第四部・二つの光




「ターミナルドグマにリツコがいるんです!!! 間違いありません!!! 行かせて下さい!!!」

 血相を変えて叫ぶミサトに、中央制御室のスタッフ全員は呆気に取られるだけだった。

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第二十話・連想

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「しかし、葛城君…」

「本部長!! 行かせて下さい!!」

 ミサトの剣幕の余りの凄さに、五大は一瞬言葉をなくしたが、すぐにマヤの方を向き、

「伊吹君!! センサー信号そのものを分析してみろ!!」

「はいっ、分析します! …………異状は何も……」

 しかしミサトはすかさず、

「リツコならセンサーに細工するぐらい朝飯前よ!! そんな分析なんか無意味だわ!!」

「えっ!? ……は、はあ……」

 鬼とも見まごうミサトの表情にマヤは思わず震えた。それを見た五大は、やむを得ないと言う表情で中河原の方を向き、

「中河原、お前はどう思う? 透視出来るか?」

 しかし、中河原は、

「うーむ、……私には何も見えん。ここの地下に敵の霊気があるとも思えんがなあ……」

 その時、

「待て」

 低いが力強い言葉を発したのは持明院だった。全員の眼が集まる。

「今、改めて神経を集中してみた。かすかにだが、腐った生ゴミの臭いを感じる」

「ええっ!!??」
「ええっ!!??」

 五大と中河原が息を飲む。持明院は続けて、

「連中もここに忍び込むぐらいなら気配は断っているだろう。透視をごまかすぐらいの事はやってのけても不思議ではあるまい。しかし、そっちに気を取られ過ぎたためか、『臭い』まで完全には消し切れてなかったようだ」

「…………」
「…………」

「お前達は『見る』と言う事に拘り過ぎたようだ。『臭い』を嗅ぎ取れと言っておいた筈だがな」

「!………」
「!………」

 返す言葉のない二人を尻目に、持明院は、中之島に向かって、

「中之島博士、あなたもオカルティストだったな。御意見を伺いたい」

 中之島は椅子からゆっくり立ち上がると、

「率直に言おう。儂には何とも断言は出来ん。残念ながらこの件に関しては儂も特に何も感じないのぢゃ。……しかし」

「しかし?」

「しかし、今の葛城君には、何か特別なオーラのようなものを感じる。地下の様子に関しては情報がなさ過ぎて何とも言えんが、今の葛城君の眼の色は本物ぢゃ。儂ならそれに賭けるがの。つまり、間接的な透視と言う事ぢゃ」

 それを聞いた持明院はゆっくりと頷くと、

「決まりだな。……五大、ターミナルドグマを調査すべきだ。私も同行する」

「元締!!」

と、五大が思わず叫んだ時、

「俺も行きますよ」

 全員の視線が声の方に集中する。その先にいたのはバッグを手にした加持だった。

「加持君! いつの間に来てたの!?」

 ミサトの言葉に加持はニヤリと笑い、

「さっき葛城が大声を上げた時にちょうど戻って来てたのさ。それで、これが必要になるだろうと思ってな、取って来たぜ」

と、言いつつ、バッグのファスナーを開いた。

「これ!! レーザーガンと麻酔銃じゃないの!!」

「ああ、あの時のやつだ。2組あるからちょうどいいだろ」

「加持君、ちょっと儂に見せてくれ」

 中之島が興味深そうに眼を光らせながら割り込んで来た。

「あ、どうぞ」

「すまんのう。……ふーむ、ふむふむ……」

 中之島は加持から手渡されたレーザーガンの電源部を調べ、

「ほう、単一4個で外付けか。なら、これが使えるな」

と、呟きながら、白衣のポケットから単一型乾電池のような物を取り出した。

「博士、それは電池ですか?」

 ミサトの言葉に中之島は顔を上げ、

「超小型反重力電池ぢゃよ。中に入っておるのは単四型でな。アダプター付きぢゃから、色々なサイズの電池の代わりに使えるのぢゃ。……その前に……」

と、言いながら、これまたポケットからケーブルを取り出し、オモイカネⅡと反重力電池をS−USBで接続すると、

「波形は、と……、うむ、これで良かろう。これでこいつはマントラレーザーガンになるぞよ」

「えっ!? そんな事ができるんですか?!」

 流石のミサトも眼を丸くした。中之島は反重力電池をレーザーガンにセットしながらニヤリと笑い、

「ああ、電源の出力そのものをマントラの波形に合わしたからの。出力も大幅にアップしておるぞ。敵のATフィールドやサイコバリヤーに対抗するためにはそれぐらいしておかんとのう。…それとの、葛城君」

