第四部・二つの光




 暗黒の次元。

「レイ!! 聞こえるか!? 聞こえたら返事しろ!! レイ!!」

『沢田さん! 慌ててはいけません! 今、周波数を探していますから、ちょっと落ち着きなさい!!』

 アカシャのコックピットに響くゆかりの声にサトシは我に返り、

「あ、……すみません……」

『見つかりましたわ!! 接続しますわよ!!』

 ゆかりの言葉が終わるか終わらないかの内に、スクリーンに新しいウィンドウが開いた。

「レイ!! ええええっ!! 渚カヲル!!??」

『サトシくん!!』

 ウィンドウに映った二人の人物の映像は、紛れもなく「綾波レイ」と「渚カヲル」だった。

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第三話・祈り

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 零号機のスクリーンには三つウィンドウが開き、それぞれのウィンドウに一人ずつの人物の姿が映っていた。二人はレイも見覚えのあるサトシとアキコであるが、無論の事、もう一人の人物は知らない。

 サトシは思わず、

『レイ! そいつは渚カヲルじゃないのか!? どう言う事なんだ!!』

「サトシくん! まって! おちついて! 今説明するから!!」

『説明、ったって! そいつは………』

 その時、ゆかりが割り込み、

『沢田さん!! 落ち着きなさいな!! 綾波さんが、説明する、っておっしゃってるでしょう!!』

『は、はい……』

 サトシが声を落とした後、ゆかりが、

『綾波レイさんですね。はじめまして。私は綾小路ゆかりと申します。このオクタへドロンⅡ・ヴァルナのパイロットです』

「あ、は、はい。はじめまして。綾波レイです……」

『何にせよ、まずは情報の交換が必要ですわ。こうして私たちがここで出会ったと言う事も、とんでもない事には違いありませんが、そこに「渚カヲル」さんと思しき方がいらっしゃると言う事は、私たちの安全に大きく関わる重大な問題です。説明をよろしくお願いいたします。もちろん、私たちの方の状況も合わせて説明させていただきますわ』

 ゆかりの言葉をカヲルは黙って聞いている。レイは続けて、

「はい。順番に話します。まず、この人はおっしゃる通り、渚カヲルさんです。でも、使徒じゃありません。どう言うことかと言いますと、……サトシくん、もう全部話してもいいわね」

『あ、ああ、話してくれ』

「まず最初にお聞きします。あやこうじさんは、わたしが前にそちらの世界に行ったことがあると言うことはごぞんじですね?」

『はい、存じておりますわ』

「それから後のことなんですけど、わたし、一度だけこんな『暗闇のような世界』でサトシくんに会っています。それもごぞんじですか?」

『ええ、伺いました』

「では、その時の話は省きます。渚さんは、わたしがサトシくんと会った後に、ドイツから日本にやって来ました。わたしたちが今所属しているIBOのチルドレンとして来たんです」

 サトシは漸く納得したように、

『そうか、そっちの世界は歴史が変わったんだよな。……確か、ネルフは組織が解体されてIBOに引き継がれた、って言ってたよね』

「そうなの。……それで、最初はわたしもびっくりしました。だけど、もちろんこの渚さんはわたしたちのことは知りませんでしたし、それから後にいろいろと調べて、使徒じゃなく、普通の人間の男の子だってことがわかりました。その後、わたしたちの世界は、しばらくは平和だったんですが、5日前の2月4日の夜、正確に言いますと、2月5日の午前2時ごろに、使徒が現れました」

