第四部・二つの光




 青葉が叫ぶ。

「ジオフロントゲートオープン!!」

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「こちらプリティヴィ!! 発進します!!」

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「アグニ発進します!!!」

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「ヴァルナの北原です!! 発進します!!」

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第十七話・旋転

 +  +  +  +  +

『弐号機搭乗完了しましたっ!!』

 トウジの叫びにミサトが、

「弐号機射出!!」

 マヤが頷き、

「了解!!」

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「委員長! 行くでええっ!!」

「うんっ!!」

バシュウウウッ!!

 +  +  +  +  +

 そして、レイの声が、

『零号機搭乗完了!!』

 ケンスケの声も、

『初号機搭乗完了です!!』

 ミサトが怒鳴る。

「続いて射出してっ!!」

 マヤが叫ぶ。

「了解!! 零号機、初号機、射出!」

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 カヲルが、今までにない真剣な顔で、

「綾波さん! 行くよ!」

 レイも頷き、

「うんっ!!」

バシュウウウッ!!

 +  +  +  +  +

 ケンスケとナツミが、

「行けえっ!!」

「行けっ!!」

バシュウウウッ!!

 +  +  +  +  +

 続いてミサトは、

「日向君! レーザーライフルを2丁射出!!」

「了解!! 射出しますっ!!」

「ライフルは初号機と弐号機が担当!!」

 トウジとケンスケが、

『了解!』
『了解しましたっ!』

「零号機はATバルカンで攻撃!!」

 レイが、

『了解!』

 更にミサトは、

「時田さん! 応答願います!!」

『こちら時田です! 現在臨時駐機場のベースキャンプで待機中!』

「JAを出撃させて下さい!」

『了解! 武器は!?』

「サイコバルカンの調整は完了していますね!?」

『無論です! サイコバリヤーと同じく、中之島博士の指示通りにしてあります!』

「ではそれでおねがいします!」

『了解!!』

 +  +  +  +  +

 時田が叫ぶ。

「JA出撃! 中央制御室! ジオフロントゲートオープン願います!」

『了解!!』

 青葉の声に呼応し、時田は、

「発進!」

 操作員甲が、

「了解! 浮上!!」

ブウゥゥゥンンッ!!

 微かな唸りを上げ、JAは天井の開口部目指して浮上して行く。

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 五大が、ミサトに向かって、

「葛城君、槍は使わんのか?」

「槍では、使徒の部分は破壊出来てもマーラの部分は破壊出来ない事が判明しましたから、今回は使用を控えます」

「わかった」

 続いてミサトは、

「全機に連絡します! 今後通信は全てスピン波を使用!!」

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 JRL本部。

 松下が叫ぶ。

「末川君!! 使徒の進路予想はっ!!?」

「計算完了! メインモニタに出しますっ!!」

 真由美の叫びが終わると同時に、メインモニタに映像が現れる。

「これは!? 芦ノ湖だと!? ……!!! まさかっ!『第3新東京』の場所かっ!!??」

 オモイカネが表示した映像には「芦ノ湖に集中する数十本の矢印」が描かれていた。

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 エンタープライズメインブリッジ。

 ライカーが怒鳴る。

「全速デ地球ニ戻レ!! 目標ハ日本! 芦ノ湖ダ!!」

「了解!!」

 操縦士は操縦桿を握り直す。

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 遠征隊はアメリカ西海岸を飛び立ち、太平洋上空を飛行していた。

「全機ニ告グ! 全速デ日本ノ芦ノ湖ヲ目指セ! 編隊ヲ崩シテモ構ワン! 各機ノ最高速度デ飛ベ! 但シ、無線ダケハ絶対ニ切ルナ!!」

 ジョンの怒鳴り声に呼応し、次々と応答が入って来る。

『了解!!』
『了解!!』
『了解!!』

「ヨシッ!! 俺モ行クゾッ!! スロットル全開ダ!!」

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 メアリーがコックピットで叫ぶ。

「オクタヘドロン6機! 異状はない!?」

『カーラ、ヤキシャ共に正常です!!』

『ヴァジュラ、ナーガも正常です!!』

『ガルバ、キナラも異状ありません!!』

「了解!! スピードを最高まで上げてちょうだい!」

 すかさずマサキが、

『最高速まで上げてよろしいんでっか!? こっちの方が速いでっさかい、到着時刻がずれまっせ!』

「構わないわ! 無線さえちゃんとつながってたら、到着が別々になってもいいから、全速で日本に向かってちょうだい!! 私たちも全速で飛ぶから!!」

『了解しました!!』
『了解!!』
『了解!!』

ブォォォォォォッ!! ……キィィィーーンンッ!!!