「はい」

「これは儂のスピン波通信機ぢゃ。スキャナも付いている。これを持って行け」

と、言いながら、中之島は腕に着けていた通信機を外してミサトに手渡した。

「有り難うございます」

「警報はバイブレータに設定してあるから音は出ん。振動を感じたら、ディスプレイのメッセージを確認してから黄色の警報停止ボタンを押せ。通信機として使う時は赤のボタンぢゃ」

「はい」

「同時に敵の攻撃力と防御力も0から127までの数値で表示される。今改造したレーザーガンは、敵の防御力が110までなら楽に破れるからの。注意して使え」

「了解しました」

「それから、持明院殿」

「うむ」

「これは儂のマントラレーザーガンぢゃ。お主に預けておこう」

「うむ、確かに預からせて戴いた。恩に着る。使い方は、……成程、レーザーポインタと同じだな」

「その通りぢゃ。そいつはペンライト型で小さいが、攻撃力はさっきの物と同等ぢゃ。…幸運を祈るぞよ」

「かたじけない」

「では本部長、行かせて戴きます。エヴァとオクタヘドロンの指揮をよろしくお願い致します」

 ミサトは完全に吹っ切れた顔をしている。それを見た五大は頷いて、

「わかった。後は任せておけ。……葛城君」

「はい」

「気をつけてな」

「ありがとうございます」

 ミサトはそう言うと、振り返って中央を出て行った。

「持明院さん。我々も行きましょう」

「うむ」

 加持と持明院もミサトに続く。

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 JRL本部中央制御室。

「山之内君! 岩城君! 分析の方はどうなってる!?」

 松下の怒鳴り声が響き渡る。山之内が振り返り、

「思わしくありません。一応の結果は出ていますが、どうして戦闘機のサイコバルカンでは分裂せず、エンタープライズの攻撃でのみ分裂したのかは不明です。その部分に関して集中的に再分析していますが、期待は薄そうですね」

 岩城も、明るくない顔で、

「こっちの分析でも似たようなものですね。何故このようになったのかが判りません。マントラレーザーもサイコバルカンも基本的には同じもので同じように攻撃しているのに、としか言いようがありません」

「ううむ……。末川君、使徒の様子はどうだ?」

 真由美がモニタを見たまま、

「芦ノ湖付近を徘徊していますが、相変わらず何かをやろうとするような傾向は窺えません。『そこにただいる』だけです」

「エネルギー反応はどうだ? S2機関が暴走する気配はないか?」

「今のところありません」

「そうか。……とにかく分析を続けよう。今はそれしかない」

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 思いもよらず使徒攻撃の主役となった米軍と自衛隊の戦闘機は全力で作戦を展開していた。

バスウウウウッ!!

「グワアアアアッ!!」

バスウウウウッ!!

「グワアアアアッ!!」

 幾らサイコバルカンを打ち込んでも使徒は爆発しない。しかし、それゆえか、使徒にとっても決定的なダメージとはならない。

バスウウウウッ!!


「グワアアアアッ!!」

バスウウウウッ!!


「グワアアアアッ!!」

 最初こそ使徒のスピードを落とす効果があったものの、段々それも飽和状態に近付いて来たらしく、極めてゆっくりではあるが、使徒は芦ノ湖へと着実に歩を進めていた。

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「うおおおおおっ!! 行ったれえええっ!!」

 マサキが叫びながら空中を浮遊する黄色のサハクィエルにレーザー攻撃を仕掛ける。

ブシュウウウウウウウウッ!!!!

「もう一丁や!!」

ブシュウウウウウウウウッ!!!!

