第一部・原初の光




「さっきのやつら!!!!」

 ミサトは思わず叫んだ。ドアを開けて非常階段に出る暇は最早ない。その時、

ブシュゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
ブシュゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
ブシュゥゥゥゥゥゥゥッ!!!

「グェェェェェェェェェェェェッ!!!」
「グェェェェェェェェェェェェッ!!!」
「ギャァァァァァァァァァァッ!!」

 不意に3体のマーラは煙を上げて床に崩れ落ちた。煙の向こうに何かが見える。

 +  +  +  +  +

第三十三話・真相

 +  +  +  +  +

「中畑! 葛城君! 二人とも大丈夫か!?」

「山之内君!!」

「加持君!!!」

 そこに立っていたのは山之内と加持だった。

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 世界中で展開されているマーラと人間の戦闘は完全に泥沼の消耗戦に入っていたが、徐々に人間側が押され始めていた。マーラの猛反撃が余りにも凄まじかったからである。

 空の戦いでは飛行する悪魔の大群によって戦闘機は次々と撃墜され、制空権をマーラに奪われつあった。

 海の戦いでも軍艦に半魚人が乗り込んで、次々と乗組員を襲って行った。更には潜水艦の取水口に取り付いて冷却水を止めたため、エンジンがオーバーヒートして緊急浮上した所を狙われるケースが続出していた。

 +  +  +  +  +

 山之内は肩に掛けた予備銃を由美子に渡し、

「バリヤーを使うマーラにはこれしか効かない。自衛隊が開発した新型マントラレーザーガンだ。これを持て」

 加持も同じように予備銃をミサトに渡した。由美子は怪訝そうに、

「でも、山之内君、どうしてこれを……」

「説明は後だ。行くぞ。……加持、行こうぜ」

「おう。……葛城、行くぞ。大丈夫か」

「大丈夫よ」

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 四人はサトシの部屋に辿り着いた。山之内が銃でドアを指し、

「この部屋だ。カギが掛かっている。ドアを破るぞ」

ジュワァァァァァァァァァッ!!

 レーザーはいとも簡単に錠を焼き切った。山之内は頷くと、

「俺と加持で外を見張る。中畑と葛城君は部屋を探れ! 早く!」

 由美子とミサトが部屋に飛び込む。 ミサトは目敏く机の上のメモリカードを見つけ、

「あったわ!!」

 それを聞いた山之内が叫んだ。

「あったか! 行くぞ!」

 しかしその時、由美子が、

「ちょっと待って! 連絡するから! ……こちら中畑! メモリカードを回収しました! 中央応答願います!」

 すぐに松下の声が無線機から響く。

『回収出来たか! すぐに戻ってくれ! 準備は出来ている!』

「了解! ……いいわ! 行きましょう!」

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 由美子からの通信をカプセル内で聞いていたサトシは一応の安堵の溜め息を漏らした。

(よかった! 無事で! ……でも、帰りも危険なんだ……)

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 由美子達四人は全力で走っていた。階段を駆け降り、表玄関から出ようとした時、ミサトが叫んだ。

「怪物の大群!!!!」

 表はマーラで一杯である。すかさず加持が、

「葛城! 俺と山之内が囮になる。中畑君と一緒にカードを届けろ!」

「加持君! でも!!……」

「ごちゃごちゃ言うな! 行くんだ! 生きて帰れたら、今度こそ本当に8年前に言えなかった事を言うよ」

「加持君……」

「……達者でな。山之内、行くぜ!」

「おう!! 行こう!」

 その時、由美子が叫んだ。

「山之内君!! まって! 一言だけいわせて!」

「何だ!?」

「愛してるわ!!! 絶対に死なないでね!!!」

 山之内は何も言わずにニヤリと笑い、手を上げて飛び出して行った。続いて加持が飛び出す。由美子とミサトの眼は僅かに潤んでいた。

「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「おうりゃあああああああああっ!!」

ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 二人は叫びながらレーザーを乱射し、建物に添って走って行った。不意を衝かれた付近のマーラが断末魔の悲鳴を上げながらバタバタと倒れ、気付いた遠方のマーラが二人を追って移動し始める。それを見たミサトは、

