第四部・二つの光




 中之島とライカーはエンタープライズに戻り、松下は戦闘機の格納庫に行った。由美子はカジマの指示で、発令室にいる。

 十人のパイロット達は、個室で休憩しながら待機する事になり、それぞれが割り当てられた個室に入り、全員死んだように眠っている。

 身も心も疲れ切っている彼等にとってはまさに「束の間の休息」であったに違いない。

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第六話・癒し

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 部屋で目覚めたサトシの目に映ったのは壁の時計である。

 21:04。

「…ん……。もうこんな時間か……」

 この間にも『使徒との決戦』の準備は着々と進んでいる。ここにいるのも、もう後僅かであろう。

(………レイ、……また会うなんて………)

 少し落ち着きを取り戻したサトシは今日の出来事を思い出していた。自分の行方不明。アグニとヴァルナとの合流。そして突然のエヴァンゲリオン零号機の出現。レイとの再会………。

(………!! そうか!! あの時感じた胸騒ぎは………)

 サトシは思った。あの時月面で感じた「胸騒ぎ」は、もしかしたらレイが自分を呼んだからではないのか。潮岬に行く途中でリョウコの事が心配になって感じた胸騒ぎと同じ感じだったのも、レイがリョウコと「異次元の双子」だったからなのかも知れない………。

 そう思うと、サトシは居ても立ってもいられなり、与えられたスマートフォンを手に取ると、レイの電話の番号を押した。

『……はい、綾波です』

「沢田です」

『サトシくん! どうしたの?……』

「ちょっと話があるんだ。よかったら時間取れないかな」

『いいわ。……でも、どこで?……』

「基地の屋上は立入禁止じゃなかったはずだから、屋上でどうかな」

『うん。……じゃ、今寝巻きだし、着替えてから行くから、ちょっと待ってて』

「わかった。じゃ、先に行って待ってるよ」

 サトシは電話を切ると、与えられた戦闘服に着替えて部屋を出た。

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(沖縄の夜空か………。ほんとに久しぶりだな………)

 サトシが屋上に出て来ると、そこは快晴の夜空だった。今日は十六夜だから星は良く見ないが、月がとても美しい。

(………あの時は、リョウコとこんな風に夜空を見てたっけ………)

 フェンスに寄りかかって空を見上げる。沖縄の夜空をじっくり見るのは中学校の修学旅行の時以来二度目。前の時はリョウコが一緒。そして今回はリョウコの「異次元の双子」たるレイ……。そう思うと、何とも不思議な気持が湧き起こって来る。

「サトシくん………」

「あ……」

 振り向くと、そこにレイが立っていた。彼女も支給された女性兵士用の戦闘服を着ている。

 サトシは軽く微笑み、

「……そっか、こっちに来た時は、プラグスーツだったもんな……」

 月明かりの中、レイも微笑んで頷く。

「うん、寝巻きも着替えもいただいて、ほんとにありがたいと思ってるわ……」

「寝てたんだろ。疲れてるとこ、わざわざごめんね」

「ううん、わたしもさっき起きたところよ。……で、話、って、なに?」

「実はさ………」

 サトシはレイに、「自分が感じた胸騒ぎ」の事を順番に語った。潮岬にゼルエルが出現した時、それを迎撃に行く途中に、妙にリョウコの事を案じて覚えた胸騒ぎ。そして、自分が『暗黒の次元』に飛び込んだのは、月の裏で「同じ胸騒ぎ」を感じた直後だった事………。

「………と、言う訳なんだ」

 流石にレイも驚いたようで、表情を変え、

「そんなことが……」

「うん、で、さ、レイが使徒に飲み込まれた時、何か感じなかったかな、って、思ってね……」

 僅かな沈黙の後、レイが口を開く。

「あのときは無我夢中で、なにもかんがえられなかったわ。……すごくこわかったけど、一緒にのみこまれた初号機と弐号機をなんとかたすけなくちゃ、って、だけ思って、2機の足をつかんで上におし上げたのよ……。2機がJAの足につかまって、上にのぼって行くのがかすかに見えて、そのままわたしたちは沈んで行ったの……」

