第四部・二つの光




 驚いた加持は、中之島に、

「博士、私と碇に『加持』をやれ、と仰るのですか?」

 中之島は頷くと、

「そうぢゃ。断っておくが決して名前から考えた洒落ではないぞ。惣流君に対して加持を行うには、君と碇君が一番の適任者だと判断したからぢゃ。無論、その上で、オカルティズムの観点に立って、加持君の名前の『縁』を無視せん、と言うのも、それはそれでいいのぢゃがの」

「はあ……」

と、加持は応えたが、シンジは何も言えなかった。

 +  +  +  +  +

第十三話・疑念

 +  +  +  +  +

 ここで五大が、

「博士、それはどう言う事なのです?」

 中之島は、真顔で、

「本部長も御存知ぢゃとは思うが、加持を馬鹿にしてはいかん。あれは生物の生命のエネルギーを活性化させるものぢゃ。惣流君に行ってみるだけの価値はあるぞよ」

「無論それは承知しておりますが、加持を行うのなら、熟練度から考えれば、元締、いえ、持明院が行うのが適任でしょう」

「………」

 名指しされたものの、持明院は何も言わない。中之島が改めて口を開こうとした時、突然ゆかりが、

「すみません。よろしいでしょうか?」

 五大は顔を上げると、

「綾小路君だったな。どうぞ」

 ゆかりは一礼すると、

「有り難うございます。今の博士のお話を伺って判ったのですが、要するに碇さんと加持さんは、惣流さんと一番縁が深く、一番強く回復を願っておられるだろう、だから、加持の効果が発揮されるのではないか、と言う事なのではありませんか?」

 中之島は頷き、

「その通りぢゃ。順番に言うとの。最近でこそ余りやっておらんが、儂も昔何度か加持を行って実績を上げた事がある。人間に対して行った事は少なかったが、動物に対して行った加持は確かに目に見えて効果を上げたものぢゃ」

 それを聞いたサトシは、驚いて、

「えっ?! 動物、って、そんな事ができるんですか?」

「無論ぢゃ。動物だけではない。植物にも効果があるぞよ。寧ろ人間よりも効き易いぐらいぢゃ。動物、と言うのは、昔儂が飼っていたペットのモモンガぢゃったが、前足に怪我をした時に、投薬と並行して加持を行ったのぢゃよ。獣医の診断では後遺症が残るかも知れん、と言う事ぢゃったが、幸いにして後遺症を残さず全快しおった。ついでに言うと、投薬は毎日行ったが、たまたま加持をやらんかった日があったのぢゃ。そしたら、どう言う訳かその日だけ症状が悪化しおってのう。慌てて加持を再開したらまた回復に向かいおった、と言う事もあったのう」

「へえ、そんな事が……」

「その時に掴んだコツなのぢゃが、要するに、さっき綾小路君が指摘してくれおったようにぢゃ、加持と言う奴は、『患者の回復を心から願っている者』がやらんと効果を上げんのぢゃよ。その意味で、一番適任なのは『自分自身』なのぢゃが、無論惣流君自身が行う事は出来ん。それで、こんな場合は一番近い者がやるのが一番なのぢゃ。ペットの場合は飼い主がやるのが一番、と言う事ぢゃな。それともう一つ、惣流君の場合、病気で意識がないのではなく、原因は不明ぢゃが気を失っている、と言う状態ぢゃ。こう言うケースの場合、加持によって生命力を活性化させると言うよりも、回復のためのきっかけを見つける、と言う事が問題解決に繋がる可能性が高いぢゃろ。例えばぢゃ、病人が対症療法でいくら病気の治療をやったとしても、原因を取り除かん限りは真の問題解決とはならん。その原因を見つけて取り除くのも『加持』ぢゃろが」