「由美子! 今よっ!」

「うんっ!!」

 二人は本部入口のシャッターに向かって走り出した。

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「そろそろだな。……よしっ!」

 腕時計に眼をやった後、松下はインカムを掴み、

「山上機関部長! 予備のカプセルを3機、地下倉庫に運んでくれ! 事情は判っているな!!」

『こちら山上! 了解しました!! 事情は判っていますっ!! 武器はどうしますかっ!?』

「オクタの長剣を各自に持たせろ! 丁度ナイフぐらいの長さだろう!」

『了解! 用意します!』

 松下は頷くとシンジ達の方を向き、

「碇君達、こっちへ来てくれ!」

「はいっ!」
「はいっ!」
「はいっ!」

 駆け足でやって来た三人に、松下は

「間もなく中畑君と葛城君が帰って来る。エヴァンゲリオンの出撃準備もすぐ整う予定だ。君達はロッカールームに行ってジェットスーツに着替えてから地下倉庫に行くんだ。そこで待機してくれ。判ったな」

「はい!」
「はい!」
「はい!」

「よし。では誰かに案内させよう」

 それを聞いていた岩城が、

「私が行きましょう」

「うむ、頼んだぞ!!」

 その時だった。由美子とミサトが中央制御室に駆け込んで来たのである。それを見たシンジが眼をむき、

「あっ!! ミサトさんっ!!」

 松下も振り返った。

「おお! 中畑君! よく戻って来たな!!」

 ミサトはシンジ達三人の前に来て、

「みんな! 心配かけたわね! なんとか帰って来たわ!」

 由美子は松下に、

「なんとか戻りました! メモリカードはこれです!」

 松下はそれを受け取ると、

「よくやったな!! エヴァンゲリオンの出撃準備は殆ど整っている。今、岩城君に碇君達を格納庫に案内して貰おうとしていた所だ」

 由美子は頭を下げ、

「ありがとうございます!」

と、言うと、三人の方を向いた。

「シンジ君、アスカちゃん、レイちゃん、大丈夫?」

「はいっ! だいじょうぶですっ!」
「あたしもだいじょうぶですっ!」
「わたしもですっ!」

 由美子は軽く頷き、

「わかったわ。がんばってね! あなた達の指揮はミサトに頼むから安心してちょうだい。……じゃ、岩城先生、お願いします」

 ミサトは再び三人に向かって、

「三人ともがんばるのよ!」

「はいっ!」
「はいっ!」
「はいっ!」

 それを見た岩城も頷き、

「行こうか」

「はいっ!」
「はいっ!」
「はいっ!」

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(よかった。ほんとによかった。……よし、僕もやるぞ! がんばるぞ!)

 中央制御室の様子を通信で聞いていたサトシは安堵の溜め息をついた。そして、「最後の戦い」に闘志を燃やしていた。

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 中之島は叫んだ。

「メモリカードを接続した! データを転送するぞ!」

 メインモニタにウインドウが三つ開き、それぞれにエヴァンゲリオン零号機、初号機、弐号機のシステムモニタが表示された。

 松下は拳を握り締め、

「やったぞ! これで起動出来る!」

 由美子も大声で叫んだ。

「後15分しかないわっ!! 急いで下さいっ!!」

 その時、ミサトが松下に向かって言った。

「どうやって動かすんですか?」

「オクタのカプセルに乗って貰い、エヴァンゲリオンの背中に埋め込む。操縦システムは基本的に元のエヴァンゲリオンと同じだ。但し、操縦捍の形は少々違うがね。……彼等なら大丈夫だよ」

「でも、LCLはどうするんです?」

「必要ない。脳神経スキャンインタフェースが直接思考を読み取る」

「アンビリカルケーブルはいらないんですか?」

「ああ、カプセルの反重力エンジンで充分動くよ」

 その時、スピーカーから、

『こちら機関部山上! カプセルと長剣の準備完了です!』

 松下がインカムを掴み、

「パイロットは搭乗したか?!」

 今度は岩城の声が、

『三人とも搭乗済みです!』

 それを聞いた松下は怒鳴った。

「よし! では、エヴァンゲリオン、全機起動だ!」

「起動します!」

 真由美の声が中央に響き渡ると共に、エヴァンゲリオン専用のウインドウに現れた数値が上昇して行く。それに連れて格納庫のエヴァ3体の背中が徐々に割れ始め、丁度カプセルが入るような楕円形の穴が空いた。