 サトシとアキコは思わず、

『ええっ!! そっちにも使徒が出たのか!!』
『ええっ?!』

 一呼吸置いて、ゆかりが、

『やはり!』

 レイも驚き、

「!! じゃ、サトシくん! そっちにも!?」

『そうなんだ! 僕らの世界では、1ヶ月とちょっと前の5月17日に出たんだよ!! それで、また戦う事になったんだ!!』

 ここでゆかりが、

『沢田さん、日付の事は後で整理致しましょう。……それで、綾波さん、そちらも戦う事になったんですね』

「はい、そうです。実は、今回の使徒の出現には、シンジくんの父親、碇前司令が関わっていたんです」

『なんだって!!!』
『なんですって!!』
『なんじゃって!!』

「それだけじゃありません。祇園寺も私たちの世界にやって来たんです」

『えええっ!!!!!』
『まさか!!!』
『そんな!!!』

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 エンタープライズメインブリッジ。

 メインモニタに映る松下が、

『博士、どうでしょう?! 何か反応はありましたか!?』

 中之島も、声を荒げて、

「こっちにはまだ何もないわい! そっちはどうぢゃ!? フェイズ・スキャナに何か反応はないのか!?」

『今の所は何もありません!』

「とにかく続けるんぢゃ! 今はそれしかない! こっちもオモイカネⅡに同じ事をやらせ続けるだけぢゃ!!」

『了解!』

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 嘉手納基地発令室。

 カジマ司令から説明を受けたマサキが思わず身を乗り出す。

「えっ!? ちゅう事は、いよいよ決戦でっか!!?」

 カジマは頷き、

「そうだ。在日米軍総司令部と日本政府が協議して決断を下した。エンタープライズが持っている通信中継カプセルを全て低軌道に飛ばして通信回線を確保する。その上で、日本に残っている全ての戦力を結集して、大型使徒を叩く。その間に、JRLが中心となって細菌状の使徒イロウルに対抗する策を検討し、何とかこちらの勢力を挽回しようと言う作戦だ」

 大作も、真顔で、

「遠征するわけですか?」

「そうだ。エンタープライズに使徒の位置を確認させ、オクタへドロンを飛ばす。1体の使徒を全機で一斉に叩く戦術を採る。京都に残っている旧機も自動モードで飛ばす予定だ」

「では、つまり、行方不明の3機の捜索は……」

 大作の言葉の後、一呼吸置いて、カジマは、

「…後3時間以内に何の手がかりも発見されなかった場合、打ち切る事になった」

「!!」
「!!」
「!!」
「!!」
「!!」

 顔色を変えた五人に、カジマは、沈痛な声で、

「気の毒だがやむを得ん。現在使徒の位置を確認する事が出来るのはエンタープライズだけだ。使徒をこのまま放置する訳にはいかないからな……」

「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」

「実際の作戦行動が開始されるのは約6時間後の予定だ。君達はそれまでの間、鋭気を養っておいてくれ」

 マサキは、暗い顔で頷いた。

「……了解致しました」

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 暗黒の次元では、五人がお互いの世界の状況を説明し合っていたが、全員、唯々驚くだけだった。

 一通りの説明を終えたと考えたレイは、

「………と、言うわけです」

 ゆかりが頷き、

『なるほど。了解致しましたわ。………沢田さん、形代さん、ご得心なされましたか?』

 アキコとサトシも頷き、

『はい、了解しました』
『はい、わかりました。……レイ、どなったりしてごめんね……』

 レイは軽く首を振り、

「ううん、しかたないわよ。まさかこんなことになってるなんて、サトシくんも考えもしなかっただろうしね……。それに、まさかそっちの世界にも使徒が現れていたなんて……」

 アキコも、驚き顔で、

『それどころじゃないよ。そっちの世界には祇園寺が現れたんでしょう。それが元でこんな事になったなんて、ほんと、びっくりしたよ……』

 続いてサトシが、

『渚君、悪かったね。いきなり悪者扱いしたりして……』

 カヲルは首を振り、

「いや、それは当然だよ。前の事は、僕もさっき綾波さんからくわしく教えてもらったばかりだったしね……。でも、こうやって見ると、沢田君って、ほんとに碇君にそっくりだね。形代さんは惣流さんに瓜二つだし……」

 アキコが、やや照れ臭そうに、

『まあ、「異次元の双子」じゃけんね……』

 ここで、ゆかりが、

『とにかく、なんとかここから脱出する方法を考えないとだめですわ。それで、その話に戻りますけど、綾波さん、たしかあなた達は、使徒の「ディラックの海」に飲み込まれてしまった、そこでマントラを唱えたら、ここに来た、と言う事でしたわね』

「はい、そうです」

『沢田さん、これをどう解釈しましょう。まず、あなたはマントラを聞いたらこに来た。そして私と形代さんがマントラを唱えたらここに来た。そして、私たち三人がマントラを唱えて、たまたま綾波さんたちもマントラを唱えていたら、ここにやって来た、と言う事ですわね』

