第三部・トップはオレだ!



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第十二話・虎視眈々

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「新世紀エヴァンゲリオン Another Case」

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(授業終了)

「キーンコーンカーンコーン」

ヒカリ「起立! 礼! 着席!」

(解放感の広がるクラス。帰り支度をするカヲルを横目で見るアスカ。そこへやって来たシンジ)

シンジ「アスカ、帰ろうか」

アスカ「う、うん……」

(帰り支度をするアスカ。それをちらりと見て薄笑いを浮かべるカヲル)

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(マンションに帰って来たシンジとアスカ)

アスカ「じゃ、あたし、きがえるから……」

シンジ「え? う、うん……」

(何となくよそよそしい態度で部屋に入るアスカを訝しげに見るシンジ)

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(自室で着替えを済ませたアスカ)

アスカ(あたし、どうしたのかな……。なんだか、あの人のことばかり考えてる……)

(カバンを開けて中を見たアスカ)

アスカ「!!……」

(カバンの中から一枚のメモが。驚くアスカ)

「渚カヲル 090−****−####」

(しばし無言でメモを見るアスカ)

アスカ「…………」

(やがて意を決したようにスマートフォンとカギを持って自室を出るアスカ。リビングを見回し、シンジがいない事を確認するとそっとマンションを出る)

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(マンション前の道路で電話をかけるアスカ)

アスカ「もしもし……」

カヲル『やあ、待ってたよ』

アスカ「どうしてあんなことしたの。めいわくだからやめてよ」

カヲル『そうかな、じゃ、なんで君のスマートフォンの番号をわざわざ教えてくれたんだい』

アスカ「えっ?」

(はっとするアスカ、番号通知モードのままかけていた事に気付く)

カヲル『僕に君のプライバシーを教えてくれたのは、君の潜在願望なんじゃないのかな』

アスカ「バカなこと言わないでよ! うっかりしてただけよ!」

カヲル『それが君の本心だって事、認めないのかい』

アスカ「バカにしないで! 切るわよ! もうこんな事しないでよ!」

(電話を切った後、自己嫌悪で落ち込むアスカ)

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(マンションに帰って来たアスカ。リビングにはシンジが)

シンジ「あれ、どうしたの。買い物?」

アスカ「うっさいわねっ!! アタシがどこ行こうとかってでしょっ!!」

シンジ「!!??……」

(怒って自室に飛び込むアスカを呆然と見るだけのシンジ)

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(自室のベッドの上にうつぶせで寝転ぶアスカ)

トゥルルル トゥルルル トゥルルル

(スマートフォンの着信音にはっとしたアスカ。ベッドから起き上がり、おそるおそる電話に手を伸ばす)

アスカ「……もしもし……」

カヲル『やあ、君の声を聞けてうれしいよ』

アスカ「!!!!」

(慌てて電話を切り、電源を落とす)

アスカ「…………」

(再び無言でベッドの上にうつぶせになるアスカ)

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(翌日、ネルフ本部でのシンクロテスト。リツコは姿を見せていない)

ミサト「アスカの成績が悪いわねえ……」

マヤ「起動可能ギリギリの数値です」

ミサト「ところで、リツコはどうしたの?」

マヤ「先輩、いえ、赤木博士からは、体調不良でしばらく休む、との連絡が入っています」

ミサト「そう……」(リツコ、なにかたくらんでいるわね。盗聴器に充分注意しておかないと……)

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(テストプラグの中。雑念が払えないアスカ。シンジの事、カヲルの事、幼少期の嫌な思い出、先日の使徒ゼルエルとの戦闘の際の恐怖、等が蘇って来る)

アスカ(……どうして、こんなことばかり頭にうかんでくるのよ……)

ミサト『アスカ、どうしたの? 気持ちが乱れてるわよ』

アスカ「わかってる! ちゃんとやってるわよ!」

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(更衣室でイラつくアスカ。無関心なレイ)

レイ「……じゃ、お先に……」

アスカ「さよなら……」

(レイが去った後の更衣室でテーブルに肘を突き、組んだ手を額に当てて悩むアスカ)

アスカ(ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう……)

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(本部出口でアスカを待つシンジ)

