第四部・二つの光
待機室。
テーブルの下から這い出しながら、トウジが、
「今の警報はなんや!?」
反対側から出て来たアスカは、顔色を変え、
「また使徒が来たの!?」
レイもやや声を荒げて、
「量産型かもしれないわよ!」
そんな中、全員がテーブルの下から姿を現した。
+ + + + +
第二十五話・変化
+ + + + +
真剣な表情で電話に聞き入っていたミサトは、
「えっ!? 場所が特定できないって!? わかったわ! とにかく中央に戻ります!!」
電話を切り、五大の方に向き直る。
「本部長! お聞きの通りです! パターン青の警報が出たのに、使徒の出現場所が特定できないそうです!! 中央に戻りましょう!!」
すかさず五大は頷いて、
「わかった!! 会議を中断する!! 田沢君は待機室に行ってくれ! パイロット全員の状態を確認した上で出撃の指示を出せ!」
「はいっ!!」
と、レナが真剣な表情で応える。続いて五大は時田と加納に、
「時田さんはベースキャンプに戻って下さい! 加納も行ってくれ!」
「了解しました!!」
「わかった!!」
二人が大急ぎで会議室を飛び出して行く。五大は改めて残った全員を見渡し、
「他の全員は中央に移動だ!!」
+ + + + +
こちらは待機室。
全員の顔に緊張の色が浮かぶ中、ゆかりが口を開き、
「いずれにしても、中央と連絡をとりましょう。どなたか電話をお願い致します」
すかさず、電話のそばにいたアスカが、
「あたし、かけるわ!」
と、受話器を取り上げようとした時だった。
バタッ!!
突然扉が開き、レナが姿を現した。全員がはっとした顔でそちらを向く。レナはすかさず全員の顔をさっと見渡し、
(うん、これなら大丈夫ね!)
と、みんなの顔色がいい事を確認すると、力強く、
「『パターン青』の警報が出たわ!! 全員出撃よ!!」
「は、はいっ!!」
一番にアスカが声を上げ、外に飛び出して行った。
「みんな、行きましょう!!」
ゆかりの言葉に呼応して全員が駆け足でドアに向かう。それを見届けたレナは電話の所へ行き、受話器を手にした。
『中央制御室日向です!』
「田沢です! パイロットは全員出撃させました!」
+ + + + +
日向は受話器を置くと五大の方に振り返り、
「本部長! パイロットは全員出撃しました!」
「うむ、わかった! …日向君、『パターン青』の警報の方はどうなってる!?」
「それが、さっきの警報に関しての分析を引き継いでもう一度やってみたんですが、確かに何故か場所の特定が出来ません! その上、現在は警報そのものが消えてしまっています!」
「どう言う事だ。警報は一瞬出て消えたと言うのか」
「現在の所、そうとしか言いようがありません」
「うーむ……、止むを得ん。とにかく分析と警戒を続けてくれ」
「了解!」
その時だった。メインモニタにウィンドウが一つ開き、
『零号機起動完了しました!! 射出します!!』
館内放送がこだまする。マヤが顔色を変え、
「ええっ!? こっちでは起動していないのに!?」
五大が手元のインカムを掴み、怒鳴る。
「どう言う事だ!? 零号機ドック! 説明しろ!」
『どうもこうもありません! パイロット2名が搭乗した後、起動指令を受けて零号機は起動しました! 今、射出態勢に入っています!』
「なんだと!? とにかく射出を中止しろっ!!」
+ + + + +
「えっ!? 中止!?」
零号機ドックの係員はマイクを持ったままドックの方を振り向いたが、時、既に遅かった。
バシュウウウッ!!