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 エンタープライズメインブリッジ。鋭い目つきでモニタを見ながらライカーが怒鳴る。

「レーザー発射!!」

「白イラミエルニ命中!! エネルギー反応5%低下!!」

 コンソールを操作しているオペレータが負けずに叫び返した。別のオペレータも同じように叫ぶ。

「黄色イラミエルニ高エネルギー反応!!」

「回避セヨ!!」

「了解!!」

 ライカーの叫びにパイロットが呼応する。

ズウウウウウンンッ!!

「ビームガサイコバリヤーニ接触!! 船体ニハ異状アリマセン!!」

「攻撃ヲ継続シロ!!」

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 ターミナルドグマに向かうべく乗り込んだエレベータの中、ミサト達三人は無言で階数表示を見ているだけであったが、ややあって持明院が口を開き、

「葛城君、だったな」

「はい」

「私が知る限りでは、君はオカルティズムの訓練を受けた訳でもなさそうだ。なのに、何故ターミナルドグマに赤木博士がいると思ったのだね?」

「八雲の脳神経スキャンデータを解析してメインモニタに映しましたよね」

「うむ」

「五つの玉がちょうど逆五角形を形成していましたが、何とも言えない胸騒ぎを感じて、改めてモニタを見直したのです。そうしましたら、その中の黄色の玉が、何か私に訴えるように光ったように思えました」

「うむ、それで?」

「それで、その直後でした。私の頭の中に、松代で車を運転してる赤木を見た時の映像が鮮明に見えたんです」

「ふーむ……」

「その時私は確信しました。この五つの玉は、祇園寺達五人の象徴だろうと、そして、その黄色い玉はリツコ、いえ、赤木博士だろうと」

「成程な。そう言う事か。……ついでに補足しておくと、あれは逆五角形ではない。逆五芒星形だ」

「逆ごぼうせい?」

「そうだ。所謂星印の事だよ。五つのすすきの星と書いて五芒星と読むのだが、それを逆に向けて使っている訳だ。日本の陰陽道でも正方向と逆方向とを使い分けるが、逆に書いても特に邪悪な意味はない。しかし、西洋の魔法では邪悪の象徴として使う」

「そう言う意味があるんですか」

「恐らく祇園寺達は何か西洋魔法の流儀を借用した儀式をやったのだろう。その時に邪悪の象徴として逆五芒星を使った、と言う事だ。それを八雲君が透視したんだな。…で、加持君の方はどうなんだね? 惣流君の回復のためにタロット呪術を行って、結果を出したが」

「俺の、いえ、私の場合も葛城と同じで、訓練などしておりませんでしたが…」

「うむ」

「碇が参号機ケージに行った後、ひたすらイメージを追っていた時、突然、頭の中に碇の声が響いたように思いました。『アスカ』、と」

「えっ!? まさか!?」
「なんだと!?」

 ミサトと持明院が驚きの声を上げる。ミサトは続けて、

「加持君、シンジ君、参号機の中で、『アスカ』って叫んだわよ!!」

「なに!? 本当か!?」

「ええ、その直後に気を失ったのよ」

「うーむ……。だとすると、俺が聞いたのは本当にシンジ君の叫びだった、と……。それでその直後、タロットのイメージが鮮明に浮かび、天使が参号機に変化したんです。その時浮かんだアイデアで惣流を回復させられたんですが……。しかしまさかなあ……」