 6機のオクタヘドロンとメアリーの戦闘機はそれぞれ急加速し、超高速で飛び去って行った。

 +  +  +  +  +

 嘉手納基地司令部。

 カジマの怒鳴り声がこだまする。

「使徒ノ目標ハ神奈川県ノ芦ノ湖ダ!! 在日米軍ノ70%ノ戦力ヲ芦ノ湖ニ結集サセロ!!! 30%ハバックアップニ残セ!!」

 通信員Aが、

「横田基地ト厚木基地カラ迎撃機ガ出撃シマシタ!!」

 通信員Bが、

「岩国基地カラモ出撃ノ連絡デス!!」

 カジマは更に声を張り上げ、

「急ゲ!! 嘉手納ノ戦力ハ全テ出撃ダ!!」

 +  +  +  +  +

 総務省。

 高沢が、職員に向かって、

「自衛隊は3割の戦力を残して後は全部芦ノ湖に集めるんだ!! 防衛省の方の動きはどうなってる!?」

「ついさっき防衛大臣が統幕本部司令室に入りました!! 総理も間もなく入る予定です!!」

「わかった!!」

 +  +  +  +  +
 +  +  +  +  +

 第3新東京市上空では5機のオクタヘドロンⅡが、地上では3機のエヴァンゲリオンとJAが、使徒サキエルの襲来を今や遅しと待ち構えている。

 時刻は7:00を過ぎ、「太陽」もすっかり昇っていた。しかし、不気味な黒い球体に遮られ、まるで皆既日蝕の時のように薄暗い。サトシはアカシャのコックピットから東の方角をチラリと見て、

(…あれは一体何だ……。レリエルなのか、そうではないのか……)

 その時、

ビィィィーーーッ!!

 警報にはっとしてスクリーンを見ると、サキエルが映るウィンドウに「使徒接近」の文字が出ている。

「来たか!!」

 サトシは正面を見据えて操縦桿を握り直した。

 +  +  +  +  +

「……………………………」

 アスカの病室では加持がずっとイメージを追い続けていた。

「……………………………」

 加持は大きな溜息をつくと肩を回しながら背筋を伸ばした。流石に一晩中半跏座を組んでマントラを唱え続けていると肩も凝るし猫背にもなる。

(…アスカは、と……、変わりなし、か……)

 ベッドの上のアスカは相変わらず軽い寝息を立てているだけだ。加持が再びマントラを唱えるべく、改めて姿勢を正した時、

ギイッ……

「ん?」

 ドアの音に加持が顔を上げると、丁度シンジが入って来る所だった。

「すみませんでした。ずっとねこんでしまいまして……」

「いや、いいさ。俺が、寝ておけ、って言ったんだからな。……もう大丈夫か?」

「はい。大丈夫です」

「じゃ、続けようか」

「はい」

 シンジは加持の横に座り、インタフェースをセットする。

「準備はいいか?」

「はい」

「では始めるぞ」

 加持が姿勢を正してイメージを追い始めた。シンジも深く息を吸い込むと、加持に続く。

「……………………………」
「……………………………」

 +  +  +  +  +

 ミサトが、インカムに怒鳴る。

「アカシャとヴァーユで迎撃を開始します! 攻撃の担当と要領はゼルエルを倒した時と同じ! わかった?!」

 +  +  +  +  +

「沢田了解!! マントラレーザー発射準備!!」

 +  +  +  +  +

「草野了解! サイコバルカン発射準備!!」

 +  +  +  +  +

 ミサトは続けて、

「他機は全てバックアップ態勢!! オクタ3機は、どちらの武器もすぐに使える状態で待機!!」

『了解致しました!!』
『了解!!』
『了解です!!』

 その時、青葉が叫んだ。

「使徒接近!! 間もなく市街地に入ります!!」

 +  +  +  +  +

「来た!!」

 大作は思わず武者震いした。

 +  +  +  +  +

 青葉が、コンソールを操作しながら、

「使徒が目視圏内に入りました!!」

 ミサトは、ぐっとモニタを睨むと、

「攻撃!!!!」

 +  +  +  +  +

 大作が叫んだ。

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

 サトシも叫んだ。

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!
ブシュウウウウウウウウウウウッ!!!

「グエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」

 サイコバルカンの光はコアを貫き、マントラレーザーの炎は肉を激しく焼いた。

 +  +  +  +  +

「よっしゃあっ! 一丁上がりだあっ!!」

 サトシが拳を振り上げる。

 +  +  +  +  +

「すごい!!!」

「なんと! 一撃でか!!」

 ミサトと五大は刮目した。

 +  +  +  +  +

「グワアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 サキエルは断末魔の絶叫と共にゆっくり地上に崩れ落ちて行く。

ヒュウーーーッ…………………、ドオオオオオオオオオンンッ!!

 激しい爆発音と共に火柱が立つ。

 +  +  +  +  +

 地下に向かうエレベータの中。

「サキエル!!!」

 アダムが思わず叫んだ。ゲンドウは、

「どうした!?」

 +  +  +  +  +

 コンソールを操作しながらマヤが叫ぶ。

「サキエルが爆発!! 活動は完全に停止!!」

 しかし、中之島は、

「何っ!? 何で爆発を……」

 ミサトが、訝し気に、

「博士、どうしたんですか?」

「いやそのな、ゼルエルの時は消えよったのぢゃが、こいつは爆発したのがのう……」

「使徒はS2機関を持っていますから、爆発しても不思議じゃないと思いますが……」

「そうか……、まあ、そうぢゃの……」

 その時、

ビィィィーーーッ!!

「パターン青!! 2体目の使徒です!!」

 マヤの叫びに五大は、

「今度は何が来た!? ……シャムシェルか!!」

 ミサトはインカムを握り直し、

「沢田君! 草野君! 続いて迎撃よ!!」

 +  +  +  +  +

 サトシは、やる気満々に、

「了解!! 任せといて下さい!!」

 +  +  +  +  +

 大作も、

「了解です!!」

 +  +  +  +  +

 エレベータの中では、悲痛な顔のアダムが、

「サキエルもやられたよ。このままじゃみんな殺されてしまう……」

 ゲンドウが歯噛みし、

「クソッ……。連中の力をなめ過ぎていたか……」

 祇園寺も暗い顔で、

「ターミナルドグマまではまだかかるのか?」

 リツコは、努めて冷静に、

「ジオフロントの底から更に6000メートルの地下ですからね……」

 しかし、その時リリスが、

「…だいじょうぶよ。サキエルは死んでないわ……」

「えっ!?」
「なにっ!?」
「なにっ!?」
「えっ!?」

 ゲンドウが勢い込み、

「リリス、どう言う事だ?」

「向こうの世界のサキエルの声が何も聞こえませんでした。ですから、こちらの世界のサキエルも死んではいません。死んだふりをしているだけです……」

 しかし、ゲンドウは訝し気に、

「死んだ振り、だと? どう言う事だ?」

 だが、リリスは相変わらず無表情のまま、

「…だいじょうぶです。わたしを信じて下さい……」

「しかし……」

と、納得が行かない様子のゲンドウに、リツコは、

「碇司令、リリスが大丈夫だと言っているのですから信じましょう。それよりも、一刻も早くターミナルドグマに行って儀式を始めるべきです」

 その意見には祇園寺も、

「うむ、その通りだな。そうすべきだ」

 ここに至り、ゲンドウもやむなく、

「む…、それもそうだな……」

と、納得する。しかし、心配顔のアダムは、

「…………」

と、無言のままリリスを見る。

「…………」

 しかし、当然の事ながら、リリスは無表情のままだった。

 +  +  +  +  +

 サキエルに続くシャムシエルの襲来に緊張の走る中央制御室で、中之島はどうにも払拭出来ない疑念に囚われていた。

(おかしい……。こんな筈はない……。何故サキエルは爆発したのぢゃ……)

カタカタカタ

 スタッフ全員がメインモニタに注目する中、中之島はオモイカネⅡに向かってキーボードを叩き始めた。

 +  +  +  +  +

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!
ブシュウウウウウウウウウウウッ!!!

「グエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」

ドオオオオオオオオオオオオオオオンンンッ!!!

 シャムシェルは落下し、激しく爆発した。

 +  +  +  +  +

 サトシは興奮し、

「これで二つだっ!!」

『沢田、この調子でサクサク行こうぜ!!』

「おう! もちろんだ!!」

 +  +  +  +  +

 初めて見るオクタへドロンの威力に圧倒された五大は、

「ううむ、凄いぞ。この調子なら、2機だけでも充分だな」

 ミサトも頷き、

「そうですね。今のところは極めて順調ですね」

 その時、

ビィィィーーーッ!!

「パターン青!! ラミエルです!!」

「沢田君! 草野君! ラミエルのビームは凄く強力よ! 早めに撃退して!!」

『了解!!』
『了解!!』

 +  +  +  +  +

カタカタカタ……

 中之島は一心に計算を続けている。

 +  +  +  +  +

 初号機の中で、呆気に取られた様子のケンスケが、

「しかし、オクタヘドロンって、すごいよなあ……。これじゃ俺たちの出番はないかもしれないな……」

 だが、ナツミは真剣な顔で、

「わたしたちはバックアップでしょ。オクタヘドロン2機だけで勝てるなら、それにこしたことはないですよ」

「うん、そりゃ確かにそうだ。大体、こっちは飛べないんだしね……」

「そうですよ。だから、沢田さんや草野さんが安心して戦えるよう、わたしたちはしっかり後をかためておきましょうよ」

「うん、そのとおりだな」

 +  +  +  +  +

 弐号機の中では、トウジが、

「委員長、この調子やったら、ワシらはなんもすることないかもしれんけど、いざ、言う時のために、しっかり気持を集中しとくんやで」

 ヒカリはしっかり頷くと、

「うん、わかった」

「心配すんな。……お前のことは、……ワシが絶対に守ったるさかい」

「!! ……ありがと、鈴原……」

 +  +  +  +  +

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!
ブシュウウウウウウウウウウウッ!!!

ドオオオオオオオオオオオオオオオンンンッ!!!

 ラミエルも激しく爆発しながら落下して行く。

 +  +  +  +  +

「三つ!!」

 サトシが声を張り上げる。

 +  +  +  +  +

 一方、零号機の中では、カヲルが、

「しかし、凄いなあ。オクタへドロンの実戦を見たのはもちろん初めてだけど、こんなに強力だとは思わなかったよ」

 レイも頷き、

「そうね。……でも、まだ何が起こるかわからないわ。わたしたちもしっかり戦闘態勢をとっておきましょ……」

「そうだね。がんばろうね」

「うん」
(…サトシくん、気をつけてね……)

 +  +  +  +  +

「……………………………」
「……………………………」

 朝一番から作戦が始まっている事はシンジも加持も知っている。地上ではさぞかし激しい戦闘が行われているだろうとは思うのだが、ジオフロント内の病院の中ではその音も聞こえない。二人は、多少の不安と苛立ちを感じながらも、一心にイメージを追い続けていた。

 +  +  +  +  +

ビィィィーーーッ!!

「パターン青!! イスラフェルです!! 最初から2体に分裂しています!!」

 マヤの叫びにミサトは、

「アグニとヴァルナ! 応答して!!」

『アグニの形代です!』

『北原です!』

「あなた達2機は向かって右側の使徒を攻撃して!! サイコバルカンはヴァルナが担当!! 但し、2体同時に倒さないとだめだから、アカシャとヴァーユのコンピュータとリンクして攻撃すること! わかった!?」

『了解!』
『了解!』

「アカシャとヴァーユは向かって左側の使徒よ! わかった!?」

『了解!』
『了解!』

 +  +  +  +  +

 突如中之島の頭に閃く物があった。

(何!? 2体同時!? ……そうぢゃ!! もしかしたら!!)

カタカタカタカタカタ……

 +  +  +  +  +

 ゲンドウ達はターミナルドグマに向かうための最後のエレベータの搭乗口に来ていた。監視システムに細工するため、リツコは壁のコネクタにケーブルを差し込み、パソコンを接続して操作している。

 ゲンドウが、リツコに、

「どうだ。なんとかなりそうか?」

「ええ、どうやら監視システムは旧ネルフ時代と同じようですわ。これならなんとかごまかせるでしょう……」

「そうか。それは有り難いな。では早く細工しろ」

「はい…」

カタカタカタカタカタ………、ピッ!