「………………」

「それで、あとはなにがなんだかわからなかったわ……。一瞬気が遠くなってしまって……」

「その時にマントラを唱えなかったかい?」

「えっ? ……意識してなかったけど……。ちょっとまって、思い出してみるわ……」

 レイは眼を閉じてその時の事を思い出そうとした。零号機が何もない暗闇に引きずり込まれた時、自分は一瞬気が遠くなったが、カヲルはどうだったのだろう。気が付いたら「あの場所」にいた。しかし、使徒に飲み込まれた時の恐怖感はなく、何となく安心出来るような場所。果たしてあの場所は使徒の中だったのだろうか。それともどこか別の場所だったのだろうか。気が遠くなった時、マントラを唱えていたのだろうか。意識しては唱えていなかったが、無意識で口走っていたのだろうか……。

「……やっぱりわからないわ。ごめんなさい……」

「いやそんな、レイが謝る事じゃないよ。……変な事聞いて悪かったね……」

 やや申し訳なさそうな顔をしたサトシに、レイは軽くはにかんで、

「ううん、……でも、もし、わたしの心がサトシくんに通じて、心配してくれたんだとしたら、うれしいわ……」

「えっ?」

「だって、おかしな縁だけど、わたしとリョウコは『異次元の双子』でしょ。それと、サトシくん、リョウコのことが好きなんじゃなかったの? リョウコと同じようにわたしのことを心配してくれたんでしょ。だったら、やっぱりうれしいわよ」

と、ここまで話した時、レイは突然思い出し、

「!! …ごめんなさい。そう言えば、サトシくんとリョウコは兄弟かも知れない、って………」

「いや、それがさ、そうじゃなかったんだ。僕とリョウコはいとこ同士だったんだよ」

 サトシの意外な言葉に、レイは驚き、

「えっ!? じゃ、わたしとシンちゃんと同じだったの?! じゃ、どうどうと付き合えるじゃない」

「そうだったんだ。……でもさ……、いや、そのね……」

 言葉に詰まるサトシ。レイは訝しげに、

「どうしたの?………」

「…思い切って言うよ。……実はね……」

 話がおかしな方向に流れてしまったが、こうなったらやむを得ない。サトシはこの1年8ヶ月の事をレイに語った。あれから暫くはリョウコと仲良くやっていたが、結局マンネリになってしまって「別れた」事。その後、自分はアキコとちょっと仲良くなり、リョウコは大作と仲良くなって、それぞれ今は結構いい仲だと言う事。で、あるにも拘わらず、潮岬に行く時にリョウコの事を変に心配してしまった事。それに対しては、自分自身、やっぱり情けなく思っている事………。

「…情けない話だろ。……でも、これが僕なんだよ……」

「…そうだったの……」

 レイも言葉に窮する。サトシも自分も結局は同じなのだ……。

 自分は元々シンジの事が好きだったが、シンジはアスカと相思相愛になってしまった。それで暫くは寂しい思いをしていたが、カヲルが現れ、徐々に好きになって行った。

 更に考えてみれば、「暗黒の次元」に飛ばされた時は、あのようなクリティカルな状況下であり、一時的な事でやむを得なかったとは言うものの、サトシにも心を惹かれていた。

 それらの事に関しては、元の世界に帰ってからも常に自分にとって悩みの種であったではないか。カヲルの事を好きになりながらも、何かあったらいつも心の中ではシンジとサトシに問いかけていたではないか。

 無論、あの時は止むを得なかったのだし、悪い事とは言えないだろう。しかし、レイとしては、自分自身の事を、サトシに対してとやかく言える立場ではない、としか思えなかった。

「…でも、サトシくん、わたしだって、そうなのよ……」

「えっ?」

「わたし、あの時、『暗闇の世界』に飛ばされた時、あなたと出会って、あなたのことを好きになったわ。……あなたもわたしのことを好きになってくれたでしょ……」

「えっ?! う、うん……」

「でもね、結局は、わたしとあなたは住む世界がちがうじゃない。それで、リョウコのこともあったし、あなたのことはあきらめなきゃしかたない、って思ったわ……」

「…………」

「わたしはもともとシンちゃんのことが好きだったでしょ。だからあなたにもひかれたんだと思うけど……。でも、シンちゃんはアスカとなかよくなっちゃって、わたしのことなんか思ってくれなかったでしょ。……それで、わたし、結局は、渚くんを好きになったのよ……」