+ + + + +
「伊吹君!! 射出を中断しろっ!! 止めるんだ!!」
五大の怒声に、マヤが慌ててコンソールを操作したが、
「だめです!! 操作不能ですっ!!」
「本部長!!」
ミサトが電話を切りながら叫んだ。全員の視線が集中する。
「どうした!?」
「今、田沢に確認しました! 綾波、渚の両パイロットが待機室を出た時刻から考えますと、今射出された零号機にこの2名が乗る事は、時間的に見て不可能です!!」
「なんだと!? じゃ、誰が乗ってるんだ!? …零号機ドック! 零号機には誰が乗った!?」
『えっ!? もちろん、綾波、渚の両パイロットですが、それが何か?』
「なにっ!?」
と、五大が応えた時、
『ええっ!? そんな!!』
「どうした!?」
+ + + + +
「信じられませんっ!! 今、綾波、渚の両名がここに来ました!!」
「………?」
「………?」
慌てふためく係員の様子を、レイとカヲルは狐につままれたような表情で見るだけだった。
+ + + + +
それを聞いた五大は、
「まさか!! 伊吹君! 零号機は今どこだ!?」
「ちょうど地上に出たところですっ!!」
「零号機のプラグの中の映像を出せ!!」
「了解! …………だめです!! 指令を受け付けませんっ!!」
「地上のカメラで零号機を写せ!!」
「はいっ!! ……映像出ますっ!!」
メインモニタにウィンドウが開き、零号機が映し出された。意外な事に、リフトから一歩踏み出した所で止まっている。
「零号機!! 応答しろ!!」
『なんだい? 五大さん』
『…………………………』
聞きなれた声と共に画面にウィンドウが一つ開く。それを見たミサトは血相を変え、叫んだ。
「アダム!! リリス!!」
ウィンドウの中に映っているのは、紛れもない、プラグスーツ姿で不敵な笑みを浮かべたアダムと無表情なリリスであった。一瞬のどよめきの後、スタッフ全員が呆気に取られて画面を見詰める中、五大が、大声で、
「伊吹君! プラグ非常射出装置を動作させろ!!」
「了解!! ……これもだめです! プラグ内部で回路が切られています!!」
『やれやれ、五大さんもまだまだ青いねえ。そんな回路、乗ったらすぐに切るに決まってるじゃないか。ふふふ』
不敵なアダムの嘲笑に、五大は歯噛みしながら、
「くっ!……。貴様ら、どう言うつもりだっ!!」
『どう言うつもり、だって? ふふふふふっ』
その時、
トゥル トゥル トゥル
突然電子音が鳴り響いた。ミサトのスマートフォンだ。
「葛城です!」
『警備班です! アダムとリリスがドアを破って逃げました!! 現在警備班が全館を捜索中です!!』
ミサトは一瞬顔をしかめたが、一呼吸置いて、
「捜索はもう必要ないわ」
『えっ!? どう言う事です!?』
「その件に関してはこちらで処理します。アダムとリリスの居所は、たった今判明しました」
『ええっ!? …は、はい……。あっ、それともう一つ、さっきの地震で祇園寺の部屋の照明器具が落下して、祇園寺の頭を直撃していました!! 祇園寺は即死のようです!!』
「ええっ!?」
流石にこれにはミサトも驚く。警備員は続けて、
『碇ゲンドウと赤木リツコについては異状ありません!!』
「わかったわ!! とにかく祇園寺についてはやむをえないでしょう! 碇ゲンドウと赤木リツコに関しては監視を強化しなさい!!」
『了解しました!!』
ミサトは手早く電話をしまうと五大の方を向き、
「本部長、祇園寺が死にました」
「なんだと!!!??」
五大が顔色を変えた。ミサトは続けて、
「さっきの地震で天井の照明器具が落下して頭を直撃したそうです。それからアダムとリリスの逃亡と零号機の略奪。これらの情報から推定される結論は一つしかありません」
と、言った後、持明院の方を向き、
「持明院さん、そうですよね?」
全員の視線が集中する中、持明院は軽く頷き、
「ああ、多分間違いないだろう。祇園寺は死んだ事で逆に霊的に自由を取り戻した。そしてアダムとリリスを覚醒させたんだ。つまり、今のアダムとリリスは、祇園寺と一体化していると言う事だ。ドアの鍵を破って零号機を奪う事ぐらいは児戯に等しかろう」
『さすがは伊集院さん、おっと、今は持明院さんだったね。よくわかってるじゃないの。ふふふふ』