 松下は叫んだ。

「行けるぞ!! パイロット! 自力で飛んでエヴァンゲリオンとドッキングしろ! 飛べ、と考えるだけで飛べる!」

『碇、了解!』
『惣流、了解!』
『綾波、了解!』

 +  +  +  +  +

 シンジは思念を集中した。

「飛べ!」

 そう叫んだ直後、カプセルのスクリーンに映る格納庫内の光景が一斉に下に流れた。

「ああっ! 浮いた!」

 両横を見るとアスカとレイのカプセルも宙に浮いている。

(やったな! 二人とも! よし!)

「ドッキングしろ!」

『ドッキングして!』
『ドッキング!』

 カプセル内にウインドウが開き、アスカとレイが映った。3機のカプセルはそれぞれのエヴァの背中に入り込んだ。

 +  +  +  +  +

『ドッキング完了しました!』

 スピーカーから流れた山上の言葉を受け、松下は、

「よし! 続いて神経接続に移る! 神経接続開始!」

 3つのウインドウにシンクロ率が表示され、どんどん上昇して行く。

「初号機シンクロ率50パーセントを越えました! 更に上昇しています! 続いて零号機と弐号機のシンクロ率も50パーセントを突破して上昇中!」

「パイロット! 各自長剣を持って立ち上がってみろ!」

『了解!』
『了解!』
『了解!』

 すっかり嗄れ切った声で、松下は、

「碇君! 惣流君! 綾波君! このエヴァンゲリオンには人間の魂は宿しておらん! 君達の心だけが全てだ! 君達自身で動かすんだ! 判ったな!!」

『はいっ!』
『はいっ!』
『はいっ!』

 +  +  +  +  +

「ナイフ装備! 立ち上がれっ!!」

 シンジが叫ぶと初号機は長剣を手にしてゆっくりと立ち上った。続いて零号機と弐号機も同じように立ち上がり、3機のエヴァンゲリオンは体長30メートルの勇姿を現した。

 +  +  +  +  +

 ミサトは声を張り上げた。

「やったわ! 全機立ち上がったわ!」

 松下と中之島も、

「やったぞ!」
「おお、素晴らしい姿ぢゃ!」

 由美子は拳を握り締め、インカムに叫んだ。

「よしっ!! みんなお待たせっ!! オクタヘドロン8機、エヴァンゲリオン3機、全機出撃します! 使徒は間もなく千本丸太町に集結するわ! そこを迎撃するのよ! 通信部! ありったけの中継ブースタを全部飛ばしてっ!」

『こちら通信部! 了解! 中継ブースタ全機射出します!』

「了解したわ! まずオクタから出すわよ! もう細かい事は言わないから思う存分戦って! 今のオクタは心を持っています! オクタと一体になって戦って下さい! 但し無理しちゃだめよ! やられそうになったらカプセルを分離して、後はオクタに任せるのよ! じゃ、いいわね! オクタヘドロン全機、発進!」

『アスラ発進! 四条、行きます!』
『ガルーダ発進! 沢田、行きます!』
『ディーヴァ発進! 北原、行きます!』
『キナラ発進! 玉置、行きます!』
『ナーガ発進! 橋渡、行きます!』
『ガンダルヴァ発進! 形代、行きます!』

 6機のオクタヘドロンは次々と発進して行った。続いて無人のヤキシャとマホラーガも自動モードで発進して行った。

「続いてエヴァンゲリオン3機発進します! 各自長剣を格納してから地下倉庫のリフトにそれぞれ乗って!」

『了解!』
『了解!』
『了解!』

 3機のエヴァンゲリオンは肩のケースに長剣を仕舞うとゆっくり歩いてそれぞれリフトに乗った。

「準備いい!? リフトアップするわよ!」

『了解!』
『了解!』
『了解!』

「天井開けて! リフトオン!」

 リフト上部の天井が開き、3機のエヴァンゲリオンは上昇していった。

 +  +  +  +  +

 ゲートの所で監視を続けていた保安員が思わず叫んだ。

「おい。モニタを見ろ!」

「あっ! 山之内さんじゃないか!」

 もう一人の保安員も立ち上がって叫んだ。そこには全身血だらけになった山之内がこれも大怪我をした加持を肩に担いで立っている姿が映っていたのだ。二人とも立っているのがやっとの様子である。幸いにして周囲にマーラはいない。