シンジ「アスカ、おそいな……。どうしたんだろ……」

(シンジ、時計をちらりとみる。もう19:00を過ぎている)

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(その頃アスカは別の出口から外へ出ていた。あてもなく街をさまよい、いつしか、夜の公園に辿り着く。ベンチに一人腰を下ろし、手を組んで俯いている)

アスカ(あたし、ほんとにどうしたんだろ……。あいつにであってから、おかしくなってる……)

不良A「彼女、どうしたの。よかったら俺達と遊ばないかい」

(はっとして顔を上げるアスカ、そこには如何にも不良と思しき少年が二人。ニヤニヤしながらアスカを見下ろしている)

アスカ「なによあんたたち、ほっといてよ!!」

不良B「おーおー、これはごあいさつだねえ。……おい、ちょっと楽しませてやろうぜ」

不良A「いいねえ」

アスカ「な、なによ!」

(不良Bはいきなりアスカの右手を掴んで連れて行こうとする。見ると、公園の前の道に改造車が止まっている)

アスカ「やめてよ!! 人をよぶわよ!!」

不良A「いくらでもよべよ。きてくれるなら、だけどな」

不良B「おとなしくした方が身のためだぜ」

声「僕のガールフレンドに何か用かな」

(思わず三人は声の方を見る。そこには微笑を浮かべた渚カヲルの姿が)

不良A「なんだキサマ」

アスカ「!!! 渚さん!」

カヲル「デートの時間にちょっと遅れたんだけど、その間お相手してくれてありがとう。さて、これで君達の用事も終わりだね」

不良A「テメエ!! このやろう!!」

(いきなりカヲルに殴りかかる不良A、しかしカヲルはひょいと身を躱し、足払いをかける。顔面から転ぶ不良A)

不良A「うわっ!!」

(すかさずカヲルは不良Aの脇腹をつま先で鋭く蹴り付ける)

不良A「ぎゃああああああああっ!!!」

(激痛にあえぐ不良A。立ち上がれない)

不良B「テメエっ!!!」

(アスカを放してカヲルに掴みかかろうとする不良B。しかしカヲルは寸前で身を躱し不良Bの手首を掴んで腕を逆に取る)

不良B「ぎゃああっ!! いててててっ!!!」

(手首の関節を極められて悲鳴を上げる不良B。そのままカヲルは不良Bの背後に回って首に腕を回して締め上げる)

不良B「うぐぐぐぐっ!!」

(喉を締められて5秒もしない内に意識を半分失う不良B。カヲルは手を放す。崩れ落ちる不良B。すっかり戦意喪失して地面にへたり込む二人を見下ろしながら笑うカヲル)

カヲル「僕の用事も済んだから、このへんでお開きにしないかい」

不良A「く、くそっ……。おぼえてやがれ……」

不良B「キサマ、……今度会ったら殺してやる……」

(不良二人はそう言いながらよろよろと立ち上がって車の方に去って行く。やがて激しい爆音を立てて車が急発進して行く)

カヲル「大丈夫かい?」

(呆然と立ち尽くすアスカの方を見て微笑むカヲル)

アスカ「えっ?! ええ……、だいじょうぶよ……。たすけてくれてありがとう……」

カヲル「いけないね。こんな時間に女の子一人でこんな所に来るなんてさ」

アスカ「…………」

カヲル「じゃ、帰ろうか。送ってくよ」

アスカ「……あたし、かえりたくない……」

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(本部出口でスマートフォンから電話をかけるシンジ)

シンジ「えっ!? アスカいないんですか?!」

ミサト『記録では他の出口から出たわよ。もう帰ってるんじゃない?』

シンジ「そうですか、どうも……」

(電話を切った後、暫く呆然としているシンジ、やがて早足で歩き出す)

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(公園でのアスカとカヲル)

カヲル「……いけないね。そんなこと言っちゃ。……帰ろう」

アスカ「……あたし、かえりたくない!!」

(いきなりカヲルに抱き付くアスカ。アスカの背中に手を回して抱き寄せるカヲル。アスカがそっと顔を上げてカヲルの顔を見ると、驚いた事にカヲルの眼が怪しく光る)

アスカ「!!!!!!!……」

(カヲルの眼の光を見た途端に、ヘビに睨まれたカエルの如く硬直して動けなくなったアスカ。カヲルの顔が段々アスカの顔に迫って来る)

アスカ(えっ? ええっ!!)

