいのだがね」

 アスカは、少し青ざめた顔で、

「……はい。……どういうことでしょうか……」

「君は8歳にしてエヴァンゲリオンのパイロットに抜擢された。それと同時に、気の毒な事だが、お母さんを亡くした」

「…………」

「そして、その後すぐに大学に入学『させられ』た。……そうだな?」

「はい、そうです……」

「大学では勉学はもちろんだが、パイロットになるための準備として、色々と実験をさせられた。そして、優秀な成績で卒業した」

「……はい……」

「ここからが肝心なんだ。君には気の毒だが敢えてはっきり言おう。君は、『仕組まれた子供』であり、大学卒業も、その一環でしかなかったのだよ」

「!!!!!!!………」
「!!!!!!!………」

 五大の言葉に二人は絶句したが、一瞬置いて、アスカは恐る恐る、

「……それは、どういうことなんですか……」

 五大は、静かな口調で、

「私が調べた所、君は大学で色々と実験をやらされて、その時得られたデータはエヴァンゲリオンの操縦のための基礎データとなった」

「……………」

「お母さんと死に別れた君は、『一人で生きて行く』と言う決意の下、一所懸命勉強し、実験に取り組んだ。それはおそらく普通の大学生よりもずっと熱心だっただろうし、それに関しては大した物だと思う。しかし、何と言っても君はまだ幼過ぎた。『大学卒業』や『エリートパイロット』に自分の人生のプライドをかけるには、『人生経験』が少な過ぎたのだよ」

「!……」

「人生と言う物は、大学で勉強すればいいと言うものではない。色々な事を経験し、痛い目をしながら体で覚えて行くと言う部分がある事は否定出来ない。そして事実、君はパイロットとなり、色々な事を経験した」

「……はい……」

「しかし、これは君の責任と言うのではなく、大人達のサポートの拙さもあり、君はいくつかの失敗をして、痛い目に遭った。しかし、その時に君は、『大学を卒業したエリートパイロットたる私がこんな失敗をする筈がない。これは他の者が悪いんだ』と考えなかったかね」

「!!!!!!! ……はい、そのとおりです……」

「日本に来て、碇君や綾波君と一緒に仕事をするようになった君は、どうしても二人に負ける事が許せなかった。だから、『失敗』を自分の糧として受け止める事が出来なかったのだ。まあ、ある意味においては当然だろう。君の立場なら、誰でもそうなってしまうと思う。それは必ずしも君の責任だけではない。君に不要な重荷を負わせた大人達にも大いに責任はある」

「……………」

「惣流君の場合、エヴァパイロット時代の失敗の記憶がトラウマになって、それが無意識レベルに沈潜していると考えられる。それが今回のシミュレーションが引鉄となって表出したのだろう。そしてそれが君の判断を狂わせてしまったのだ」

「……………」

「しかし、今となっては、君に不要な負荷をかける事は私の本意ではない。それで色々と考えたのだが、この際、君に真実を伝えた方がいいだろうと思ったのだ」

 またもや、アスカは恐る恐る、

「真実、って、どういうことなんですか?……」

「しっかり聞いて欲しい。君の大学入学と卒業は、全てゼーレによって段取りされたものであって、君自身の意思や能力とは無関係の物だった、と言う事なんだ」

「そんな!!!!」
「!!!!!」

 アスカは思わず叫び、シンジは顔色を変えた。しかし五大は同じ口調で、

「厳しい事を言うようだが、これが真実だ」

 流石のアスカもすっかり落胆し、

「……それ、ほんとなんですか?……」

「本当だ。なんなら調査結果を見るかね?」

「……いえ、けっこうです。……はい、わかりました……」

と、がっくり肩を落とした。その様子に、シンジは、

「…………」
(アスカ……。あんなに大卒をほこりにしてたのに……)

 ところが、ここで五大は、

「しかしだ、これはあくまでも私見だが、惣流君は素晴らしい能力と才能を持っている。君自身の本当の価値は、大卒とかエリートパイロットとか、そんな物とは全く別の所にあるんだ」