割り込んで来たアダムの声に、またもや全員の視線がメインモニタに向く。持明院はゆっくり前に進むと、メインモニタに向かって、
「アダム、『向こうの世界での渚カヲル』と言い、今回と言い、お前とも相当な腐れ縁のようだな。…で、何が目的だ?」
『何が目的、だって? そっちこそ今頃何を言ってるんだい。二つの宇宙の光を消し去り、原初の暗黒に戻す事が目的に決まってるじゃないか。その後で二つの宇宙がどうなろうと、それは僕の知った事じゃない。ここにいる祇園寺さんに任せるさ』
「そのために零号機を奪ったと言う訳か。しかし、零号機1機ぐらいでは何も出来んぞ。こっちにはオクタヘドロン5機とJAがあるし、エヴァもまだ3機ある。戦力差は明白だ。それぐらいの事が判らんお前ではあるまい」
『確かにそうだね。でも、そっちも何か忘れてるんじゃないの? こっちにはまだ量産型が9機もあるんだよ』
「その肝心要の量産型だが、私が見る限りでは余り機嫌がお宜しくなさそうだな。お前もわかっていると思うが、私にはハッタリは通用せん」
『ふふ、流石は透視能力の大家だね。量産型の不機嫌ぶりはとっくにお見通し、ってかい』
「いや、今のお前の表情でわかったんだ。お前も中々顔に出る性質らしいな」
『おやおや、そりゃ参ったな。でも、それだったらもう一つわかるはずだよ。不機嫌ではあっても、そっちに味方する訳じゃない、って事もね』
「そりゃそうだ。しかしオクタヘドロンは極めて強力だし、今の参号機はまさに阿修羅だ。仮に量産型がそっちに回った所で、そちらに有利だとは到底言えまい。零号機を奪い取ったぐらいで二つの宇宙の光を奪い去れると思うのは少々甘いと思うがな」
『そうかも知れないね。でも、勝負は下駄を履くまではわからないよ。ふふふ』
「それは『希望的観測』と言う奴だ。現実を冷徹に見詰めねばならん。まず、オクタヘドロンの戦力だが……………」
持明院とアダムが問答を繰り返す中、マヤがそっと立ち上がって五大の所へ行き小声で、
「本部長、カメラに映らない場所にゆっくりと移動して下さい」
「わかった」
五大が素知らぬ顔で静かに移動する。続いてマヤはそのままミサトの所へ行くと、
「葛城部長、本部長の所へそっと移動して下さい」
「わかったわ」
ミサトは努めて平静を装いながら五大の所に移動し、
「本部長、どうなさったんです?」
と、呟くような小声で言った。五大も低い声で、
「いや、私も伊吹君から言われたんだ。彼女が来るのを待とう」
「お待たせしました」
マヤが中之島と共にやって来た。五大は、小声で、
「伊吹君、どうしたんだね?」
「はい、持明院さんとアダムが問答を始めた時、零号機のシンクロ率におかしな変動が現れました。サイコバリヤーの波動と同じ波形です」
「何ぢゃと!?」
中之島も少々驚いたようだ。マヤは続けて、
「それで、その波動のままでもし零号機を操縦したらどうなるかをマギとオモイカネⅡを使ってシミュレーションしてみましたら、恐らく最初の数十秒の間、零号機は暴走するだろうと言う結論がでました」
五大は思わず刮目し、
「なに、暴走だと?」
マヤは軽く頷くと、
「はい。恐らくは、持明院さんがアダムとの会話を装いながら、相手の潜在意識になにか働きかけておられるのだろうと思います。
それと、つい先程、私が本部長の所に行く直前ですが、エヴァ3機とオクタヘドロン5機の出撃準備が全て整った事を確認しました。JAはいつでも動かせる状態です。
それで、一つ提案があるのですが、このままエヴァとオクタヘドロンを静かに発進させます。エヴァはリフトをゆっくり上げて地上の直前で止めておき、オクタヘドロンは天井の開口部のすぐ下に待機させます。そして零号機の隙を見て一斉に飛びかからせれば、相手は動かしてから数十秒は暴走して操縦がきかないわけですから、その間に取り押さえてエントリープラグを抜き取ることができるんじゃないでしょうか?」
それを聞いた中之島は思わず唸り、
「うむ、いいアイデアぢゃ。本部長、どう思う?」
五大も頷くと、
「確かに、プラグの強制射出が使えない現在においては、それが最善の策だろうな。…伊吹君、エヴァとオクタヘドロンのパイロットも、時田さんも、零号機が奪われた事はまだ知らないな」
「はい。まだ連絡していませんし、零号機からの信号も接続されていません」
「よし、では状況を手早く説明した上で極秘に発進指示を出そう」