(言葉が出ないアスカ。カヲルの唇がアスカの唇に重なる)

アスカ(!!!!!……。えっ!? いやっ!! いやああああっ!! やめて!! あたしの中に入ってこないで!!)

(アスカの意識の中にカヲルの意識が入り込んで来る)

アスカ(ええっ! あなた、使徒なのっ!! やめてっ! いやあああっ!)

(♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪ ♪♪……)

(身動き出来ないアスカの心を侵すカヲル。アスカの脳裏に「歓喜の歌」が流れる)

 アスカ(やめてえええっ!!……)

(気を失って崩れ落ちるアスカ。それを見たカヲルはほくそえみながら公園の公衆電話の所に行く)

カヲル「……もしもし、警察ですか。三丁目の公園で人が倒れています……」

警察『貴方のお名前は? もしもし、もしもーし……』

(警察からの言葉を無視して電話を切るカヲル)

カヲル「歌はいいねえ。リリンの生み出した文化の極みだよ。……そう思わないかい? セカンドチルドレン。……ふんふんふんふん♪ ふんふんふんふん♪ ふんふんふんふん♪ ふーんふふん♪……」

(「歓喜の歌」をハミングしながら去るカヲル)

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アスカ(う、うーん……。あたし、どうしたの……。はっ!!)

(アスカは病院のベッドで意識を取り戻した。もう朝である。部屋にはシンジがいる。アスカが意識を取り戻したのを見て、シンジは慌ててそばに来た)

シンジ「あっ! アスカ! だいじょうぶ? 気がついた?」

アスカ「……シンジ? ……あたし、どうしたの?……」

シンジ「警察から連絡があったんだ。アスカが公園で倒れてて、病院にかつぎこまれた、って。……なにがあったの?」

アスカ「……そういえば、公園で不良にからまれて……、それからあとのことは、おぼえてないわ……」

シンジ「そう。……でも、お医者さんの話では、ケガはない、って……。とにかく無事でよかった……。きのうさ、本部の出口で待ってたんだけど、アスカが先に別の出口から帰っちゃった、って、ミサトさんから聞いて、心配してたんだ……」

アスカ「…………ごめんね、シンジ……」

「ウーウーウーウー」

(突然鳴り響くサイレン)

放送『本日午前8時05分、東海地方を中心とした関東中部全域に、特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は、直ちに所定のシェルターに避難して下さい。繰り返します。本日午前8時05分、…………』

シンジ「!!! 使徒!?」アスカ「!!!!」

トゥルルル トゥルルル トゥルルル

(シンジのスマートフォンが鳴り響く)

シンジ「はいっ! シンジですっ!!」

ミサト『シンジ君!! 敵が来たわっ!! すぐ本部に来てっ!!』

シンジ「はいっ!!」

アスカ「シンジ! 使徒なのっ!?」

シンジ「そうらしいよ! 僕は本部に行くから、アスカは避難してて!」

アスカ「なに言ってんのよ! あたしも行くわ!」

シンジ「でも、だいじょうぶ!?」

アスカ「だいじょうぶよ! すぐにきがえるから、シンジは廊下で待ってて!」

シンジ「わかった!」

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(カヲルのマンション。白い子猫を抱いたまま窓から外を見るカヲル)

カヲル「……さあ、一緒に行こう。……約束の日が来たよ」

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「新世紀エヴァンゲリオン Another Case」

第弐拾壱話終わり。最終話に続く。

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「ここまでが弐拾壱話ですわ。次はいよいよ最終話ですわよ」

と、ゆかりが言ったのへ、サトシとアキコは、

「うーん、ちょっと続きが気になりますよ。結末はどうなるんだろ」

「そうじゃねえ。どうなるんじゃろ」

「では、最終話に参りますわ」

 続く



この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'IN THEME PARK ' composed by Aoi Ryu (tetsu25@indigo.plala.or.jp)

トップはオレだ! 第十一話・魑魅魍魎
トップはオレだ! 第十三話・自業自得
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