 驚いたアスカは、顔を上げ、

「えっ?! それは………」

 五大は、またもさっきと同じ口調で、

「まず、君が育った環境がそうだった事もあるが、それだけ流暢に日本語もドイツ語も話せるし、英語にも堪能じゃないか。それは大学で学んだ訳ではあるまい」

「は、はい……」

「次に、君は大学では物理学を専攻していた。8歳にして他の学生と肩を並べて勉強出来たその才能は天賦の物だ。それ自体を誇りにすべきだよ」

「…………」

「この2つを元にして考えればわかるが、君は知的好奇心が旺盛で、理解力がずば抜けている。たまたま日本に来るまで『挫折』を経験した事がなかった、つまり、これもゼーレがそうさせていただけなのだが、そうだったからこそ、日本に来てからのちょっとした失敗を大きく考え過ぎてしまい、その『考え過ぎ』が自らの才能を逆に縛ってしまっていただけだ」

「…………」

「つまり、君自身の価値とは、家庭的に恵まれなかったにも拘わらず、自分で今まで頑張って来た、その『努力する力』にこそあるのではないのかね」

「!!!」

 五大の意外な指摘に一瞬戸惑ったが、アスカは、

「……でも、結果がだせなかったら、いくら努力しても……」

 意外にも、ここで五大は苦笑しながら、

「それは確かにその通りだ。いくら努力しても結果を出せなければ何にもならない。しかし人生と言うのは面白いと言うか皮肉な物でな、少なくとも私が知る限りでは、努力や失敗なしで出した結果は、その結果自体に潜む問題点を知る事が出来ないから、後で大きな落とし穴に落ちる事が非常に多い。これは本当に不思議なぐらいそんなものだ」

 やや混乱したアスカは、上目遣いに五大を見て、

「それは、どういうことですか?……」

「例えて言おう。目の前に爆弾があったとする。それを処理するのに、それが爆弾だと知って処理するのと知らないで処理するのはどちらが危険かね」

「それは、もちろん知らないで処理するほうが危険です」

「そうだな。では、使徒と戦う時に、相手の強さの度合いを知った上で戦うのと、知らないで戦うのとどっちが危険だね?」

「!!!!!」

 五大の鋭い指摘に、アスカは過去を思い出して一瞬絶句したが、すぐに、

「……それは、もちろん、知らないで戦うほうが危険です……」

「その通りだ。では惣流君、それを君の過去に当てはめて考えてみたまえ。使徒と戦って、たまたま運よく勝ったとしても、それは相手の全てを知った上で計算された勝利ではない。もし次に同じような事態に直面したら、果たして同じように勝てるかどうかはわからないだろう」

「はい、たしかに……」

「こんな事を言って申し訳ないが、これはまさに君が経験して来た事そのものではないのかね」

「……はい、そのとおりです……」

「使徒との戦いは手探りだった。その意味で、大卒やエリートパイロット等と言う『勲章』は何も役に立たなかったはずだ。まあ、記録では、浅間山での戦いの時、熱膨張の知識が役立ったようだが、それは大卒の肩書きとは直接関係ない事はわかるな」

「……はい」

「つまり、『使徒との戦い』と言う、本来『大卒の肩書き』とは無関係な事に対して、『大卒の肩書き』で戦おうとしていたのが過去の君だったのだよ」

「!!!!!!」

 この五大の一言はアスカの心を鋭く貫いた。そして、

(「知識が逆に足かせになっているが、それに気がついて最後は解放される」って、これだったのね……)

と、占いでのシンジの指摘を思い出し、変に納得してしまった事により意外にも逆に気が楽になって、一呼吸置いた後、アスカは、

「……はい、今かんがえたらよくわかります……」

 チラリとシンジを横目で見ると、変に驚きながらも納得したような顔をしている。どうやらシンジも占いでの自分の指摘を思い出したようだ。

 そして、五大は続けて、

「本来君自身が自分の問題として捉えるべきだった『失敗』を、『大卒の肩書き』で何とかしようとして、無駄な努力をしていたから、悪循環を生じていたのだ。これが君の一番の弱点となっていたのだ」