「えっ? ……そうだったのか……」

「だからね、わたしはサトシくんにはなにも言えないわ。……あなたとおなじなんだもの……」

「でもさ、レイはなにも悪くないよ。僕との事は、あんな場所でとんでもない状態だったからだろ。……僕もあの時思ったよ。……『あの場所』に行ったら、自分が抑えられなくなる、って……」

「えっ?」

「あの場所はさ、人間の自制心をなくしてしまう場所なんだよ。……それに、僕と碇君は『異次元の双子』なんだし、レイがあの時そんな風に思ったとしても、それはレイが悪いんじゃないよ。……僕だって悪かったんだし……」

「サトシくん……」

「でもさ、今だったらはっきり言えるよ。レイはリョウコの『異次元の双子』だろ。僕は碇君とそうなんだから、つまり、僕とレイも『いとこ同士』、って事じゃないか」

「いとこ同士……」

「そうだよ。その意味でさ、あくまでもその意味でだけど、僕は、……レイの事を大切に思ってるし、……その意味で、今でも好きだよ……」

「えっ?」

「変に思わないでよ。だってそうじゃないか。レイだってそうだろ。……あの時の事はさ、僕とレイの大切な思い出だし、それでいいじゃないか。ねっ、そうだろ」

 流石に苦しい言い訳のような屁理屈だが、サトシとしてはこう言うしかない。

「……………………」

「こんな事言ってもさ、屁理屈にしかならないかも知れないよ。でもさ、それでいいんだよ。レイにはレイの幸せがあるんだし、レイが渚君と仲良くなって、それで幸せになるんなら、僕だってうれしいよ」

「……………………」

 黙っていながらも、レイはサトシの言葉が嬉しかった。確かに屁理屈かも知れないが、サトシの言う事も尤もである。自分にとっても「暗黒の次元」での出来事は「異常事態」には違いなかったのだ。

 それに、良く考えてみれば、サトシとの出会いと、その時経験した「クリティカルな愛」が、自分の「人間としての心」を育ててくれた事も間違いないではないか。シンジの事も好きだが、サトシにも惹かれてしまった。そしてサトシに会いたくても会えなかった。その時の心の苦しみが今の自分の心を作る一助になった事は、レイとしても認めざるを得ない。

「……だからさ、そんな事気にしないで、早く事件を解決してさ、またみんなで幸せにやって行けばいいじゃないか。……前にも言ったろ。……僕はもう高校生になっちゃったけど、レイはまだ中学2年生じゃないか。これから人生どうなるかなんて、誰にもわからないよ」

「!!」

 このサトシの一言はレイの心を貫いた。一瞬の後、顔を上げて微笑むと、

「……そう。……そうよね。……そうなのよね……」

 温かいレイの笑顔と穏やかな言葉がサトシの心に飛び込む。

「あ、やっと笑ってくれたね。それでこそレイだよ♪」

「うん、そうよね。……これからどうなるかわからないんだし、こんなことでクヨクヨしててもしかたないのよね。……うん、わかった。わたし、これから渚くんとなかよくするようにがんばるから、サトシくんも、いとことしてわたしとこれからもなかよくしてよね」

「うん、もちろんだよ。これからもいとこ同士、仲良くやって行こうよ」

 無論、サトシもレイも自分達のこの言葉には無理がある事は充分承知している。事件を解決するためには「次元の通路」を塞がねばならない。そうなったらもう二度と会う事はないのだ。しかし、今の二人にとっては、この言葉は「救い」であり、「癒し」でもあった。

 元気を取り戻したレイは、改めて微笑むと、

「……うふふ、そう言えばさ、サトシくん、わたしよりおじさんになっちゃったのよね」

「あ、なんだよその言い方。せめて『お兄さん』ぐらいにしておいてくれよ」

「ううん、高校生なんだもの、『おじさん』よ♪」

「あ、言ったな。………ふふふ♪」

「うふふふふ♪………。でも、かんがえてみたらふしぎよね。シンちゃんはアスカとなかよくなったでしょ。サトシくんはアキコちゃんとなかよくなったのよね。……これもなにかの『縁』なのかな………」