「考えられるわよ。私の『透視』も含めて、今だったらね」

「どう言う事だ?」

 訝し気な加持に、ミサトは軽く頷くと、

「もう言うべきね。…今、私たちが置かれている状況は、実は、私たちの想像をはるかに越えているのよ」

「と、言うと?」

「実は、昨日の晩に中之島博士から聞いたんだけど、博士の分析では、この世界は、少なくとも350回以上、破滅と再生を繰り返しているのよ」

「なにっ!!??」
「なんだと!!??」

 ミサトの言葉に加持と持明院は顔色を変えた。

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 ターミナルドグマ。

「…碇司令……」

 つぶやくようなリツコの声にゲンドウが振り返る。

「なんだ?」

「もうそろそろ教えていただきたいですわ。…ここに来た本当の目的はなんなのですか?」

「ふっ、その事か。…祇園寺、教えてやれ」

「うむ、…赤木博士」

「はい」

「元々ここはどう言う所かね?」

「えっ? …そう言われましても、大深度地下洞窟だとしか……」

「君も、碇も、ゼーレにしても、この場所が持つ本当の意味を知らなかったのだ。君達もゼーレも『裏死海文書』に囚われ過ぎていたし、まあ、無理もないのだがな。わははは」

「仰る事がよくわかりません。ここに何かあるのですか?」

「ふっふっふ、ここはな、冥界への入り口、『黄泉比良坂』なのだよ」

「よもつひらさか?」

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 ミサトは、昨夜中之島から聞いた話を説明し、

「…と、言う訳よ。そのせいで、時間の概念がおかしくなり、それをきっかけとして、虚構と現実の区別がつかなくなっているのよ。今のこの世界はね。私にしても加持君にしても、まるで超能力者みたいな事が出来たじゃない。それは、この現象が影響しているのよ。きっと」

「…………」
「…………」

 余りにも意外な話に、加持と持明院は言葉を失ったが、ややあって持明院が口を開き、

「それでは、本来は起こり得ない、『思考が物質に直接影響を及ぼす』と言う事すら、可能かも知れんのか……」

 ミサトは頷くと、

「ええ、そのあたりに関しては、私は詳しくはわかりませんが、昨夜の博士の話では、充分考えられる、と言う事でした」

 持明院は軽く唸り、

「うーむ、では、そのあたりを充分考慮に入れておかねばならんな。祇園寺や碇ゲンドウが『念力』を使う可能性があると言う事だ」

「そうですね。しかし、逆に私たちも『念力』を使える可能性がある、と言う事も言えるのではありませんか?」

「うむ、それも言えるな」

 その時加持が割り込んで来て、

「ちょっと待て、葛城」

「なに?」

「アダムとリリスはATフィールドを展開出来る。それと念力が融合されたら、余り面白くない事になるぞ」

「えっ!? と、言う事は……」

「そうだ。連中が『ATバルカン』を使ったら、ちょっと厄介だぜ。それを踏まえて、なんとしても相手がこっちに気付く前に先手を打たないとまずい」

「確かにそうね。……持明院さん、なんとか連中に気付かれないよう、よろしくお願い致します」

「うむ、全くその通りだ。私としてはこっちの気配を消す事に全力をかける必要があるな。相手に気付かれないように万全を期さねばならん……」

 落ち着いた口調ながらも、持明院の表情は硬かった。

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「…では、祇園寺さんは、ここは冥界への入口で、魔界と極めて近接している所だから、ここで儀式を行う事によって、簡単に思考を魔界に送り込め、使徒をマーラとして操れると、更に使徒のS2機関を暴走させた時、私たちの思考で魔界のエネルギーを変調させてやる事によって、私たちの思考が次の宇宙を生み出す種となる、と、こう仰る訳ですか!?」

 自分の説明を要約して反復するリツコの驚き顔を見た祇園寺は、ニヤリと笑うと、

「そうだ。上手く纏めたな。本来ならそれに加えて、魔界に落とした綾波レイと渚カヲル、即ち、ここにいるリリスとアダムの分身も一緒に新宇宙の創造主にしてやるつもりだったのだが、あいつらは中之島と一緒にこっちに帰って来てしまった。その点だけが誤算だった、と言う事だ。まあ、私は別にどちらでもいいのだが、碇にしてみれば少々寂しいだろう。…な、碇」

「…ふっ……」

 祇園寺にからかわれたゲンドウは少し苦笑しただけで何も答えない。その様子に、アダムは、

「…ふふ」

と、苦笑したが、無論リリスは無表情のままだった。

「……………」

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 JRL本部中央制御室。

 分析を続けていた山之内が、デスクを叩き、

「クソっ!! こんなロクでもない結果しか出ないのか!!」

 憮然とした顔の岩城も、

「要するに、戦闘機の攻撃では使徒は爆発せず、エンタープライズの攻撃で爆発した理由に関しては、結論としては『データ不足のため不明』と言うだけの結論ですか。…本部長、これは我々もちょっと頭を切り替えないとだめですな」