「…………」

「しかしな、君は何のかんのと言いながらも、あの苦しい戦いを何とか切り抜けて来たではないか。『結果』と言うのなら、君が今こうして元気でここにいる事が何よりの『結果』だろう」

「はい。……そうですね。たしかに……」

「では、今まで言った事を踏まえて考えて欲しいのだが、もし自分が大学卒業等とは無関係で、普通の小学校を卒業し、中学生になっていたとしたら、そんな自分を嫌うかね? 今の君の気持ちで考えて欲しい」

 実に意外だった。かつての自分なら、こんな事を言われたら荒れ狂っていただろう。しかし今のアスカはそうではなかった。シンジの占いと五大の一言一言を改めて噛み締める内に、アスカの心に、「心地よい開き直り」とも言うべき、不思議な感覚が生まれて来たのである。

 そして、暫しの沈黙の後、アスカは顔を上げると、落ち着いた声で、はっきりと、

「いいえ、きらいになりません」

 シンジは驚き、思わず、

「! ……アスカ……」

 五大は、再びアスカに、

「そう思えるかね?」

 アスカは、深く頷き、

「はい。前のあたしだったら、こんなふうにはおもえなかったとおもいます。でも、今はそれをすなおにおもえるようになりました」

「よし、わかった。では私が今ここで君に改めて言おう。卒業証書を貸したまえ」

「え? は、はい……」

 訳が判らないまま、アスカは五大に証書を渡した。それを受け取った五大は、突然、「この上ない笑顔」を浮かべ、

「惣流アスカ・ラングレー、君は今こそ真の意味で『大学を卒業』した事を認める。おめでとう。誇りを持ってこれを受け取りたまえ」

 アスカは一瞬戸惑ったが、次の瞬間、「最高の笑顔」で一礼し、

「はい。ありがとうございます」

と、両手を差し出した。シンジは思わず、

「アスカ、おめでとう」

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 無論、五大も心から、

「おめでとう」

パチパチパチパチ
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 二人の心からの拍手に、アスカの顔は明るく輝いている。

 その時、五大がニヤリと笑い、

「さて、と、……どうだ? この際だから、一気に『敵討ち』と洒落込むか?」

 アスカは何の事か判らず、

「えっ? かたきうち、って……」

 しかしシンジはすぐ気付いて、

「あ、そうか! それで僕も呼ばれたんですね」

「シンジ、どういうことよ」

「アスカの『かたきうち』だよ。そうですね? 本部長」

 五大は頷き、

「その通りだ。まだ技術部のスタッフは残っているしな」

 ようやく気付いたアスカは、苦笑して、

「あ、そっかあ! ……あはは、あたしもにぶいわねえ……」

 五大はまた笑って、

「そうそう、それぐらいの『精神的余裕』があればもう大丈夫だ。やるかね?」

「はいっ!」

 アスカの元気な声が響き渡った。

 +  +  +  +  +

 中央制御室。

 シンジとアスカを連れてやって来た五大が、

「みんな、ちょっとすまない」

 マヤと日向が振り返り、

「あ、本部長。あら、シンジ君とアスカも」

「なんでしょうか?」

 五大はマヤに向かって、

「惣流君がスランプを脱した。第7をやらせてやってくれ」

「えっ!? は、はい」

と、流石にマヤも驚き、

「アスカ、大丈夫なの?」

 しかしアスカは自信の表情で、

「うん、だいじょうぶよ♪」

 それを見た青葉は、すかさず、

「その様子ならOKだな。……早速準備します」

「頼むぞ」

と、頷きつつ、五大はシンジとアスカに、

「では、碇君と惣流君は実験室に行きたまえ」

「はいっ!」
「はいっ!」

 +  +  +  +  +

 ヘッドホンからマヤの声が、

『アスカ、シンジ君、準備はいい?』

 すかさずアスカは、

「オッケーよ」

 シンジも同じく、

『僕もいいです』

『では、シミュレーション開始!』

 +  +  +  +  +

 総務部室。

トゥル トゥル トゥル

 レナが電話を取る。

「はい、総務部です」

『五大だ。葛城部長はまだいるかね?』

「はい。少々お待ち下さい」

と、レナは電話を保留し、

「部長、本部長からです」

 ミサトは頷くと受話器を取り上げ、

「はい、葛城です」

『五大だ。忙しい所をすまないが、すぐに中央に来てくれ』

「は、はい。了解しました」
(なんだろ?……)