 改めてモニタを見た後、リツコは顔を上げ、

「出来ましたわ。これで私たちがターミナルドグマに行っても、上では何もわかりません」

 ここで祇園寺が、

「アダムやリリスの使徒としての気配も検知されないんだな?」

「はい、何も検知出来ませんわよ」

 ゲンドウは頷くと、

「よしわかった。早く行こう」

 そしてアダムは、リリスに向かって、

「じゃ、行こうか、リリス」

「…………」

 +  +  +  +  +

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!
バスウウウウウウウウウウウウッ!!!
ブシュウウウウウウウウウウウッ!!!
ブシュウウウウウウウウウウウッ!!!

「グエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」
「グエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」

ドオオオオオオオオオオオオオオオンンンッ!!!
ドオオオオオオオオオオオオオオオンンンッ!!!

 +  +  +  +  +

 またもやサトシは、

「これで四つだ!!」

 +  +  +  +  +

ビィィィーーーッ!!

「マトリエル接近!!」

「アカシャとヴァーユで攻撃! アグニとヴァルナはバックアップに回って!!」

『了解!』
『了解!』
『了解!』
『了解!』

 +  +  +  +  +

 エレベータの中、リツコが、

「間もなくターミナルドグマです」

 祇園寺は、ほっとした顔で、

「やれやれ、やっとだな。……アダム、リリス、心の準備をしておけ。もうすぐお前たちは『神』となるのだ」

「ふふふ、いいねえ……。わかったよ」

「……はい……」

 アダムは陽気に応えたが、リリスは相変わらずの調子である。その時、リツコは黙ったままゲンドウを見た。

「………………」

 ゲンドウも黙ったままである。しかし、その顔に浮かぶ色に、リツコは、

(碇司令、あなたも隠し事の出来ない方ですね……。それと、私もみじめな女です……)

 リツコの思索など知る由もなく、ゲンドウは思いに耽っていた。

(もうすぐだ。ユイ……)

 +  +  +  +  +

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!
ブシュウウウウウウウウウウウッ!!!

「グエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」

ドオオオオオオオオオオオオオオオンンンッ!!!

 +  +  +  +  +

「五つ!!」

『沢田! あと一つだぜ!!』

「おうっ!!」

 +  +  +  +  +

 五大は頷くと、

「我々の推定が間違っていなければ、使徒は後1体、サハクィエルだけだな」

 ミサトも頷き、

「ええ、でも問題はその後です。まだ量産型がいますからね」

「そうだな。量産型か……」

ビィィィーーーッ!!

「パターン青!! 上空からサハクィエルが降下して来ます!! 現在高度1万メートル!!」

「沢田君! 草野君! 頼んだわよ!!」

 +  +  +  +  +

「了解!! アカシャ上昇!!」

 +  +  +  +  +

「了解!! ヴァーユ上昇!!」

 +  +  +  +  +

 高度を上げたヴァーユとアカシャは地上8千メートル付近でサハクィエルに遭遇していた。

「沢田! 行くぞ!!」

『おう!』

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

「発射!!!!」

 +  +  +  +  +

カタカタカタ………、ピッ!!

 オモイカネⅡのモニタに表示された結果に、中之島は顔色を変えた。

「そうか!! そう言う事ぢゃったのか!!!」

「えっ!? 博士!?」
「どうしたんです!?」

 ミサトと五大が思わず振り返る。

 中之島は大声で、

「撃つな!! 使徒を爆発させてはならん!!」

「ええっ!!??」

 ミサトは仰天した。

 +  +  +  +  +

バスウウウウウウウウウウウウッ!!!
ブシュウウウウウウウウウウウッ!!!

ドオオオオオオオオオオオオオオオンンンッ!!!