 ここまで聞き、五大も、

「成程、そう言う事ですか」

 中之島は続けて、

「無論の事、単に加持を行うだけではないぞよ。脳神経スキャンインタフェースを接続して行うのぢゃ。そうすれば、二人の心は直接惣流君に伝わる筈ぢゃからな」

 五大は頷き、

「うーむ、それは中々面白い。そう言う使い方もあるか……。わかりました。やらせてみましょう。加持部長、碇君、やってくれるな?」

「了解しました」
「はい、やってみます」

 ここで中之島が、

「それとぢゃ、もう一つポイントがある。碇君と惣流君が儂等の世界に来てくれたきっかけは、確かタロットぢゃったな?」

「は、はい、そうです」

「それで、こちらの世界に戻ってから、君達二人はタロットを使って何かやったりした事があったかの?」

「はい、たまたまこちらでもタロットを見つけて、二人で占いをやったり、カードを見て連想したりとかしていました」

「うむ、それなら余計に好都合ぢゃ。君達には真言密教の三密加持そのものではなく、タロット呪術をやって貰おう」

「え? そんなことができるのですか?」

と、驚いたシンジに、中之島は、

「うむ、可能ぢゃよ。碇君と加地君のスマートフォンを貸してくれ。まずはタロットソフトをインストールする。それと、すまんがスマートフォンに接続可能な脳神経スキャンインタフェースを2本、持って来てくれんかの」

 これを聞いた五大が、マヤに、

「伊吹君、頼む」

「了解しました」

 マヤが部屋を出て行くや、中之島はシンジと加持からスマートフォンを受け取り、S−USBでオモイカネⅡに接続してキーボードを操作した。

「うむ、これで良かろう。では、使い方を説明するぞよ」

 シンジと加持が中之島の手元を覗き込む。

「まずは、このアイコンをタップすると起動するのぢゃが、可能なら脳神経スキャンインタフェースを接続した状態で起動するのが望ましいぞよ。インタフェースがない場合でも、オカルト的な観点に立つ限りは充分に使用は可能ぢゃ」

「はい」
「はい」

「そしてぢゃ、まずはこのソフトがインタフェースを使って君達の心を読む。その上で、今の問題を解決するために最も必要と判断されるカードを表示してくれるのぢゃ。インタフェースがない場合はソフトがカードを引くのぢゃが、これに関してはおみくじの延長のようなものぢゃと思ってくれ。但し、碇君はタロットで占いをやった経験があると言う事ぢゃから分かってくれると思うが、現実に実行する時は表示されたカードからの連想で事を進める訳ぢゃから、インタフェースがなくても最終的には問題ないと言う事を、取り敢えずは理解しておいてくれ」

 その時マヤが戻って来た。

「どうぞ」

と、差し出されたインタフェースを受け取った中之島は、

「うむ、恩に着るぞよ」

と、マヤに礼を言いつつ、インタフェースを二人のスマートフォンに接続し、

「では、早速やってみようかの。このインカムを頭に付けて、アイコンをタップしてくれ」

「はい」
「はい」

 二人がアイコンをタップすると、画面にそれぞれ1枚のカードが表示された。

 シンジが引いたのは、「06:恋人たち」であり、



加持が引いたのは、「14:節制」であった。



 それを見た中之島は、

「なるほどのう、納得できるぞよ。碇君は惣流君の恋人として彼女を心配し、加地くんは保護者として彼女を慈しんでいる様子がよく分かる」

「……」
「……」

 無言で聞く二人に、中之島は続けて、

「後はただひたすらこのカードの絵を見続けて、絵に書かれている物や事柄から連想したり、頭の中に浮かぶイメージを追うだけで良い。余計な計らいは無用ぢゃ」

「えっ? それだけでよろしいのですか?」

と、驚く加持に、中之島は、

「うむ、それで良い。君達二人はもう既に心から惣流君の回復を願っている筈ぢゃ。後はカードを使った連想が君達を導いてくれるぞよ。そうやって連想している内に、何とも言えない衝動や直感が浮かぶ筈ぢゃ。その時は素直にそれに従うが良い。それだけで良いのぢゃ」