 五大の口ぶりに、ミサトは意外な印象を拭えなかった。

 +  +  +  +  +

 中央にやって来たミサトは刮目した。

「えっ!! これなに?! アスカとシンジ君なの?!」

 すかさず五大が、

「そうだ。私の判断でやらせた。見ていたまえ」

「は、はい……」
(アスカ……)

 +  +  +  +  +

 すっかり肩の力が抜けたアスカは使徒ゼルエルを順調に追い詰め、

「よしっ!! 今だっ!! シンジ! まかせるわっ!」

『えっ!? ……了解っ!!』

 +  +  +  +  +

 シンジはゼルエルの映像を見詰めると、

(よし、ここだっ!!)

 弐号機はやや左に回り込み、ナイフを構えて突入する。その時ゼルエルはまたもや腕をムチのように振り上げて「目潰し」を仕掛けて来た。

『しゃがんでっ!!』

 脳裏にアスカの声が響き、弐号機は頭上スレスレでゼルエルの腕を躱し、そのまま突入する。

 +  +  +  +  +

バスウウウウッ!!

「やったわっ!!!」
『やったっ!!』

 弐号機のナイフは見事にゼルエルのコアを貫いている。

『アスカ、シンジ君、おつかれさま。終了よ』

「了解っ!♪」

 ヘッドホンから流れるマヤの声も明るい。それを聞きながらアスカは会心の笑みを漏らしていた。

 +  +  +  +  +

 二人が待機室に戻って来ると、既にミサトとマヤが待っていて、ミサトが開口一番、

「アスカ、おつかれさま。見事に復活ね♪」

「えへへ♪ やっと、ってとこね」

と、照れ笑いを浮かべるアスカに、マヤも微笑んで、

「今日のシミュレーションは素晴らしかったわ。今までの全ての実験の中で最短時間の記録よ」

「へえ、そうだったの」

と、アスカは意外な顔をしたが、シンジも、

「うん、確かに今日のアスカはすごくさえてたね」

 ここへ来て、

「そりゃそうよ♪ 完全復活したセカンドチルドレンだもーん♪」

と、すっかり機嫌を直したアスカに、マヤが、

「ところで、使徒を追い詰めてからシンジ君に任せたでしょ。あれはどう思ったの?」

「それがさ、あたしが今まで失敗してた時は、いつも最後のツメの部分だったでしょ。だったら、この部分だけはシンジにまかせてみようかな、って、ふっとおもったのよ。そしたらさ、最後の目つぶしがなんとなく予想できてね。それでとっさにしゃがませたのよ」

「そうなの。すごくいい判断だったわよ」

「ありがと♪」

と、笑った後、アスカは少ししおらしい声で、

「……今までみんなに心配かけてごめんね」

と言ったのへ、ミサトは笑って、

「なに言ってんのよ♪ もうすんだことじゃない♪」

 マヤも微笑み、

「じゃ、これでアスカも復活、ってことで、明日からまたスケジュール入れさせてもらうわね♪」

「まかせといて♪」

と、大きく頷くアスカに、シンジは心の中で、

「…………♪」
(よかったね。アスカ……)

 その時ミサトが、

「よーし、今日は私もこれで帰ろうかな。アスカの完全復活のお祝いにレストランで食事しましょ♪」

「わーい、うれしいな♪」

「ミサトさん、ありがとうございます」

と、喜ぶ二人に、ミサトは、

「じゃ、ちょーっち待ってててね。すぐ戻って来るからさ♪」

「はーい♪」
「はいっ♪」

 続く



この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'夜明け -Short Version- ' composed by Aoi Ryu (tetsu25@indigo.plala.or.jp)

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