と、言った後、五大はミサトに、
「葛城君」
「はい」
「渚、綾波の両名は中央制御室に来るように指示しておいてくれ」
「了解しました」
五大はもう一度軽く頷き、
「よし、それでは各自持ち場に戻って作戦を実行する事にする」
と、言った後、今度はマヤに、
「しかし、伊吹君、サイコバリヤーの波形の件と言い、元締の霊的心理誘導の件と言い、いつの間にそんな知識を身に付けたんだね?」
意外そうに訊く五大に、マヤは、にっこり笑って、
「いえ、私にその知識がある訳ではありません。申し訳ありませんでしたが、オモイカネⅡのデータと検索システムを少々借用させて戴きました」
「えっ!?」
「なに!?」
「何ぢゃと!?」
ミサト、五大、中之島の三人は一瞬呆気に取られたが、すぐに中之島が苦笑しながら、
「そうぢゃったのか。やれやれ、今度はこちらが一本取られたわい。本部長、この作戦はまず大丈夫ぢゃよ。この儂が保証する」
「そのようですな」
「マヤちゃん、たら……」
五大もミサトも苦笑するしかなかった。
+ + + + +
マヤ、五大、中之島が持ち場に戻った後、ミサトはその場に残ってスマートフォンを取り出した。
『はい、零号機ケージです』
そして、低い声で、
「葛城です。そこに綾波がいるでしょ。代わってちょうだい」
『はい、少々お待ち下さい。……………………はい、綾波です』
「葛城です。渚君と一緒にすぐ中央に来てちょうだい」
『はい、了解しました。…あの、いったい、どうなってるんですか?』
「零号機がアダムとリリスに奪われたのよ」
『えっ!?』
「詳しくはあんた達がこっちに来てから言うわ」
『了解しました!』
+ + + + +
参号機に乗り込んだシンジとアスカは出撃指示を待っていた。しかし、普通ならすぐに来る筈の命令も連絡もない。二人は軽い不安を感じながら待つしかなかった。
思わずアスカが、
「ねえシンジ、どうなってんのかなあ……」
「うん、乗ってから、命令こないね……」
その時、
『こちら五大だ。エヴァンゲリオン全機、オクタヘドロン全機、及びJAに連絡する。全機応答してくれ』
「は、はい。こちら参号機惣流です」
『……全機からの応答を確認した。そのまま聞いてくれ。…アダムとリリスが逃亡し、零号機を奪い取った』
「えっ!?」
「えっ!?」
+ + + + +
アカシャの中で待機していたサトシも驚き、
「ええっ!? 零号機が!?」
+ + + + +
中央制御室の片隅で、インカムを着けた五大が、声を殺し、
「これから、零号機の奪還作戦を開始する。
エヴァンゲリオン3機はリフトに乗ったまま、地上寸前で待機、オクタヘドロンはジオフロント開口部の直下の空中に停止して待機だ。
JAは地上にある上、幸いにしてエンジンは待機モードに入っているので、いつでも起動できる状態を維持する事。
現在、零号機に対しては、それとわからないようにしながら持明院が霊的心理誘導を行っている。
それで、零号機の隙を見て、複数機で一斉に襲いかかる戦術で行く。具体的には、私の合図で、参号機とアカシャ、ヴァーユの3機が同時に零号機に飛びかかってくれ。
参号機が零号機を捕まえている間に、アカシャとヴァーユでエントリープラグを抜き取るんだ。いいな」
+ + + + +
「は、はいっ、参号機惣流、了解しました!」
+ + + + +
「アカシャの沢田です。了解しました!」
+ + + + +
「ヴァーユの草野、了解です!」
+ + + + +
「他の全機はバックアップに回ってくれ。地上に出た後、私が指示したらすぐに動ける態勢で待機しておいてくれ」
『弐号機鈴原です。了解しました!』
『JA担当の時田です。了解しました!』
『こちらプリティヴィの綾小路です』
五大のインカムに次々と連絡が飛び込んで来る。横目でチラリと持明院の方を窺うと、大した物で、まだアダムと時間稼ぎの問答を続けてくれているではないか。
(流石は元締だ………)
『アグニの形代です。了解しました!』
「よし、全機からの返答を確認した。オクタヘドロンは全機浮上せよ。エヴァンゲリオン3機は低速で射出する。定位置に到着したら待機していてくれ。以上だ」
五大は顔を上げ、コンソールの所に戻っているマヤに頷いた。それを見たマヤも軽く頷き返した。
+ + + + +
ガコンッ!!