「ちょっと待てよ。じゃ、リョウコと草野がいい仲になって、レイと渚君が仲良くなった、って事はさ、草野は渚君の『異次元の双子』、って訳か? 似てないと思うんだけどな」

「どうかしらね。………うふふ♪」

「中之島博士に頼んで調べてもらう、って訳にもいかないしな。……ふふふ♪」

 二人が顔を見合わせて微笑んだ時、

「あっ! そう言えば!」

 レイの心に閃く物があった。

「どうしたの?」

「今思い出したの。わたし、使徒にのみこまれた時、最初はすごくこわかったんだけど、一瞬気が遠くなったあと、なんだかへんに安心できる、なつかしい場所に来たような気がしたわ。考えてみたら、その時思った感じ、……サトシくんと会った『あの場所』で思った感じににていたわ」

「えっ!? そうなのか!?」

「そうよ。たしかにそうだわ。それで、渚くんにも、ここは使徒の中じゃないかも知れない、前に来たことがある場所のような気がする、って言ったのよ。もしかしたら、その時のわたしの心は、サトシくんと出会ったあの時の心とにていたのかも……。そうよ! それにまちがいないわ!」

「そうか! だとしたら、レイとリョウコは基本的に同じカルマを持っているんだから、リョウコに感じた胸騒ぎと同じ胸騒ぎをレイに感じても不思議じゃない! やっぱりそうだったのか!」

「でも、それが正しいとして、サトシくんがリョウコに胸騒ぎを感じた時、って、リョウコになにかあったの?」

「その時さ、リョウコが乗っていたヤキシャが、サイコバリヤーの実験に失敗して飛行中にバランスを崩したんだよ。それで心配になったんだ」

「そうだったの」

「そうだよ。それにさ、その時はリョウコと別れてすぐの時だったんだ。だから僕もリョウコの事を全然気にしていなかった、って言えばウソになるよ。でも、考えてみたら皮肉なものだけどさ、その時の胸騒ぎがあったから、こうしてまたレイに会えた、って事になるね。……これもおかしな縁だけどさ……」

「そうか……。かんがえてみたら、そうなのよね……」

 しばし二人は「縁」と言う物の不思議さに思いを馳せていた。その時、

「あら、沢田さんと綾波さんじゃありませんこと?」

「あっ! 綾小路さん! 形代!」
「あっ、どうもこんばんわ……」

 二人が振り向くとそこにいるのはゆかりとアキコである。

「あ、沢田くん、わたしをさしおいてレイちゃんとデートしとるん? うふふ」

「ち、違うよ! そんなんじゃないって!」

「違うんです。実は……」

 レイとサトシは「胸騒ぎ」の話から始めて、今二人で話し合っていた事を説明した。しかしながら無論の事、流石に、「暗黒の次元」での「二人の思い出」の事は話せなかったのであるが……。

「そうでしたの。それは重要な情報ですわ。きっと今後の私たちの戦いにも役立ちますわよ。でも、沢田さん、『胸騒ぎ』の件は、確か、私と相談して『ケリ』を付けた筈じゃありませんこと?」

と、苦笑するゆかりに、サトシは、何とも言えない顔で、

「あ、綾小路さあん……」

「ま、リョウコちゃんとレイちゃんに感じた『胸騒ぎ』の事となったら、さすがにわたしには言いにくいけんね。ねっ、沢田くん♪」

 アキコもニヤニヤしている。

「形代おー、そんな事言うなよ。……まいったな……」

 二人にからかわれ、サトシは苦笑するしかない。その時レイが口を開き、

「アキコちゃん、あっ、形代さん」

「あ、アキコでいいよ。なに?」

「じゃ、アキコちゃん。サトシくん、ちゃんとわたしに言ったわよ。今、アキコちゃんとなかよくしてる、って」

「あ、綾波い……」

「へえー、沢田くん、そんな事言うたん。……うふふ」

「あーあ、まいったな……。あはは……」

「おほほほほ、沢田さん、よかったですわね。綾波さんがちゃんとフォローして下さって。……でも、考えたら無理もありませんわね。だって、私たちの二つの世界の最初の接点となったのは、沢田さんと綾波さんなんですものね。おまけに、『カオス・コスモス』の時は、綾波さんは私たちの世界のために命がけで戦ってくれたのですもの。そう考えれば、お二人の再会はお二人にとって大切なものである事は間違いありませんわ。積もる話も沢山ありますでしょうしね……」