「シャッターを開けろ!」

 最初の保安員が叫び、もう一人がシャツターを操作すると、加持と山之内の二人は内側に転げ込んだ。

「閉めるぞ!」

 操作ボタンに手をかけながら叫んだ保安員に、最初の保安員がモニタを見ながら怒鳴った。

「早く内側を開けろ! 医療部に連絡する!」

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 地下倉庫の地上隔壁が開き、3機のエヴァンゲリオンは地上に巨大な姿を現した。

 由美子はメインモニタを見ながら、

「よしっ! エヴァンゲリオン全機、カプセル内のモニタの指示に従って各自現場へ移動して! オクタと違って飛べないけど、運動性能はいいはずよ!」

 松下もインカムに怒鳴った。

「全機とも運動性能は抜群の筈だ。ちゃんとATフィールドも張れるぞ! 君達が乗っていたエヴァンゲリオンよりは少し小さいが、性能では勝るとも劣らん! 自信を持て!」

『ありがとうございます! 行きます!』
『がんばります! 行きます!』
『行きます!』

 シンジ、アスカ、レイの元気な声を聞き、ミサトも叫んでいた。

「みんながんばってね!」

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「エヴァ初号機発進! 碇、行きます!」

 +  +  +  +  +

「エヴァ弐号機発進! 惣流、行きます!」

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「エヴァ零号機発進! 綾波、行きます!」

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 3機のエヴァンゲリオンは猛スピードで発進して行った。それを見届けた由美子は、インカムを一つミサトに手渡し、

「ミサト、エヴァンゲリオンの指揮はまかせたわよ!」

「了解よ! 由美子!」

 +  +  +  +  +

 3機のエヴァンゲリオンは京都市内を疾走した。あちこちでマーラと自衛隊の戦闘は続いているが、それを難なく躱して走れるのである。シンジはその凄さに唯々驚くだけだった。

「すごい! これがこっちの世界のエヴァなのか!! おまけに振動も加速も感じないじゃないか!」

 松下の声がカプセルに飛び込む。

『碇君、質量・慣性中和システムのおかげだよ。快適だろう』

「はい! すごいです! 重さを全然感じません!」

 アスカとレイも、

『すごいわシンジ! これ、まえのエヴァとはぜんぜんちがうわ!』

『ほんとにすごい! すごいわ!!』

 +  +  +  +  +

 8機のオクタヘドロンは既に千本丸太町上空に到着し、静止して待機している。サトシはモニタに映る4体の使徒の映像を見ながら思わず武者震いした。

(がんばるんだ! これが最後なんだ!)

 その時、無線にマサキの大声が飛び込んで来た。

『みんな! いよいよ最後の決戦や! がんばろうな!』

 いつもは冷静なリョウコも、大声で、

『そうよ! しっかりやりましょう!』

 アキコも力強く、

『がんばるけんね!』

 サリナはいつも通りの元気さで、

『負けへんで!』

 タカシも強い口調で、

『やったるとよ!』

「うん! 全力で戦おう! エヴァンゲリオンももうすぐ来る!」

『そうや! おかしな縁やけど、あいつらとも力合わすで!』

 マサキの声は力に満ちていた。

 +  +  +  +  +

 その時だった。突然リョウコは妙な感覚に囚われた。

(なにこれ!? 見える! 大きな黒い球!)

「みんな上を見て! 黒い球が見えるわ!」

『なんやて!? なんも見えへんぞ!』

 マサキには見えないようだった。

 +  +  +  +  +

 アキコも同じ感覚に囚われていた。

「わたしにも見えるよ!!!」

『ウチには見えへんで!』
『僕にも見えんとよ!!』

 サリナとタカシにも見えていない。

 +  +  +  +  +

 サトシはその奇妙な感覚に戦慄していた。

「見えるぞ! はっきり見える! バグマーラみたいだ! ……でも……」

(魔界の穴!!!!)