「はい、分かりました」
「承知致しました」

 加持とシンジの言葉に頷くと、五大は、

「ではそれに関しては二人とも中之島博士の指示に従ってくれ」

と、言った後、改めて、

「他には何かないか?」

 ここでミサトが、

「すみません。一つあります」

「なんだね」

 ミサトは、表情を改めると、

「作戦担当として、以前に本部長にお聞きした事をまた伺わねばなりません。本部長と碇ゲンドウの関係に関してお答え下さい」

「!!」

 五大は一瞬絶句したが、すぐに気を取り直して、

「わかった。答えよう」

と言った後、一呼吸置いて、

「……私と碇、当時は六分儀と名乗っていたが、実は、あいつとは、『恋敵』同士だったのだよ」

 意外としか言いようのない五大の言葉に、ミサトは思わず身を乗り出し、

「恋敵?!!」

「!!!」
「!!!」

 シンジと冬月も顔色を変えた。五大は続けて、

「そうだ。『恋敵』だ」

 呆然とした顔のミサトは、

「じゃ、まさか……」

 五大は頷くと、

「そうだ。碇君の母親、ユイさんをめぐって、私と碇は一悶着も二悶着もあったのだ。しかし結局ユイさんは碇と交際し、結婚した。……私と碇との確執の根底にあるのはそれだ……」

「碇ゲンドウとの関係はあくまでも京都時代の個人的なものだった、と言う事ですね?」

「そう言う事だ」

 ミサトは頷くと、

「わかりました。……重要な問題だとは思いますが、それが現在の我々の行動に影響を及ぼさない以上、この件に関して私がこれ以上伺うのは差し控えたいと思います」

 それを聞き、五大は、

「では、この件は、以上、と言う事で構わんかな?」

「はい。結構です」

 ミサトの言葉に五大は頷くと、

「では、他になければ会議を終了する。さっき言ったように、ここに異様な霊気の流れが集まって来ている、と、元締が霊視された事も鑑みると、今後は時間との戦いになるだろう。まず、技術部は武器の改良と、エヴァを使って使徒を順次呼び寄せる方法の検討に入ってくれ。中之島博士の指示に従う事。加持部長と碇君はさっき言ったように、惣流君にタロット呪術による加持を行ってくれ。これも博士の指示に従って欲しい。博士、段取りはお任せします」

 中之島も頷き、

「判った。で、順番なんぢゃが、儂は先に技術部で武器の改良に関して指示を行う。具体的にはオモイカネⅡとマギをリンクしてデータを渡すから、その通りにやって貰えばよかろう。何か判らない事があったら聞いてくれれば良いぞよ」

 マヤ、日向、青葉の三人は、

「はい、了解致しました」
「了解しました」
「了解しました」

 中之島は続けて、

「加持君と碇君は惣流君のいる病院で待機していてくれるかの。技術部の用事が片付いたらすぐにそっちに行くからの」

 加持とシンジも、

「了解しました」
「はい、わかりました」

 ここで五大は、ミサトに向かって、

「葛城君、エヴァ、オクタヘドロン、JAの作戦行動に関しては、君を統括責任者とするから、パイロットの管理を頼む。全員にスマートフォンを持たせて、いつでも連絡を取れるようにした上で、本部内に待機させておいてくれ」

 ミサトは頷き、

「了解しました」

 五大は続けて時田に、

「時田さん、それでよろしいですかな」

 時田も頷き、

「ええ、結構です」

 更に五大は中之島に、

「中之島博士、構いませんね?」

「うむ、異存はないぞよ」

 ここでミサトが、

「では早速スマートフォンを手配します。レナちゃん、頼んだわよ」

「はい、了解しました」

 五大は改めて全員を見渡すと、

「では、解散する。各自持場に戻ってくれ」

 全員が立ち上がり、会議室を出て行く。そんな中、五大は突然、

「ああ、そうだ、葛城君」

 呼び止められたミサトは、振り向くと、

「はい」

 五大は苦笑し、

「さっきはどうも、お気遣い感謝するよ」

「…いえ、どうも…」

と、ミサトは応えたが、突然、

「えっ!?」

「どうかしたかね?」

「いえ、なんでもありません。失礼致します」

「うむ」

 会議室を出て行きながら、ミサトは心中、

(あの表情……、なにか隠してる……)