「綾小路さんにそう言っていただくと、わたしもうれしいです……」

 レイは微笑みながら改めてゆかりの顔を見た。すると、

「えっ?」

「あら、どうなされましたの?」

「い、いえ、……なんでもないんです。……さっきはバタバタしてましたから、そんなこと思わなかったんですけど、なんだか、綾小路さん、前にお会いしたような感じがして……」

「あら、私の『異次元の双子』も向こうの世界におりますのかしら。でしたら、是非会ってみたいものですわ。ほほほ」

 ゆかりは明るく笑う。その笑顔を見ながらレイは、

(………ナツミちゃんと感じがにてる………。髪型もおなじだし……)

 その時、サトシが思い出したように口を開き、

「あっ、ところで綾小路さんと形代はなんでここに?」

「たまたまですわ。せっかく沖縄まで来ましたから、夜空を見ておきたいと思って上がって来たんですのよ」

「わたしもそうなんよ。たまたま」

「あ、そうなの。……これも何かの『縁』なのかな……」

「そうかも知れませんわね。おほほほ」

 四人が顔を見合わせて笑った時、

「あら、みんな来てたの♪」

 振り返ると、リョウコがそこにいる。

「あ、リョウコちゃんも来たんね♪」

 アキコが明るい声を上げる。リョウコは微笑みながら近寄って来て、

「せっかく沖縄まで来たんだもの。やっぱり夜空を見なきゃね。……改めて、おひさしぶりね、レイ」

 レイも改めて微笑むと、

「ほんとにおひさしぶり。……リョウコはやっぱりちょっと大人になったわね」

「うふふ、もう高校生だもんね。レイはあの時のままだわ。……でもさ、そっちの世界とこっちの世界では、これだけ時間の流れが違うのね。前にその話は聞いて知ってたけど、実際にこうしてみると、やっぱりびっくりするわね……」

「うん、そうね……。でも、またリョウコに会えるなんて、思ってもいなかったわ………」

「わたしだってそうよ。でも、結局こうしてみると、あなたとわたしたちの接点は、やっぱりサトシくんだった、ってことね。……うふふ」

「そうね。……こうしてみると、わたしとサトシくん、やっぱり『縁』があるのかな。うふふ……」

「ああっ、二人とも何言ってんだよ………」

 またもやその話に持って行かれたサトシは少々焦る。それを見たリョウコはいたずらっぽく笑い、

「心配しなくてもいいわよ、サトシくん。別に責めてるわけじゃないんだから。………でもさ、こうしてみると、『縁』、ってものの不思議さを感じちゃうでしょ。それを言ってるだけ」

「そうそう、わたしもリョウコとおんなじよ。そう思ってるだけ……」

「あーあ、まいっちゃったな………」

 レイとリョウコ、「二人のいとこ」にからかわれ、サトシは苦笑するしかなかった。ゆかりとアキコも苦笑している。その時、

トゥルルル トゥルルル

 ゆかりは素早くスマートフォンを取り出すと、真剣な表情で、

「はい、綾小路です。沢田、形代、北原、綾波も同席しております。…………………はい、……………………はい、…………………………了解致しました!」

 ゆかりは通話を終えると四人の方を向き、告げた。

「私が今纏めて聞きましたので、あなた達四人には私から伝えるように、との指示を受けました。山之内部長から連絡です。全員作戦室に集合しろ、との事です!」

「はいっ!」
「はいっ!」
「はいっ!」
「はいっ!」

 続く



この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'アヴェ・マリア(カッチーニ) ' mixed by VIA MEDIA

二つの光 第五話・償い
二つの光 第七話・旅立ち
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