「見えますっ!! 魔界の穴ですっ!!」

 +  +  +  +  +

 流石に岩城はそれを感じ取っていた。

「見える!! 黒い球だ!! あれが魔界の穴か!」

 中之島が怒鳴った。

「岩城! こっちへ来い! お前の脳神経をスキャンしてオモイカネに映すのぢゃ!」

 +  +  +  +  +

 3機のエヴァンゲリオンは千本丸太町に到着した。しかし、通信を聞いていたシンジは不安になっていた。

(魔界の穴!? とうとうでたのか!? 僕にはなにも見えない。だいじょうぶだろうか……)

 その時だった。初号機のスクリーンモニタに開いた2つのウインドウの中に信じ難いものが映ったのである。

「ああっ!! あれはっ!!」

 シンジは戦慄した。それは上空に浮遊するリング状の使徒、アルミサエルと、本来なら宇宙空間にいる筈の使徒、アラエルの姿だった。

 +  +  +  +  +

「また使徒が出現したのっ!!??」

 ミサトの叫びに加藤由美が応える。

「京都上空約4000メートルに2体の浮遊物体が出現しました! これも使徒ですっ!!」

 松下が顔色を変え、

「どうなってるんだっ!! 全部で6つか!!」

 +  +  +  +  +

 千本丸太町付近の各シェルターには非常警報が鳴り響いていた。

『怪物が千本丸太町を目指して進攻しています。付近のシェルターに避難した市民の方々は全員大深度地下通路を使って他のシェルターに避難して下さい。避難先は通路の信号灯に従って下さい。繰り返します。怪物が……』

 +  +  +  +  +

「岩城先生の脳神経スキャンデータ、 モニタに出ます!」

と、真由美が叫んだ直後、モニタにウインドウが開いた。中之島が刮目し、

「おおっ!……」

「あれが、魔界の穴!……」

 由美子も声を上げた。映像では、千本丸太町の上空50メートルに静止するオクタヘドロンの上方約100メートルに「直径約50メートルの黒い球」があるような配置になっている。

 その時、使徒の動きを監視していた由美が、

「使徒が速度を下げましたっ! 極めてゆっくりとした速度で千本丸太町に接近していますっ! ……あっ! 只今政府から連絡が入りましたっ! 千本丸太町付近のシェルターに避難した市民は全て大深度地下通路を使って他のシェルターに避難させたそうです!」

 +  +  +  +  +

「……あの使徒……」

 アスカは、モニタに移った鳥のような使徒、アラエルの映像を見て愕然となった。無理もない。かつて「思い出したくない過去を暴かれる」と言う「精神攻撃」で徹底的に心を弄ばれた相手だったからだ。

 しかし今のアスカはかつてのアスカではなかった。「過去の全てを含めて今の自分が存在しているのだ」と言う事をしっかりと自覚していたのである。確かに精神攻撃は恐いが、今のアスカはそれ以上に「仇討ち」に燃えていた。

「……今度は絶対に負けないわよ!!」

 +  +  +  +  +

「……あの使徒、また来たのね……」

 レイも、リング状の使徒、アルミサエルの姿を見て愕然としていた。しかし、今の彼女もかつてのレイではなかった。「確固たる自己」を確立していたからだ。

「……わたしはわたし……。だれでもないわたしよ……。わたし以外のだれにも絶対に入ってこさせないわ!」

 +  +  +  +  +

 その時、メインモニタに突然開いたウィンドウに、ミサトの全身は凍り付いた。

「!!!!!! ……碇司令!!!」

 ミサトの言葉に、由美子は我が耳を疑い、

「なんですって!!!??」

『葛城三佐。こんなところで何をしている』

 ウインドウに映った人物は、紛れも無い、碇シンジの父、碇ゲンドウだった。

 続く



この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'祈り(Ver.4b) ' composed by VIA MEDIA

原初の光 第三十二話・貫徹
原初の光 第三十四話・復讐
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