「あ、動いた!」
シンジは思わず呟いた。参号機がゆっくりと上昇して行く。
+ + + + +
「みんな、行きましょう! プリティヴィ、発進!」
ゆかりの言葉に呼応し、プリティヴィは上昇を始める。そして他の4機も次々と離陸して行った。
+ + + + +
一方、問答の続く中央では、持明院が苦笑しながら、
「所でアダム、全く大した余裕だな。まさか私とこれだけ話をしてくれるとは思わなかったよ」
『ふふふ、どうせ二つの宇宙はもうすぐ原初の暗黒に戻るんだ。だったら、最後に色々と話すのもちょっと乙な物だろ。僕にもそれぐらいの余裕はあるさ。残念なのは、シンジ君やサトシ君と話が出来なかった事ぐらいだね』
「これだけ話をしてもまだわからんのか? お前達には勝ち目はない。いい加減諦めたらどうだ?」
『ふーん、勝ち目がない、ねえ。……じゃ、今ここで、僕とリリスのS2機関を暴走させてみようか? どんな事が起こるか、ちょっとわくわくするだろ。ふふふふ』
「それは面白い。是非やってみてくれ。どんな事が起こるか私も楽しみだ」
『それはそれは。持明院さんのお墨付きをいただいたとなれば、安心して暴走させられるってもんだ。ふふふ。じゃ、そろそろ失礼させてもらうよ。あまり好きになれそうもないお客さんが何人かいらっしゃったようだしね。ふふふ』
アダムはそう言うとウィンドウを閉じてしまった。五大が大声で、
「ウィンドウを戻せ!!」
すかさず青葉が、
「今操作中です!! ………ウィンドウ出ます!!」
メインモニタにウィンドウが開いたが、そこに映っているのは砂嵐のようなノイズだけである。五大が悔しげに拳を振り、
「クソっ!! カメラを壊しやがったな!!」
青葉も、
「マイクも壊されています! 音が出ません!!」
と、吐き捨てた、その時、
「五大」
持明院の声にスタッフの視線が集中する。
「わからなかったか」
「面目ありません。気付いたのは伊吹です」
と、バツが悪そうに言う五大に、持明院は苦笑して、
「少し肩の力を抜け。力み過ぎじゃないのか」
「仰る通りです。気を付けます」
と、五大も苦笑した時、レイとカヲルが中央制御室に姿を現した。
「綾波、渚の両名、出頭いたしました」
凛としたレイの声が緊張した空気を少し和らげる。五大は思わず微笑んで、
「お、戻って来たか。葛城君、状況を説明してやってくれ」
「はい」
+ + + + +
「ふふふ、さあ、そろそろ行こうか。……原初のヒトたるアダムの分身にして僕の兄弟……。リリスもここにいるよ。三つの心と三つの体を一つに、全ては原初の暗黒の神の意のままに………」
「……………………………」
アダムは北叟笑みながら零号機に語りかけた。リリスは相変わらず無表情のままである。
「……さあ、行こう。みんなで一つになろう……」
+ + + + +
「こうなったら伊吹君の理論を信じて待つだけだな」
五大がマヤの方を振り向いた次の瞬間、マヤが大声で、
「あっ! 零号機の出力が増加しはじめました! 地上カメラの映像をモニタに出します!」
メインモニタの映像が切り替り、零号機が大写しになる。その時、
「グワアアアアアアアアッ!!!」
突如零号機は咆哮を上げ、そばの兵装ビルを両手で掴むと、全力で頭を打ち付け出した。
ガツンッ!! ガツンッ!! ガツンッ!!