 松下も唸って、

「ううむ、…とにかく分析結果を纏めてみるとだな、『パワーの大小が原因ではない』、『距離の長短が原因ではない』、…要するにこれだけと言う事なのか! クソっ!! こんなものが答になるか!!」

 少し落ち着きを取り戻した山之内が、

「本部長、もう一度考え直してみましょう。まず、ビームですが、エンタープライズと戦闘機では、太さには違いはないのですか?」

 松下は頷き、

「うむ。サイコバルカンにはビームの太さと言うような概念はない。極論すれば実体のない波動がビーム化されているだけだ。だからこそ敵のATフィールドも簡単に貫通出来る訳だ」

 ここで岩城が、

「では、実体がない波動だとすると、どう言うメカニズムで敵を倒すんですか?」

「詳しくはわからんが、実験の結果を見る限りでは、物体に当たった時に突如として実体化して質量が出現するような現象が起きている。それが物質を貫通するのだ」

「では、どうして空気は障害にならないのです?」

「多少は影響があるようだが、相手が気体の場合は殆ど実体化しない。個体や液体にぶつかった時実体化するようだ」

「うーむ……」

 唸る岩城に、松下は続けて、

「あくまでも想像の域を出んが、オカルティズムの観点から考えると、マーラのノイズパターンには、何か相手を判別する霊的プログラムのようなものが織り込まれていてだ、敵の『霊的元素』に強く反応して実体化すると推定される。だから物質だろうと霊的存在だろうと破壊出来るのだろう、と言う事だ。…しかしこれとて確たる証拠はないがな……」

「うーむ……」
「うーむ……」

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ブシュウウウッ!!!

「グワアアアアッ!!!」

 地上では相変わらず一進一退の攻防が続いていた。

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「本部長!! 使徒のエネルギー反応が増加を続けています!! このままでは臨界に達するのは時間の問題です!!」

 悲痛なマヤの声が中央制御室に響き渡る。

「博士!! 状況はどうなんですか!!」

 流石の五大も顔に焦燥の色が滲んでいる。

「駄目ぢゃ!! 進展はない!! とにかく今までの分析で判っておるのは、連中は大型使徒としての形を保っておる限りは分裂せんが、少しでも傷を付けられるとそれをきっかけとしてイロウルが活動を始めて分裂してしまうと言う事だけぢゃ!!

 最終的には連中の心臓部であるコアを破壊すれば分裂は何とか防げるとは思うが、使徒の外側には傷一つ付けずにコアだけ破壊すると言うような事が出来るか!!?? フル回転でマギとオモイカネⅡに攻撃法を検討させてはおるが、そんな事は物理的に不可能ぢゃろう!!」

 中之島の怒鳴り声に、五大は、

「!……。確かに…、その通りです……」

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 無線に入って来た中之島の言葉に、奇妙なひっかかりを感じたサトシは、思わず、

「なんだって? コアだけ?」

と、呟き、一瞬考え込んだ。

(…内部だけ破壊……。どこかで聞いたような……)

 その時、無線に飛び込んで来たアキコの叫び声が、

『沢田くん!! 綾小路さん!!「裏当て」じゃよ!!』

 サトシは思わず訊き返す。

「裏当て!? 形代! どう言う事だ!?」

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 アキコは興奮し、

「もう忘れたん!? 博士の研究所で教えてもらったじゃろ!? ほら! 左手で相手をつかんで右手でたたくやつよ!!」

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「えっ!? …ああっ!!」

 サトシの心の中に、中之島が作った「追加シナリオ」の1シーンが油然と浮かんて来た。

「そうか!! あれかっ!!! 思い出したぞっ!!」

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「そうですわ!!『裏当て』を使えば何とかなるのではありませんこと!? 博士!!『裏当て』ですわ!!」

 ゆかりの声も上ずっている。

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「『裏当て』!? そうぢゃ!! 『裏当て』ぢゃっ!!」

 中之島も興奮して叫んだ。

 +  +  +  +  +

「要するにこうすりゃいいんだ!! 上昇!!」

 サトシの叫びに呼応し、アカシャは急上昇を開始した。

 続く



この物語はフィクションであり、登場する人物、団体は全て架空の物です。

BGM:'祈り(Ver.4b) ' composed by VIA MEDIA

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