 +  +  +  +  +

 総務部室に帰って来たミサトは机に向かって座ったまま、組んだ手を額に当て、やや俯き加減になりながら考え込んでいた。

(……本部長のあの顔、確かになにか隠しているわ……)

 本来ならこんな事を考え込んでいる時ではない。迫り来る「決戦」に備えて作戦を練っておかなければならない時の筈だ。しかし今のミサトは、五大の表情に感じた「不信感」が気になって仕方なかった。

「部長」

(……でも、なんでこんなふうに思ったのかしら……)

「あの、葛城部長」

「えっ? あっ、なに?」

 二度目のレナの声がミサトの思索を破った。慌てたミサトが顔を上げると、彼女は怪訝そうな顔をしている。

「あの、スマートフォンを受け取りに、技術部に行って来ます……」

「あ、そ、そうなの。頼んだわね」

「はい」

 レナが部屋を出て行った後、ミサトは再び手を組んで考え込んだ。

(……私って、どっちかって言うと、カンはにぶい方だった。……なのに、なんでさっきはあんなふうに思ったんだろう……)

 +  +  +  +  +

 IBO付属病院(旧ネルフ付属病院)303号室前の廊下のソファで、シンジと加持が中之島を待っている。

「……加持さん」

「ん?」

「アスカ、なおるでしょうか……」

「わからんよ。……大体、博士もムチャを言うもんだ。俺にしてもシンジ君にしても、オカルティズムの能力なんかある筈がないじゃないか」

「でも、綾小路さんは、アスカといちばん縁が深く、いちばん回復をねがっているのが僕らだから、って、言ってたでしょ」

「……確かにな……。俺はアスカの父親兼兄みたいなもんだ。シンジ君はアスカのボーイフレンド、いや、恋人、って言ってもいいくらいだよな……」

「………」

「でも、だからって、俺達に出来るとは思えんけどねえ……。ま、やってみるしかないさ……」

「はい……」

 +  +  +  +  +

 技術部では中之島の指示の下、武器の改良作業と使徒を呼び寄せる方法の検討に入っている。

 中之島がコンソールの前にいる日向の方を向き、

「よし、オモイカネⅡの方は準備完了ぢゃ。日向君、マギの方はどうぢゃ?」

 日向が振り向き、

「マギの準備も完了です」

「うむ、ではリンク開始ぢゃ」

と、言いつつ、中之島はキーボードを叩き、すぐに頷いて、

「よし、こっちは正常に接続したようぢゃが、そっちはどうぢゃ?」

「はい、こちらも正常です」

「よし、ではデータをアップロードするぞ」

「データ受信中です」

と、モニタを見ていた日向は、すぐに、

「完了しました」

 中之島は頷くと、

「うむ、では後はデータを参考にしてビーム砲とエヴァンゲリオンのコンピュータの改善に取り掛かってくれ。まあ、レーザーライフルをマントラレーザーにする事はすぐに出来るじゃろう」