 +  +  +  +  +

 サトシは、大きく拳を振り上げると、

「よっしゃあっ!! 使徒は全部やったぞっ!!」

『次は量産型だな。気を引き締めてかかろうぜ』

「おうよ!!」

 +  +  +  +  +

「サハクィエルは空中で爆発! 活動を停止しました!!」

 マヤの言葉に中之島は歯噛みし、

「クソっ!! 遅かったかっ!!」

 ミサトは、顔色を変え、

「博士! 使徒を爆発させてはならんと言うのは、どう言うことなんですか?!」

 中之島はかつてない悔しさを顔に浮かべ、

「儂等は使徒に一杯食わされておったのぢゃ! 連中は死んでなんぞおらん! 死んだ振りをしておっただけなのぢゃ!!」

 五大も仰天し、

「死んだ振り、ですと!?」

 中之島は頷くと、

「説明する。マギを経由してメインモニタにウィンドウを開くぞ!」

 その時、嬉しそうなサトシの声が、

『中央応答ねがいます!! 使徒は6体殲滅しました!!』

 しかし、中之島は、

「沢田君!! 儂等は使徒にまんまと一杯食わされてしもうたようぢゃぞ!!」

『えっ!? どう言うことなんですかっ!?』

「後で説明する! とにかくいつでもマントラレーザーを使えるようにして待機ぢゃ!! 他の四人にも連絡しておけ!!」

『りょ、了解しましたっ……』

 +  +  +  +  +

 ターミナルドグマ。

 ゲンドウは大きく息をすると、

「やれやれ、やっと辿り着いたか。……祇園寺、始めろ」

 祇園寺は頷き、

「うむ、ではアダム、リリス、服を脱いで横になれ」

「ふふふ……♪」
「………………」

「では始めるぞ。……アテエエエエエエ、マルクトゥゥゥゥゥ、ヴェ・ゲブラアアア、ヴェ・ゲドゥラアアア、ル・オラアアムウウ・エイメンンンンンンン………」

「………………」

 儀式の様子を見ながら、リツコは自分の中に湧き上がる嫌悪感を抑えるだけで精一杯だった。

(母さん……)

 +  +  +  +  +

 中之島から説明を聞いたミサトは、

「じゃ、使徒は、完全に消滅させられるのを防ぐため、わざと爆発して『肉体の部品』を撒き散らした、と仰るのですか!!??」

「その通りぢゃ! 連中はマーラとしての気配を極力抑えておったようで、爆発する時にも殆どノイズを出さんかった!」

「ああっ!! そう言えば!!」

 マヤも顔色を変え、

「今回はゼルエルの時のような強いノイズは検出されていません!!」

「そうなのぢゃ! しかしほんの少しだけはノイズが出ておって、そのノイズが通信に紛れ込んでおった! それを解析したら、イロウルのノイズパターンが検出されたのぢゃ!!」

 ミサトは身を乗り出し、

「じゃ、今回の大型使徒6体は、イロウルと一体化していると!!」

 五大も歯噛みして、

「そうか!! JAが第2でも京都でもイロウルの気配を察知出来なかったのは、既に大型使徒と一体化していたからか!!!」

 中之島は大きく頷き、

「その通りぢゃ!! それで、厄介な事に、イロウルは細菌状の使徒ぢゃから、物理的に破壊しても退治出来ん!! ましてや爆発して肉片を撒き散らしたら、後はどうなるか、火を見るよりも明らかぢゃ!!」

 五大はかつてない表情で、

「!!! 自己増殖か!!!」

「連中が復活する前に肉片を完全に消滅させる必要がある! 全力を集中して処理するのぢゃ!!」

 ミサトが、目を血走らせ、

「具体的にはどうするんです!!?」

「今の所はっきりしているのはマントラレーザーで焼き尽くすしかないと言う事だけぢゃ! エヴァ全機とJAにもマントラレーザーを持たせるのぢゃ!!」

 ミサトは頷くと、

「わかりました!! 日向君!! レーザーライフルを2丁射出して!!」

「了解!!」

 +  +  +  +  +

 ターミナルドグマ。

「うっ、ううっ、あっ、……はあっ、はあっ……」
「ああっ、ううっ、ああっ、……ああっ、……ああっ……」

「テグネタ・アボノディカ・エレパ・サロニア・ロシュタ・ベリアル・ベルセブレブ・ウーベシュ・ルーセフェディア・ボルス・アソナンス、テグネタ・アボノディカ・エレパ・サロニア・ロシュタ・ベリアル・ベルセブレブ・ウーベシュ・ルーセフェディア・ボルス・アソナンス、テグネタ・アボノディカ………」