+ + + + +
「わああっ!! なんだっ!!?」
激しい振動と衝撃にアダムは思わず叫んだ。
+ + + + +
マヤは振り返りながら、
「零号機! 暴走しています!!」
と、歓声とも悲鳴とも判らない声を上げた。すかさず五大がインカムに、
「攻撃開始!!」
すぐさま日向が、コンソールを操作しつつ、
「エヴァ全機地上へ射出!! ジオフロント天井ゲート開放!!」
+ + + + +
ゴオンンッ!!
リフトが急上昇し、参号機は地上に射出された。シンジが大声で叫ぶ。
「行けええっ!!!」
+ + + + +
「クソっ! どうなってんだっ!! 落ち着けっ! おとなしくしろっ!!」
零号機の思わぬ暴走に、アダムは慌てふためいていた。しかし横のリリスは相変わらず無表情のままである。
「……………………………………」
+ + + + +
ブオオッ!!
ブオオッ!!
ジオフロント天井の開口部からアカシャとヴァーユが飛び出した。零号機めがけ、鋭い角度で急旋回する。
+ + + + +
サトシも大声で、
「行けええっ!!」
+ + + + +
時田も怒鳴り声を上げ、
「エンジン始動!! 出力最高に上げろっ!!」
+ + + + +
ダアアアアアアッ!!!
参号機が零号機の横から飛びかかる。
ガシイィィィィッ!!!
装甲板がぶつかり合い、激しく音を立てた。参号機は零号機の腰に両手を回し、ガッチリと組み付く。
+ + + + +
会心の笑みを浮かべたアスカが、
「つかまえたっ!!!」
声がプラグ内に響き渡る。
+ + + + +
「グワアアアアッ!! グワアアアアッ!!」
零号機は相変わらず咆哮を上げながら頭を両手で抱え、悶え苦しむ。参号機は振り解かれまいと全力でしがみ付く。
+ + + + +
目前に迫り来る零号機の映像を睨みながら、サトシは、
「草野!! 頭を押さえてくれ!! 僕は後に回ってプラグを抜き取る!!」
『わかった!!!』
+ + + + +
ガシイィィィィッ!!!
上空に浮かんだまま、ヴァーユが両手で零号機の頭をしっかりと押さえ付ける。少し遅れてアカシャが零号機の背後に回りこみ、エントリープラグの蓋に手をかけて毟り取った。
バキイィィッ!!
+ + + + +
「よしっ!! プラグを抜くぞ!!」
と、サトシが叫んだ次の瞬間、
「えええっ!!??」
突如、すぐ横の地面から空中に向かって巨大な物が聳え立って行く。
「これはっ!!??」
サトシは我が眼を疑った。
「これはっ!! 量産型っ!!??」
その巨大な物体は、驚くべき事にエヴァンゲリオン量産型だったのだ。
+ + + + +
マヤが叫び声を上げ、中央制御室の空気を切り裂く。
「量産型ですっ!!! ああっ!! 連続して出現していますっ!!」
メインモニタには地面から次々と空に向かって聳え立っていくエヴァンゲリオン量産型の姿が映っていた。
続く
この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。
BGM:'祈り(Ver.4b) ' composed by VIA MEDIA
二つの光 第二十四話・光明
二つの光 第二十六話・接点
目次
メインページへ戻る