「了解しました」

と、日向はコンソールに向かい、キーボードを叩き始める。それを見た中之島は、

「ではケーブルは外すとするかの。この先は多少速度は落ちるかも知れんが、無線で接続しようぞよ」

と、オモイカネⅡに接続されたケーブルを外しつつ、思い出したように、

「おおそうぢゃ、青葉君」

「はい」

と、コンソールに向かっていた青葉が振り返る。中之島は眼を光らせ、

「上手く行けば、オクタだけでなく、エヴァも『サイコバルカン』を使えるようになるかも知れんぞ」

「サイコバルカン、ですか」

と、身を乗り出した青葉に、中之島は続けて、

「うむ、今送信したデータの中に入っておるが、オクタが持っておるサイコバリヤーと言う防御システムを逆用した武器の事ぢゃよ」

「つまり、エヴァに当てはめますと、ATフィールドを攻撃用の武器として使うと言う事ですか?」

「そうぢゃ。ATフィールドをビーム化して高速で放出すれば、極めて強力な武器となるからの」

「成程。了解しました。早速検討にかかります」

「頑張ってくれ」

と、頷いた後、中之島は、今度はマヤに、

「ああそれから、伊吹君」

 マヤは振り返り、

「はい。なんでしょう?」

「エヴァを使って使徒を一体ずつ呼び寄せる方法なんぢゃが、儂等の世界で知る事が出来た方法は今のデータにも入っておる。それも参考にしてくれ」

「了解しました」

「それから、ここに脳神経スキャンインタフェースの予備はあるかの。碇君と加持君に使って貰った奴と同じものが良いのじゃが」

「あります。さっき念のために予備として持って来ていましたから……。はい、これです」

と、マヤは引出しの中からタバコの箱のような物を取り出し、中之島に手渡す。

 受け取った中之島は、インタフェースをしげしげと眺め、

「しかし、このインタフェースは儂が開発した物よりも優れているようぢゃのう。これほどシンプルかつコンパクトに作ってあるとは……」

 マヤは頷き、

「ええ、本部長が開発したんですが、私もこのコンパクトさには驚きました。でも、コンパクトさ、と言う点ではオモイカネⅡには及びませんけど」

「ふぉっふぉっふぉっ。まあ、こいつは特別ぢゃよ。儂の生涯の中でも最高の自信作の部類に入るからのう。……ほれ」

と、中之島はニヤリと笑いながらオモイカネⅡをマヤに差し出す。

「あ、どうも」

と、受け取ったマヤは、

「そうでしょうねえ。こんなに小さい、ノートパソコンみたいなコンピュータがマギと変わらない能力を発揮するなんて、とても信じられません」

 マヤはオモイカネⅡの蓋を開き、眼を輝かせながら見詰めている。中之島は手にした脳神経スキャンインタフェースを改めて見た。

「このインタフェースに関しては、零号機が儂等の世界に来た時に、操縦席に付いていたヤツを調べたのぢゃが、どうもよく判らんかった。かなり集積化されておるようぢゃのう」

「なんでしたら、仕様書をご覧になりますか?」

「おお、そうか。是非拝見したいものぢゃ」

「はい、これです」

と、マヤは再び抽斗を開け、仕様書を取り出すと、中之島に手渡した。

「かたじけない」

と、受け取った中之島は、早速開いて目を通すと、

「ふーむ、……ふむふむ、……おっ、……成程のう。……おっ?!!」

「どうかなさいましたか?」

と、その様子に不審そうなマヤが尋ねたが、中之島は、

「いや、何でもないぞよ」

と、言った後、再度目を通し、

「……ふーむ、ふむふむ……」

 そして、ざっとその中を見終わった中之島は、

「どうも有り難う。ほれ」

と、マヤに仕様書を返す。

「はい、どうも」

と、受け取ったマヤも、

「じゃ、博士、お返しします」

と、オモイカネⅡの蓋を閉めると中之島に差し出した。中之島は受け取ると、

「では儂は病院に行く。後は宜しく頼むぞよ。何か判らん事があったらスマートフォンの方にかけて来てくれ」

「はい。了解しました」

 マヤは再びコンソールに向かい、中之島は病院に向かうべく、中央制御室を後にした。

 +  +  +  +  +

(何と、このインタフェースは、単に脳神経内の電気信号を読むためのものではないのか……)

 廊下に出た中之島は、さっき見た仕様書の内容を思い出しながら、改めて手に持ったインタフェースをまじまじと見ていた。

 +  +  +  +  +

 駒ケ岳山中。

「……ようやく、『約束の時』が近付いて来たようだね。……もうすぐだよ」

 突然、呟くように漏れたアダムの言葉が車内の沈黙を破る。

「……そうか。……では我々もそろそろ行こうか、『約束の場所』に。……リツコ君、車を出せ」

 ゲンドウの言葉に、諦め切ったような表情のリツコは、

「……はい……」

 +  +  +  +  +

 レーダーの電波が届かない超低空の海面を飛行する9体の巨大な人型の物体は、ゆっくりと箱根を目指して飛び続けていた。

 続く



この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'アヴェ・マリア(カッチーニ) ' mixed by VIA MEDIA

二つの光 第十二話・伏流
二つの光 第十四話・静寂
目次
メインページへ戻る