 +  +  +  +  +

「レーザーライフル射出完了!!」

 日向の言葉にミサトは、

「オクタ全機に緊急連絡します!! レーダーとスキャナをフル稼働して、飛び散った使徒の肉片を全て発見し、マントラレーザーで焼き尽くすこと!! 大至急実行しなさい!!」

『りょ、了解しました!!』
『了解です!!』
『了解致しました!!』
『了解しました!!』
『了解です!!』

「エヴァ全機もレーザーライフルを使って作業を実行!! 肉片の場所はこちらでスキャンしてデータを送信します!!」

『了解しましたっ!!』
『了解です!!』
『了解!!』

「時田さん!! JAも同じ要領でお願いします!!」

『了解しました!! レーザーライフルを装備します!!』

 +  +  +  +  +

「ボルス・アソナンス!」

 ターミナルドグマに祇園寺の叫び声が響き渡ると同時に、アダムはリリスを抱き締めて激しくのけぞった。

「ううっ!!!」
「くううううっ!!!」

「ふふふふ、これでまた面白くなったな……」

 その様子を見ながらゲンドウは北叟笑んだが、リツコは無言のままである。

「…………」

 +  +  +  +  +

(……なんてこった……。使徒は全部倒したってのに……)

 本来なら多少は「お褒めの言葉」も戴きたい所だったのに、いきなり、「使徒に一杯食わされた」とだけ言われ、更には、「飛び散った肉片をレーザーで処理せよ」と命じられたサトシは、少々クサりながらスキャナで「使徒の肉片」を探していた。

「あーあ、まいったなあ……」

『沢田、クサるなよ。僕だってちょっとはまいってんだ』

 無線に飛び込んできた大作の声も明るくない。

「ま、しかたないよなあ。量産型が来る前に早くケリをつけようぜ」

『そう言うこったな』

 その時、

ビィィーーーッッ!!

「なんだ!!?? ああっ!!」

 突然警報が鳴り、ウィンドウが開いた。

”使徒接近”

 +  +  +  +  +

「マヤちゃん!! 使徒はどこなのっ!!?」

 真剣な顔でミサトが怒鳴る。

「わかりません!! 警報が出ただけで、場所が特定出来ませんっ!!」

 マヤも蒼白な顔をしている。ミサトは青葉の方を振り向き、

「青葉君! 量産型なのっ!?」

「レーダーには量産型の姿は映っていませんっ!!」

「マヤちゃん! 地上の肉片には何か変化がないっ!?」

「現在のところ、変化は、……ああっ!!」

「どうしたのっ!?」

「付近の地面一帯に高エネルギー反応が!!」

「なんですって!!?? モニタに映して!!」

 +  +  +  +  +

「なんだこれはっ!!!」

 思わずサトシは叫んだ。ウィンドウ越しに見る地面のあちこちで真っ赤な炎のような小さな光の玉が無数に光り始めたではないか。

「使徒かっ!! ……あああっ!!!」

 何と言う事だろうか。小さな光の玉は見る間に大きくなり、あちらこちらで集合を作り始めたのである。

 +  +  +  +  +

「エネルギー増大!! 赤い光の玉は約30に分かれてそれぞれ集合を作りつつありますっ!!」

 マヤの叫びにミサトは顔色を変え、

「まさか!!」

「使徒が復活するのか!!」

 五大が叫んだ時、メインモニタが激しく光った。

「わあああああああああああっ!!!」
「きゃああああああああああっ!!!」

 中央制御室に悲鳴が響き渡る。

 +  +  +  +  +

「わあああああああああああっ!!!」

 アカシャのスクリーンも激しく光った。サトシが思わず眼を閉じる。

「……な、なんだ……」

 恐る恐る開いたサトシの眼に、信じ難い光景が飛び込んで来た。

「!!!!!!! 使徒!!」

 そこには30体はいようかと言う、巨大使徒の群れがあった。

 続く



この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'たとえ、君を抱いても ' composed by QUINCY (QUINCY@po.icn.ne.jp)

二つの光 第十六話・日蝕
二つの光 第十八話・叫び
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