『レイ、確か、唱えたマントラは「オーム・アヴァラハカッ」だったんだな』

「ええ、そうよ。わたしたちはそれしか知らなかったし……」

『そうか! で、手はどう組んでいた?』

「普通に組んでいたわ」

『やっぱりそうか……。綾小路さん、今までの状況から考えると、僕らが「アヴァラハカッ」だけを唱えたから、レイと渚君を引き寄せた、と考えられますね』

『恐らくそう言う事で間違いないでしょうね』

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 その時、アキコが、

「今ふっと思ったんじゃけんど、そもそも、レイちゃんと渚さんは使徒に飲み込まれてここに来たんでしょ。とにかくまずそこから順に時系列を追っかけてみたらどうじゃろか」

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 それを聞いたゆかりが頷き、

「確かにそれは重大ですわ。一連の流れを正確に追ってみましょう。…綾波さん」

『はい』

「現時点を基準とします。あなた達が使徒に飲み込まれたのは、今からどれだけの時間を遡った時点ですか? 正確に教えて下さい」

『はい、分かりました』

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 レイはコンソールを操作し、

「先程ご指示戴いた時点を基準として、3時間57分22秒前です」

『えっ?!』
『えっ?!』
『えっ?!』

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 サトシ達三人は驚き、一瞬絶句したが、すぐにゆかりが、

「沢田さん! あなたも正確に言って下さい! あなたがマントラを感じてここに来たのは、さっき私が設定した時刻を基準として、どれだけ前でしたか?!」

『は、はい! ……ああっ! 3時間57分20秒前ですっ!!』

「ええっ!?」
『ええっ!?』
『ええっ?!』
『ええっ?!』

「2秒差! これは無関係とは言えませんわよ!!」

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 ここでアキコが、

「綾小路さん! それで、わたしたちがここに来たのは51分8秒前ですよっ!?」

『その通りですわ! それで、43分12秒前に三人でマントラを唱えたんです! 綾波さん! あなた達がマントラを唱えたのはいつですかっ!?』

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「43分10秒前ですっ!」

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 それを聞いたゆかりが、

「これも2秒差! これはもうまず間違いありませんわ!! 綾波さんたちは『オーム』を付けてマントラを唱えたので、こちらに引き寄せられたんですわっ!」

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 ここでサトシが、

「じゃ、綾小路さん! もしその推定が正しいとすると、『オーム』なしでマントラを唱えても、ここに居続けるだけで帰れない、と言う事になりませんか!?」

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「恐らくそうですわ。これはもう一度考え直す必要がありそうですわよ」

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 ゆかりの言葉に全員が沈黙したが、ややあってサトシがつぶやくように、

「うーん、『オーム』を付けると能動的と言うか大日如来への働きかけになって、『オーム』を付けなかったら大日如来と一体化した状態か……。なら、一体化が終わって元の状態に帰る、と言うような場合はどうしたら……」

『えっ!? ……一体化が終わって、元の状態に帰る……』

「綾小路さん、どうしました?」

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「いやそれが、沢田さんの今のご指摘で何かを思い出しそうな、と申しますか……、何か忘れている事があったような……、ああああっ!!!」

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「あ、綾小路さんっ!! なにか分かったんですかっ!?」

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「分かりましたわっ!! 『オンアビラウンケンソワカ』ですっ!!」

『ええっ?!』
『ええっ?!』
『ええっ?!』
『ええっ?!』

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「綾小路さんっ! そ、それってどう言うことなんですっ!?」

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 驚くサトシにゆかりは、

「沢田さん! 形代さん! 私と一緒に清水寺に行った時、御本尊の千手観音様にお参りしたでしょう! あの時の事を覚えてますかっ!?」

と、叫んだゆかりに、サトシとアキコは、

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「えっ!? は、はいっ! 覚えてますっ!」
『おぼえとりますっ!』

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「あの時私が、マントラを二つ説明しましたねっ! 覚えてますかっ!?」

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「えっ! 二つ!? …え、ええと…」

と、ややドギマギするサトシを尻目に、アキコは、

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「はいっ! 覚えとりますっ! オンバザラダラマキリクとオンバザラダラマキリクソワカの二つじゃったと思いますっ!」

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「形代さんっ! その通りですわっ! その二つの違いは分かりますわよねっ! 最後に『ソワカ』が付いているかいないかの違いですわっ!」

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「はいっ! わかりますっ! でもその違いはなんです……、あっ! もしかしてっ、『ソワカ』は締めくくりの言葉、とかじゃ……」

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「ご明察ですっ! 『ソワカ』と言うのは日本に来てなまった言葉で、元のサンスクリット語に近い発音をすれば『スヴァーハ』です! 『成就した』とか『かくあれかし』と言う意味で、キリスト教の『アーメン』と同じような意味合いを持っています! 理由はよく分かりませんが、マントラを唱える時、『オン』を付けたり付けなかったりするのと同じように、同じマントラに『ソワカ』を付けて唱えたり付けずに唱えたりするのです! 『アビラウンケン』でも、『オンアビラウケンソワカ』と唱えることもあるのです! そして、『オン』を付けずに『アビラウンケンソワカ』と唱える事もあるのですわっ!」

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 これを聞いたサトシは、

「ああっ! そうかっ! 元々僕らは大日如来と一体化するための修行としてマントラを習ったから、『一体化を終了させて元に戻る』と言う意味合いのマントラはわざわざ習わなかったと言うことなのかっ!」

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「沢田さん! その通りですわっ! 普段、訓練を開始する時にはわざわざ『成就した』と言う完了形の言葉を付ける必要はありませんから、『オーム・アヴァラハカッ』で良かったのです! ですが、今の状態から元に戻ろうとするならば、『スヴァーハ』が必要なのではありませんかっ!? つまり、『アヴァラハカッ・スヴァーハ』ですわっ!」

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「分かりましたっ! 『アヴァラハカッ・スヴァーハ』と唱えましょう! 形代! 分かったかっ!?」

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「うん! もちろん分かっとるよっ!」

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 ここでゆかりが、

「あっ! そうですわっ! 手の組み方も整理しましょう! 『オーム』を付けた時は手を組んで祈り、さっき私たち三人が『オーム』を付けなかった時は法界定印でした! これはつまり、『アヴゥラハカッ』だけの時は大日如来と一体化した状態ですから法界定印、『オーム』を付けた場合は自分からの働きかけがあるから手を組んだ外縛印、と言うことで、論理的に筋が通ってますわっ!」

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 アキコも声のトーンを高めて、

「そうです! わたしも自分から気持ちを強く込めて祈る時は、自然に手を組んで祈っとりますっ!」

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 ゆかりは更に、

「ですから今回は、働きかけ、と言うことで、手を組んで祈れば良いわけです! これで行きましょう! 綾波さん! 渚さん!」

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「はいっ!」
「はいっ!」

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「聞いて戴けましたかっ!? 理論的にはまだお分かり戴けないかも知れませんが、それは後で詳しく説明します! 今は取り敢えず私達と一緒になって、手を普通に組み、『アヴァラハカッ・スヴァーハ』と唱え、その後マントラを心で見て聞くようにして下さいっ!」

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「分かりましたっ!」
「分かりましたっ!」

 +  +  +  +  +

「ありがとうございますっ! 但し、ここで一つ、綾波さんと渚さんに申し上げておかねばならない事があります! それは、もしここから脱出できたとしても、取り敢えずは私達の世界に戻る可能性が高いと言う事です。それはご理解いただけますね!」

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 それを聞いたレイは、

「もちろんです! 今までの流れから考えれば、今わたしたちがいる場所は、おそらくそちらの世界との出入り口付近だろうと想像できます! そちらの世界へ行って私達の世界の状態を説明し、協力をお願いするのが一番いいと思います! 渚くん、それでいいわね!?」

「うん、もちろんだよ!」

 +  +  +  +  +

「分かりました! では始めましょう! 手を組み、私の合図で『アヴァラハカッ・スヴァーハ』と唱え、その後マントラの波動を心で感じ取って下さい! よろしいですか?!

 ……はいっ!! アヴァラハカッ! スヴァーハ!」

 +  +  +  +  +

「アヴァラハカッ! スヴァーハ!」

 +  +  +  +  +

「アヴァラハカッ! スヴァーハ!」

 +  +  +  +  +

「アヴァラハカッ! スヴァーハ!」
「アヴァラハカッ! スヴァーハ!」

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 +  +  +  +  +

 JRL本部中央制御室。

 松下が、暗い面持ちで、

「………捜索打ち切りまで後30分か………」

 由美子も、沈痛な顔で、

「……やむを得ませんね。……このまま使徒を放置する訳には行きませんからね……」

「由美子君、すまんが、山上君と協力して、旧オクタ3機を自動モードで出撃させるための準備を整えておいてくれ」

「了解しました。随伴のために私が沖縄までカプセルで飛びます」

「大丈夫か?」

「こんな時に、ここにじっとしている訳には参りません」

「そうか。……わかった。頼んだぞ」

「はい」

 その時だった。突然末川真由美が顔色を変え、

「!!!! 本部長! フェイズ・スキャナに反応がありましたっ!!」

「なにっ!!!」
「なんですってっ!!」

 松下と由美子がまさに全力疾走で真由美の所に駆け寄る。

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 エンタープライズメインブリッジ。

 中之島も顔色を変えた。

「んっ!! 何ぢゃこれはっ!!??」

 松下の声が飛び込む。

『博士!! フェイズ・スキャナに反応が出ました!!』

「こっちも出たぞ!! この波形は……!! マントラぢゃ!! マントラの波形ぢゃ!!」

 ライカーも、驚愕と歓喜の余り、

「オオ!! ドゥーイット!! ドクター中之島! ついにやりましたねえっ!!」

 +  +  +  +  +

 真由美が、興奮を抑えきれない様子で、

「明らかにマントラの波形ですっ!! ……これは、……『アヴァラハカッ』ですっ!!!」

 由美子が叫ぶ。

「あの子達だわ!!!!」

 松下も大声で、

「末川君!! こっちのスキャンの波形をそれに合わせろ!! 出力は最大限にするんだ!!」

「了解!!」

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 その時、中之島がオモイカネⅡのモニタに表示されたメッセージを見て、

「何っ!? これはっ! 『アヴァラハカッ・スヴァーハ』ぢゃとっ!?」

 +  +  +  +  +

………)

 +  +  +  +  +

………)

 +  +  +  +  +

………)

 +  +  +  +  +

………)
………)

 +  +  +  +  +

 中之島も、声を震わせ、

「落ち着け!! 落ち着くんぢゃぞ!! ……おおっ! これは!! 5番目のCPUが動作しておるぞっ!!!」

 +  +  +  +  +
 +  +  +  +  +

「ああああああああっ!!!」

 +  +  +  +  +

「ああああああああっ!!!」

 +  +  +  +  +

「ああああああああっ!!!」

 +  +  +  +  +

「ああああああああっ!!!」
「ああああああああっ!!!」

 五人の脳裏に同時に極めて強い青い光が閃いた。

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 +  +  +  +  +

「ウワアアアアアアアアッ!!!」

 その時、エンタープライズのメインビューワーが強烈に光った。ブリッジにライカー艦長の叫び声が響き渡る。一瞬の後、恐る恐る眼を開いたライカーはまたもや叫んだ。

「ドクター中之島! メインビューワーを! あれはオクタヘドロンねっ!!」

「やったぞ!! 回収に成功したかっ!!! うむっ!? 何いいっ!! 4機おるぞっ!!?? ああっ!! あれはエヴァぢゃっ!!!」

「オーッ!! インクレディブォー!!」

 メインビューワーに映った4機の人型の物体は、紛れもなく、アカシャ、アグニ、ヴァルナ、そして、エヴァンゲリオン零号機だった。

 +  +  +  +  +

 JRL中央制御室にも松下と由美子の叫び声が響き渡る。

「エヴァ零号機だっ!!!」
「まさかっ!!!」

 メインモニタの映像にスタッフ全員が釘付けになっていた。

 続く



この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'祈り(Ver.4b) ' composed by VIA MEDIA

二つの光 第二話・決心
二つの光 第四話・怨み
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